なぜ若手歯科衛生士は職場を去るのか?筋骨格系障害(MSD)と早期離職の深い関係

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歯科衛生士業界における若年層の定着率低下

近年、歯科衛生士業界では「人手不足」が慢性化しています。その中でも特に深刻なのが、新卒〜3年以内の若手歯科衛生士の離職率の高さです。厚生労働省の「新規学卒者の就職後3年以内の離職率」によれば、歯科衛生士の3年以内離職率は約30〜35%とされており、他の医療系専門職と比べてもやや高い水準にあります。

「人間関係」や「給与面」といった理由もある一方で、注目すべきなのが「身体的負担」による離職です。とりわけ、**腰痛や肩こり、手首の痛みといった筋骨格系障害(MSD)**が若手層に深刻な影響を与えていることが、複数の調査で示されています。

若手が「身体が持たない」「将来続けられないかもしれない」と感じて職場を離れる──これは単なる個人の問題ではなく、教育・現場・制度の構造的な課題です。


MSDの早期発症傾向:若手も例外ではない

米国の業界誌『Dimensions of Dental Hygiene』などによると、MSDは決して中堅・ベテランだけの問題ではありません。むしろ歯科衛生士学生やキャリア初期の新人こそ、MSDの発症リスクが高いという研究結果が複数報告されています。

2023年のある研究では、歯科衛生士学生(2年制プログラム在籍者)のうち約72%が、臨床実習中に首・肩・背中・手首などに痛みや疲労を経験したと回答しています。また、1〜2年目の新人に対する追跡調査でも、約60%以上が「仕事を始めてから3ヶ月以内に身体的な違和感を覚えた」と述べており、MSDは極めて早期から顕在化するリスクであることがわかります。

これらの調査に共通しているのは、「姿勢指導や身体の使い方を十分に学ばないまま現場に出てしまう」という教育構造の盲点です。大学や専門学校では、臨床技術や知識の習得に重きが置かれる一方で、“身体を守るスキル”が後回しにされがちなのです。


離職につながる心理的メカニズム

MSDの影響は単なる身体的な痛みにとどまりません。それは離職の引き金となる心理的ストレスへと発展する要素を多分に含んでいます。

●「痛みはあって当然」文化

新人の多くは、「この程度の痛みは誰でも感じているはず」「我慢して慣れるしかない」と考えがちです。この“我慢の文化”はMSDの慢性化を招きやすく、痛みを放置した結果、作業効率の低下・集中力の減退・精神的疲労を引き起こします。

● 周囲に相談しづらい

現場によっては「体調不良を訴えにくい雰囲気」があり、若手は上司や同僚に自らの身体的限界を相談できず、孤立感を抱えることになります。「無理してでもやらなければ」という圧力が、心身への負担をさらに強めるのです。

● キャリア展望の不安

「まだ若いのに、こんなに体がつらいのか」「このまま何年も続けられるのだろうか」といった不安は、将来への展望を曇らせ、早期離職を現実的な選択肢として浮上させます。

これらの要因が複合的に絡み合うことで、MSDが若手離職を引き起こす“見えないトリガー”となっているのです。


組織側の課題:支援体制の不在と教育の欠如

若手の身体的負担を軽減し、離職を防ぐには、組織側の意識改革と構造的な支援が不可欠です。ところが、現状では以下のような課題が多く見受けられます。

✖ 姿勢教育の空白

教育機関での姿勢・身体動作に関する指導が不十分なまま、現場に送り出されているケースが多く、「自己流の姿勢」で仕事を始めてしまうリスクが高いです。

✖ 初期サポートの不在

新人導入時に、身体への配慮が組み込まれていないことが多く、慣れるまでに無理を強いられがちです。

✖ 制度的な対応不足

MSDに関する定期チェック・相談体制が整っていない職場も多く、痛みや不調が表面化しづらい構造になっています。


対策提案:若手離職を防ぐ5つのアプローチ

若手歯科衛生士が長く健康に働き続けられる職場環境を構築するには、以下のような多角的な取り組みが求められます。

✅ 1. オリエンテーション時の姿勢・エルゴノミクス教育

新人研修の段階で、正しい姿勢と道具の使い方を教えることで、MSDの予防意識を醸成。

✅ 2. MSDセルフチェック制度の導入

月に1回の簡易チェックシートで、自覚症状の早期発見と対話のきっかけづくりを促進。

✅ 3. 疼痛訴えに対応する制度の整備

体調申告に対するフィードバック、軽作業への配慮、定期的な評価面談など、安心して声を上げられる職場にすることが鍵。

✅ 4. 環境改善ツールの導入支援

チェアや拡大鏡、フットレスト、クッションマットなど、物理的負担を軽減する設備を整えることで根本的な身体負荷を軽減。

✅ 5. メンタル・ピアサポート体制の構築

経験年数の近い先輩によるピアサポート制度や、心理的な安心感を醸成するワークショップを導入することで、若手の不安を軽減。


若手が安心して続けられる職場づくりへ

MSDは、単なる身体的不調ではなく、若手の早期離職に直結する重大な構造リスクです。歯科衛生士としてのキャリアを長く健やかに築くためには、教育段階・職場環境・心理的サポートのすべてを見直す必要があります。

「痛みは仕方ない」から「痛みは防げる・減らせる」へ──この意識改革こそが、若手定着率向上と職場の持続可能性を高める鍵となるのです。

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立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

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立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

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立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

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