【2026年4月施行】労働安全衛生法改正の全体像|5つの柱をわかりやすく解説

【2026年4月施行】労働安全衛生法改正の全体像|5つの柱をわかりやすく解説 | 立ち仕事のミカタ | アルケリス株式会社

2026年の労働安全衛生法改正が、あなたの職場にどのような影響を及ぼすかご存知ですか?2025年5月14日に公布されたこの改正法は、フリーランスの保護拡大からストレスチェックの全事業場義務化まで、働くすべての人に関わる大規模な見直しです。「うちの会社は関係ない」と思っていても、実は対応が必要になるケースが少なくありません。

この記事では、改正の5つの柱を中心に、事業者・労働者の双方が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。

: 本記事は2025年7月時点の情報に基づいています。省令・告示等の詳細は今後公布される予定のものを含みます。

この記事でわかること

  • 2026年労働安全衛生法改正の全体像と5つの柱
  • 個人事業者・フリーランスへの安全衛生対策の拡大内容
  • ストレスチェック義務化の対象拡大と小規模事業場への影響
  • 化学物質管理の強化スケジュールと事業者が取るべき対応
  • 高年齢労働者の労災防止やカスタマーハラスメント防止の新ルール

労働安全衛生法 改正 2026の全体像

改正の背景と目的

労働安全衛生法(安衛法)は、1972年の制定以来、職場における労働者の安全と健康を守るための基本法として機能してきました。しかし、働き方の多様化、労働者の高齢化、化学物質リスクの増大など、制定時には想定されていなかった課題が顕在化しています。

厚生労働省の統計によると、近年の労働災害による死傷者数は年間約13万人前後で推移しており、特に転倒・腰痛など立ち仕事に関連する労災や、60歳以上の労働者の災害が増加傾向にあります。また、フリーランスや一人親方など、従来の安衛法の保護対象から外れていた働き手の安全確保も喫緊の課題となっていました。

こうした背景を踏まえ、2025年5月14日に「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」が公布されました。今回の改正は、2026年4月から段階的に施行されます。

改正の5つの柱

今回の改正内容は多岐にわたりますが、大きく以下の5つの柱に整理できます。

#改正の柱主な内容施行時期
1個人事業者等への安全衛生対策の拡大フリーランス・一人親方も保護対象に2026年4月(一部2027年4月)
2ストレスチェック全事業場義務化50人未満の事業場も義務に公布後3年以内(最長2028年5月)
3化学物質管理の強化リスクアセスメント対象の大幅拡大2026年10月
4高年齢労働者の労災防止60歳以上への措置を努力義務化2026年4月
5カスタマーハラスメント防止事業主に雇用管理上の措置義務2026年10月(予定)

このほか、ボイラー・クレーン等の特定機械の検査体制見直し(民間登録機関による検査を可能に)も含まれていますが、本記事では上記5つの柱を中心に解説します。

第1の柱:個人事業者等への安全衛生対策の拡大

改正のポイント

これまで安衛法の保護対象は、主に「事業者に雇用される労働者」でした。しかし、建設業の一人親方やフリーランスのエンジニアなど、雇用関係のない個人事業者は法的な保護の枠組みから外れていたのが実情です。

今回の改正では、個人事業者等も安衛法の保護対象に含まれるよう、大きく2段階で制度が整備されます。

第1段階(2026年4月施行):元方事業者の措置義務拡大

  • 建設現場や工場などで個人事業者と一緒に働く元方事業者(元請け企業等)に対し、個人事業者の安全衛生を確保するための措置義務が課されます
  • 安全衛生に関する情報提供や、危険箇所への立入制限の周知なども求められます

第2段階(2027年4月施行):個人事業者自身の義務

  • 個人事業者自身にも、自らの安全と健康を確保するための義務が課されます
  • 保護具の着用や、安全衛生教育の受講などが想定されています

立ち仕事の現場への影響

製造業や建設業の現場では、一人親方やフリーランスの技術者が立ち仕事に従事するケースが多くあります。これまで元方事業者の安全配慮義務が及びにくかった個人事業者に対しても、疲労軽減マットの設置や作業姿勢の改善指導といった措置が求められるようになる可能性があります。

第2の柱:ストレスチェック全事業場義務化

改正のポイント

ストレスチェック制度は2015年の安衛法改正で導入されましたが、従業員50人未満の事業場は「努力義務」にとどまっていました。厚生労働省の調査(2024年)によると、50人未満の事業場でのストレスチェック実施率は約30%程度と低い水準にあります。

今回の改正により、すべての事業場でストレスチェックの実施が義務化されます。施行は公布後3年以内とされており、最長で2028年5月頃の施行が見込まれます。

小規模事業場への配慮

小規模事業場にとって、ストレスチェックの実施は費用面・運用面のハードルが高いという声もあります。これを受け、厚生労働省は小規模事業場向けのマニュアルを公表しており、以下のような支援策が講じられています。

  • 簡易なストレスチェックツールの提供(Webベースで無料利用可能)
  • 産業保健総合支援センターによる相談支援
  • 集団分析の簡略化(小規模事業場では個人が特定されやすいため、柔軟な運用を容認)

立ち仕事従事者のメンタルヘルス

立ち仕事に従事する労働者は、身体的な負担に加えて、対人ストレスや単調作業によるメンタルヘルスの問題を抱えやすいことが報告されています。小売業の販売員や飲食業のスタッフなど、小規模事業場で立ち仕事に従事する方々にとって、ストレスチェックの義務化は早期にメンタルヘルス不調を発見する重要な機会になると考えられます。

第3の柱:化学物質管理の強化

改正のポイント

化学物質による健康障害の防止は、安衛法の重要な柱の一つです。今回の改正では、自律的な化学物質管理の考え方をさらに推進し、以下の措置が強化されます。

リスクアセスメント対象物質の拡大

  • 対象物質が従来の約900種から約2,900種に大幅拡大されます
  • SDS(安全データシート)の交付義務も対応して拡大されます

個人ばく露測定の義務化(2026年10月施行)

  • 一定の化学物質を取り扱う作業場では、作業者個人のばく露量を測定することが義務づけられます
  • 従来の「作業環境測定」(場の測定)に加え、個人レベルでの管理が求められます

化学物質管理者の選任義務

  • 一定規模以上の事業場では、化学物質管理を統括する化学物質管理者の選任が義務化されます

事業者が準備すべきこと

化学物質を取り扱う製造業や食品加工業などでは、以下の準備が求められます。

  • 自社で使用する化学物質が拡大されたリスクアセスメント対象に含まれるかの確認
  • SDSの最新版の入手と従業員への周知
  • 個人ばく露測定の測定計画の策定と機器の準備
  • 化学物質管理者の選任と必要な教育の実施

第4の柱:高年齢労働者の労災防止

改正のポイント

高齢化の進展に伴い、60歳以上の労働者の労災発生率は他の年齢層に比べて高い水準にあります。厚生労働省のデータでは、60歳以上の労働者の労災発生率は、30代の約2倍に達するとされています。主な労災の種類は転倒、墜落・転落、腰痛であり、立ち仕事との関連が深いものです。

今回の改正では、以下の措置が講じられます。

  • 60歳以上の労働者に対する労災防止措置が努力義務化(2026年4月施行)
  • これまで任意の指針であった「エイジフレンドリーガイドライン」の法的位置づけが格上げ
  • エイジフレンドリー補助金の拡充(中小企業向け)

立ち仕事の現場での具体的対応

エイジフレンドリーガイドラインでは、高年齢労働者の身体機能の変化に配慮した職場づくりが推奨されています。立ち仕事の現場では、以下のような対応が考えられます。

  • 作業台の高さ調整(腰への負担軽減)
  • 疲労軽減マットや椅子付き作業台の導入
  • 休憩時間の柔軟な確保(連続立位時間の制限)
  • 滑りにくい床材への変更(転倒防止)
  • 身体機能チェックの定期実施と、結果に基づく作業配置の見直し

エイジフレンドリー補助金(上限100万円)を活用すれば、これらの設備投資の負担を軽減できます。

第5の柱:カスタマーハラスメント防止

改正のポイント

近年社会問題化しているカスタマーハラスメント(カスハラ)について、法的な対応が初めて本格的に整備されます。改正の根拠法は「労働施策総合推進法」であり、安衛法と連動した改正です。

  • 事業主に雇用管理上の措置義務が課されます(2026年10月施行予定)
  • 従業員がカスハラを受けた場合の相談体制の整備、対応マニュアルの策定などが求められます
  • パワハラ防止措置(2020年義務化)と同様の枠組みが適用される見込みです

立ち仕事従事者への影響

小売業の販売員、飲食店のスタッフ、医療機関の受付など、対面で顧客と接する立ち仕事の従事者は、カスハラの被害を受けやすい職種です。厚生労働省の実態調査(2023年)では、顧客対応のある労働者の約**15%**がカスハラ被害の経験があると回答しています。

今回の法制化により、事業者には従業員を守るための具体的な対策を講じる責任が明確になります。「お客様は神様」という考え方からの転換が、法制度の面からも求められる時代になったといえるでしょう。

事業者に求められる対応チェックリスト

改正法の段階的な施行に備え、事業者は以下の項目を確認しておくことが重要です。

2026年4月までに対応すべきこと

  • [ ] 個人事業者と協働する現場がある場合、安全衛生措置の見直し
  • [ ] 60歳以上の労働者がいる場合、エイジフレンドリーガイドラインに基づく職場改善の検討
  • [ ] エイジフレンドリー補助金の申請準備

2026年10月までに対応すべきこと

  • [ ] 化学物質のリスクアセスメント対象物質の再確認
  • [ ] 個人ばく露測定の実施体制の整備
  • [ ] 化学物質管理者の選任
  • [ ] カスタマーハラスメント防止の社内体制構築(相談窓口、対応マニュアル等)

2028年5月までに対応すべきこと

  • [ ] ストレスチェックの全事業場での実施体制の構築(50人未満の事業場)
  • [ ] 産業保健総合支援センター等の支援制度の活用検討

よくある質問

Q: 従業員10人の小さな会社ですが、今回の改正に対応が必要ですか?

A: はい、対応が必要です。特にストレスチェックの義務化(施行時期は最長2028年5月)と、カスタマーハラスメント防止の措置義務(2026年10月)は、事業場の規模を問わず適用されます。厚生労働省が公表している小規模事業場向けマニュアルを活用すれば、比較的少ない負担で対応を進めることができます。

Q: フリーランスとして工場で作業していますが、私にも関係がありますか?

A: 大いに関係があります。2026年4月からは、あなたが作業する工場の元方事業者に対して、あなたの安全衛生を確保するための措置義務が課されます。また、2027年4月からは、フリーランスの方ご自身にも安全衛生上の義務が生じます。保護具の着用や安全衛生教育の受講などが求められる見込みです。

Q: エイジフレンドリー補助金はどこに申請すればよいですか?

A: エイジフレンドリー補助金は、厚生労働省の委託事業として実施されており、所定の申請窓口から応募できます。対象は中小企業事業者で、高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や健康管理に要する費用(上限100万円)が補助されます。詳しくは厚生労働省のホームページまたは最寄りの労働局にお問い合わせください。

まとめ

2026年の労働安全衛生法改正は、個人事業者の保護拡大、ストレスチェックの全事業場義務化、化学物質管理の強化、高年齢労働者の労災防止、カスタマーハラスメント防止という5つの柱から成る大規模な改正です。

特に立ち仕事の現場においては、高年齢労働者への配慮やカスハラ防止など、日常の業務に直結する改正内容が多く含まれています。施行時期は2026年4月から段階的に進むため、今から計画的に準備を進めることが重要です。

改正法への対応は、単なる法令遵守にとどまらず、従業員の安全と健康を守り、働きやすい職場をつくるための好機と捉えることができます。自社の状況に照らして、優先度の高い項目から対応を進めていきましょう。

参考文献

  1. 厚生労働省, 「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」, 2025年5月14日公布. https://www.mhlw.go.jp/
  2. 厚生労働省, 「令和6年版 労働災害発生状況」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/
  3. 厚生労働省, 「ストレスチェック制度の施行状況」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/
  4. 厚生労働省, 「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」, 2020年(2026年改正予定). https://www.mhlw.go.jp/
  5. 厚生労働省, 「職場のハラスメントに関する実態調査」, 2023年. https://www.mhlw.go.jp/
  6. 厚生労働省, 「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/
  7. 厚生労働省, 「小規模事業場におけるストレスチェックの実施マニュアル」, 2025年. https://www.mhlw.go.jp/

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