なぜ今「WBGT値の管理」が注目されているのか?製造業の熱中症対策のトレンド

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製造現場における熱中症の深刻化

日本全国で猛暑日が常態化しつつある近年、製造業の現場においても熱中症による労災が深刻な問題となっています。特に夏場の工場や倉庫では、機械熱や日射の影響により、室温が外気温を大きく上回るケースも少なくありません。日本産業衛生学会や厚生労働省が公開するデータでも、製造業での熱中症事故の発生件数は年々増加傾向にあり、特に中小製造業では対策が後手に回る傾向があるとされています。

このような背景から、企業の安全衛生担当者はもちろん、経営層においても熱中症対策の強化が喫緊の課題とされています。人的被害だけでなく、稼働停止や生産性の低下といった経済的損失も無視できないため、全社的なリスクマネジメントの観点からも重要性が増しています。

感覚的な暑さ対策の限界

従来の熱中症対策は、作業員の申告や管理者の経験則に基づく「感覚的な判断」に頼るケースが多く見られました。「暑く感じたら休む」「汗をかいていたら水を飲む」といった対応は、個人差が大きく、リスクの見逃しを招きやすいのが実情です。特に高齢の作業者や、暑さに鈍感な体質の人ほど重篤な症状に陥りやすく、結果的に緊急搬送や死亡事故に至る事例も後を絶ちません。

こうした現場の課題に対して、近年注目を集めているのが「WBGT値(湿球黒球温度)」を活用した暑熱環境の数値管理です。温度・湿度・輻射熱という複数の要素を組み合わせて算出されるWBGT値は、単なる気温よりも実際の身体負荷を的確に反映できる指標として、国内外で広く利用が進んでいます。

WBGT値とは?名前の由来と意味

WBGTとは、英語の “Wet Bulb Globe Temperature”(湿球黒球温度)の略称です。これは、暑熱環境における人間の熱ストレスを評価するための指標であり、次の3つの温度要素を総合して算出されます。

WBGT値を構成する3つの温度要素

  • 湿球温度(Wet Bulb Temperature):湿度の影響を反映する指標で、蒸発冷却の効率を示します。
  • 黒球温度(Globe Temperature):輻射熱の影響を評価し、日差しや熱源の有無を反映します。
  • 乾球温度(Dry Bulb Temperature):通常の気温です。

WBGT値は、これらの要素を環境条件に応じて重みづけして計算され、人間が感じる「実質的な暑さ」を反映する優れた指標です。特に湿度や輻射熱の影響が大きい日本のような気候では、気温だけでなくこれらの要素を考慮したWBGT値が熱中症リスク評価に適しているとされています。

国際的にも、WBGT値はISO(国際標準化機構)やACGIH(アメリカ産業衛生政府会議)などで標準指標として採用されており、日本の厚生労働省もこの指標に基づいて職場の暑さ対策を推進しています。

気候変動が職場環境に与える影響

地球温暖化の影響により、日本の夏はより長く、より厳しくなってきています。たとえば気象庁の観測によると、東京の真夏日(30℃以上)の年間日数は、1980年代と比べて大幅に増加しており、工場のある地域でも同様の傾向が見られます。こうした気候変動は、職場の暑熱環境にも大きな影響を与え、これまで「問題なし」とされていた作業条件が、今では危険とされるレベルに変化しているケースも増えています。

さらに近年では、熱中症のリスクが作業効率やミス発生率、安全性に直結するという認識が広まりつつあります。単に暑さを我慢する時代から、作業者のパフォーマンスを維持するために積極的に環境を整える時代へと変化しているのです。

法制度の変化と企業への要請

厚生労働省は、「職場における熱中症予防対策マニュアル」や「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を通じて、WBGT値の測定と活用を強く推奨しています。2024年以降は、建設業や農業などの高リスク産業においてWBGT値の常時測定や掲示の義務化が進んでおり、今後は製造業にも同様の法的義務が課せられる可能性が高いと予測されています。

現時点では製造業に明確な義務はないものの、「指針に従っていなかった」「対策が不十分だった」と判断されれば、労災認定や企業責任を問われるリスクがあります。したがって、今のうちからWBGT値を活用した管理体制を構築しておくことは、企業のコンプライアンスやブランド価値の維持にもつながる重要な取り組みといえます。

産業界における取り組みの広がり

一部の大手製造業では、すでにWBGT値のリアルタイム監視システムを導入し、工場内の各エリアで気象条件をモニタリングしながら、作業時間や休憩タイミングを調整するなどの高度な運用が始まっています。また、温度・湿度・風速などを計測する複合センサーとクラウドシステムを連携させ、データを可視化・共有することで、全社的な熱中症対策を推進している企業もあります。

中小企業においても、簡易なWBGT測定器を導入することで、リスク管理を実現している事例が増えています。測定値をホワイトボードやデジタル掲示板に表示するだけでも、作業者の意識向上や行動変容につながり、事故の未然防止に効果を発揮しています。

まとめ:WBGT値の管理は企業の責任

もはや「暑さを感じたら休めばよい」という感覚的な管理は通用しない時代に突入しています。製造業においても、暑熱環境を科学的に評価し、数値に基づいて作業環境を整備することが求められています。WBGT値の導入と活用は、単なる法令遵守のための手段ではなく、作業者の健康と安全を守り、生産性と企業価値を向上させるための投資です。

企業にとって、今まさに「暑さ対策をどう進めるか」が問われているのです。

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