歯科衛生士の姿勢解析:歯科衛生士が疲れるワケを科学的に検証

序章:なぜ“姿勢”がキャリアを左右するのか
歯科衛生士という専門職において、「姿勢」は単なる作業スタイルではなく、キャリアの継続を左右する重大な要素です。実際、多くの歯科衛生士が、腰痛や肩こり、下肢の疲労といった筋骨格系障害(MSDs)に悩まされており、それが原因で離職や職種変更に至るケースも少なくありません。
こうした身体的リスクは、実は現場に出てから始まるのではなく、歯科衛生士を目指す学生の段階からすでに生じている可能性があります。今回取り上げるのは、2023年に発表された米国のパイロット研究「The Effects of Sitting and Standing Hygiene on Posture in Dental Hygiene Students」。この研究は、将来の歯科専門職を担う学生の姿勢に焦点を当て、座位と立位の作業中における身体的リスクを科学的に検証しています。
研究の目的と背景:座位と立位、どちらが安全か?
この研究が着目したのは、臨床シミュレーション中に学生がどのような姿勢を取っているのか、そしてその姿勢が筋骨格系にどれほどのストレスを与えているのかという点です。歯科衛生士の業務は、細かい作業が中心であるため、前傾姿勢や同一姿勢の保持といった負担が避けられません。そこで、学生のうちに適切な姿勢を習得することが、将来的なMSDsの予防につながるという仮説に基づき、本研究が設計されました。
従来、多くの教育機関では、座位での作業姿勢に重点を置いた指導が行われています。しかし、実際の臨床現場では立ち姿勢での作業も一般的であり、この研究では、教育上見落とされがちな「立ち姿勢」のリスクに注目しています。
研究デザインと方法:科学的な姿勢評価の実際
本研究は、米国の歯科衛生士養成校に通う2年次の女性学生35名を対象としたパイロットスタディです(最終的な分析対象は34名)。被験者には、25分間の歯石除去作業を模擬患者シミュレータを使って行ってもらい、その間の姿勢を座位・立位それぞれで撮影しました。
姿勢評価には、**Rapid Upper Limb Assessment(RULA)**という国際的に認知された指標を用いています。RULAは、作業姿勢が筋骨格に与える負荷を数値化する手法で、特に上半身(首・肩・腕・手首)および胴体・下肢の角度、位置、動作の組み合わせに基づいてリスクスコアを算出します。
スコア範囲 | リスク分類 | 推奨アクション |
---|---|---|
1〜2点 | 低リスク | 介入不要 |
3〜4点 | 中等度リスク | 改善が望ましい |
5〜6点 | 高リスク | 早期改善が必要 |
7点 | 非常に高リスク | 即時改善が必要 |
このように、RULAは単なる観察ではなく、数値的根拠に基づいた姿勢評価が可能なツールであり、教育現場でも導入が進みつつあります。
結果:立位姿勢にこそ“見えない負荷”が潜む
研究の主要な成果として、座位と立位のRULAスコアは以下のようになりました:
- 座位時の平均RULAスコア:3.91(SD 0.77)
- 立位時の平均RULAスコア:4.50(SD 1.00)
この差は統計的に有意であり(p = 0.001)、つまり立位の方が姿勢リスクが高いことが明らかになったのです。さらに詳しく見てみると、立位では以下のような問題が特に顕著でした:
- 首の過度な屈曲(うつむき姿勢)
- 肩の不自然な挙上と外転(肩をすくめた状態)
- 上腕の前方突出
- 胴体の前傾
これらはすべて、長時間続くことで肩こりや腰痛を引き起こす要因となり得ます。加えて、立位での作業時には足の安定性が確保しづらく、下肢や足裏の疲労感を訴える学生も少なくないと報告されています。
なお、立位姿勢の教育経験が少ないことも問題視されています。実験参加者のほとんどは、座位の姿勢については教育を受けていたものの、立位作業時の正しい姿勢や、道具・椅子・患者との位置関係については、ほとんど指導を受けたことがなかったと回答しています。
考察:教育カリキュラムに潜む“姿勢教育の空白地帯”
本研究が浮き彫りにしたのは、「座っているときは正しく教わったが、立ったとたんに崩れる」という教育構造の欠落です。
歯科衛生士の養成課程では、診療台の高さ、チェアポジション、照明の使い方など、多くの技術的知識が教えられますが、“立ち姿勢そのもの”に対する体系的な訓練は後回しにされがちです。しかし実際の現場では、立位での処置や補助が必要となる場面は少なくありません。たとえば、小児歯科や高齢者施設では、座位での作業が困難な場合が多く、柔軟な体勢変化と姿勢保持力が求められます。
このような現実を踏まえると、教育カリキュラムにおいて立位姿勢の訓練を明確に組み込む必要があることは明らかです。姿勢の悪化は単なる“癖”ではなく、将来的な慢性疾患や職業的限界に直結するリスク因子であるからです。
臨床現場との連携で姿勢改善を
今回の研究は学生にフォーカスしたものですが、その示唆は臨床現場にとっても無関係ではありません。新人歯科衛生士が現場に入ってから腰痛を訴えるケースの多くは、「身体の使い方」が確立していないことに起因します。これは技術や知識の不足というより、教育段階で“身体の運用法”が適切に教えられていないことの結果です。
したがって、教育機関と臨床施設の連携が重要です。たとえば、以下のような取り組みが有効です:
- 立位姿勢の専門講座の設置
- RULA評価を用いた姿勢チェックとフィードバック
- 実習評価に姿勢項目を追加
- 卒後研修におけるエルゴノミクス講習
これらの取り組みを通じて、学生時代から“立つことの意味”を学び、実際の臨床でもその意識を持続できるようになります。
結論:教育改革なくして健康職業人生は築けない
「正しい姿勢」は、健康のための基本であると同時に、職業人としての持続可能性を左右する核心要素です。今回の研究は、科学的なエビデンスに基づいて、立位姿勢のリスクと教育不足を明らかにしました。
これからの歯科衛生士教育には、以下のような視点が必要です:
- 座位と立位の両方を対象とした姿勢教育
- 定量的な姿勢評価ツールの導入(RULAなど)
- 臨床と教育の橋渡しとしての継続的指導
姿勢は単なる見た目の問題ではなく、キャリアの質と長さを左右する“身体マネジメントスキル”です。学生時代からこの視点を持たせることが、健やかな歯科人生のスタートラインになるのです。

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項目 | 内容 |
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