【2026年同時改正で何が変わる?】労働安全衛生法と労働基準法の違いとは?

「労働安全衛生法と労働基準法の違いは何ですか?」――労務管理の現場で、こんな疑問を抱いたことはありませんか? どちらも働く人を守る法律ですが、その成り立ちも守備範囲も異なります。しかも2026年は、この2つの法律が同時に大きく改正されるという、実務担当者にとって見逃せない年です。
本記事では、労働安全衛生法(安衛法)と労働基準法(労基法)の違いを体系的に整理し、2026年同時改正の全体像と実務への影響をわかりやすく解説します。
注: 本記事は2025年7月時点の情報に基づいています。改正の施行時期や省令等の詳細は今後変更される可能性があります。
この記事でわかること
- 労働安全衛生法と労働基準法の違い(目的・対象・罰則の比較)
- 安衛法が労基法から独立した歴史的経緯
- 「事業者」と「使用者」――義務主体の違いが実務に与える影響
- 2026年に予定されている安衛法・労基法の同時改正の概要
- 安全配慮義務(労働契約法第5条)との関係
- 現場で両法を一体的に運用するためのポイント
労働安全衛生法と労働基準法の違いを理解する基礎知識
労基法から安衛法が独立した歴史
日本の労働法制において、労働安全衛生法と労働基準法は「親子」のような関係にあります。
1947年に制定された労働基準法は、戦後の民主化政策の一環として、労働条件の最低基準を定めるために生まれました。当初、労働基準法の中には安全衛生に関する規定(旧第5章「安全及び衛生」)も含まれていました。
しかし、高度経済成長期に産業災害が急増し、安全衛生に関する規制を抜本的に強化する必要性が高まりました。厚生労働省(当時の労働省)の資料によると、1960年代には年間6,000人を超える労働災害による死亡者が発生していたのです。
こうした背景から、1972年に労働基準法の安全衛生部分が独立し、労働安全衛生法が制定されました。単なる分離ではなく、安全衛生管理体制の整備、危険有害業務の規制強化、健康診断の義務化など、大幅に内容が拡充されています。
両法の目的の違い
2つの法律は、それぞれ異なる目的を持っています。
労働基準法は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」(第1条)という理念のもと、賃金・労働時間・休日・休暇など労働条件の最低基準を定める法律です。
一方、労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する」(第1条)ことを目的としています。つまり、安全衛生の確保と職場環境の改善に特化した法律です。
「事業者」と「使用者」――義務主体の違い
両法の実務的に最も重要な違いの一つが、義務を負う主体の定義です。
労働基準法では、義務主体は「使用者」です。使用者とは、事業主のほか、事業の経営担当者や労働者に関する事項について事業主のために行為をする者を含みます(第10条)。つまり、工場長や人事部長なども使用者に該当し、個人として責任を問われ得ます。
労働安全衛生法では、義務主体は「事業者」です。事業者とは、事業を行う者で労働者を使用する者をいい、法人企業であればその法人自体を指します(第2条第3号)。安衛法が事業者を義務主体としたのは、安全衛生対策には設備投資や管理体制の構築など組織的な対応が必要であり、個人ではなく事業を営む主体そのものに責任を負わせる必要があったためです。
この違いは罰則の適用にも影響します。労基法違反では使用者個人が処罰対象となりますが、安衛法違反では事業者(法人)と違反行為者の両方が処罰される「両罰規定」(安衛法第122条)が原則です。
労働安全衛生法と労働基準法の詳細比較
両法の違いを体系的に整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 労働基準法(労基法) | 労働安全衛生法(安衛法) |
|---|---|---|
| 制定年 | 1947年(昭和22年) | 1972年(昭和47年) |
| 目的 | 労働条件の最低基準の確保 | 職場の安全衛生確保・快適な職場環境の形成 |
| 義務主体 | 使用者(個人も含む) | 事業者(法人そのもの) |
| 管轄 | 厚生労働省(労働基準局) | 厚生労働省(労働基準局 安全衛生部) |
| 監督機関 | 労働基準監督署 | 労働基準監督署 |
| 主な規制内容 | 賃金、労働時間、休日・休暇、解雇制限 等 | 安全衛生管理体制、危険防止措置、健康診断、ストレスチェック 等 |
| 罰則の特徴 | 使用者個人に刑事罰 | 事業者(法人)と違反行為者の両罰規定が原則 |
| 最高刑 | 1年以上10年以下の懲役または20万〜300万円以下の罰金 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は1億円以下の場合も) |
このように、2つの法律は互いに補完し合う関係にあります。労基法が賃金や労働時間といった「労働条件」の最低基準を守り、安衛法が「安全と健康」を守る。いわば車の両輪のように、労働者保護の法体系を形成しているのです。
安全配慮義務との関係――3つの法律の交差点
安衛法と労基法に加えて、実務上重要なのが労働契約法第5条に定められた「安全配慮義務」です。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身についての安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならない。(労働契約法第5条)
安衛法が定める各種措置義務(安全衛生管理体制の構築、健康診断の実施など)は、行政法上の義務です。違反すれば行政指導や刑事罰の対象となりますが、これらの義務を果たしていれば安全配慮義務を全うしたことになるわけではありません。
安全配慮義務は民事上の義務であり、安衛法の基準を守っていても、個別の状況において合理的に予見可能な危険を回避する措置を怠れば、損害賠償責任を問われる可能性があります。逆に、安衛法違反がある場合は、安全配慮義務違反が認定されやすくなります。
たとえば、立ち仕事の現場で従業員が腰痛を発症した場合を考えてみましょう。安衛法上の健康診断を適切に実施していても、長時間の立位作業による身体的負担を軽減する措置(休憩の確保、作業姿勢の改善、補助器具の導入など)を講じていなければ、安全配慮義務違反として民事責任を問われるリスクがあるのです。
このように、事業者は安衛法・労基法の行政法上の義務と、労働契約法の民事上の義務の両方を満たす必要があります。特に立ち仕事が中心の職場では、法令で定められた最低基準を超える自主的な安全衛生対策が、リスク管理の観点から重要です。
2026年同時改正の全体像――安衛法と労基法で何が変わるか
安衛法改正の主要ポイント
2025年5月に公布された労働安全衛生法等の一部を改正する法律は、2026年4月以降、段階的に施行されます。主な改正内容は以下のとおりです。
- 個人事業者・フリーランスへの安全衛生対策の拡大: 従来の「労働者」に限定されていた保護対象が、業務委託先の個人事業者にも拡大されます
- ストレスチェックの全事業場義務化: これまで50人以上の事業場のみ義務だったストレスチェックが、全事業場に義務化されます(公布後3年以内に施行)
- 化学物質管理の強化: リスクアセスメント対象物質の大幅な拡大と管理体制の見直しが行われます
- 高年齢労働者の労災防止: 60歳以上の労働者に対する安全衛生措置が努力義務化されます
- カスタマーハラスメント防止: 事業主にカスハラ防止のための雇用管理上の措置義務が新設されます
労基法改正の主要ポイント
同時期に議論が進められている労働基準法の改正も、2026年の労働法制を大きく変えるものです。2025年に取りまとめられた「労働基準関係法制研究会」の報告書を踏まえ、以下のような改正が見込まれています。
- 労働時間規制の見直し: テレワークや裁量労働制の適用要件の整理、労働時間の把握方法の明確化
- 14日を超える連続勤務の禁止: 労働者の健康確保の観点から、連続勤務日数の上限が法定される見込み
- 労基法の適用範囲の再検討: 「労働者」概念の見直しや、家事使用人への適用拡大の議論
- 勤務間インターバル制度の強化: 努力義務からさらに踏み込んだ制度設計が検討されています
同時改正が現場に与える影響
注目すべきは、安衛法の改正と労基法の改正がほぼ同時期に進行している点です。これは実務担当者にとって、両法を一体的に理解して対応する必要があることを意味します。
たとえば、立ち仕事が多い製造業の現場では、以下のような複合的な対応が求められます。
- 安衛法の観点: ストレスチェックの全社展開、高年齢労働者への転倒防止措置、化学物質のリスクアセスメント体制の構築
- 労基法の観点: 労働時間管理の厳格化、連続勤務の制限への対応、勤務間インターバルの確保
- 安全配慮義務の観点: 法改正を踏まえた安全衛生水準の引き上げ(改正内容が安全配慮義務の判断基準にも影響する)
実務で両法を一体的に運用するためのポイント
労働安全衛生法と労働基準法は別々の法律ですが、現場の実務では切り離して考えることはできません。以下のポイントを押さえておくことで、法令遵守の実効性が高まります。
管理体制の一元化
安全衛生管理と労務管理を別々の担当者が独立して行っている職場では、情報の断絶が生じやすくなります。たとえば、長時間労働(労基法の管轄)と過重労働による健康障害(安衛法の管轄)は表裏一体の問題です。衛生委員会の議題に労働時間の状況を含めるなど、横断的な情報共有の仕組みを構築することが重要です。
リスクアセスメントの総合的実施
安衛法第28条の2に基づくリスクアセスメントは、安全衛生上の危険有害要因を評価するものですが、ここに労働時間や作業負荷の観点も含めて総合的に実施することで、安全配慮義務の履行にもつながります。
法改正情報の一元的なキャッチアップ
2026年の同時改正に備えるためにも、安衛法と労基法の改正情報を一元的に収集・管理する体制を整えることが推奨されます。厚生労働省の「労働安全衛生法関係の法令改正」ページや、都道府県労働局の周知資料を定期的にチェックする習慣をつけましょう。
まとめ
労働安全衛生法と労働基準法は、1947年の労基法制定から1972年の安衛法独立という歴史を経て、現在の体系が形成されました。労基法が労働条件の最低基準を、安衛法が安全衛生の確保を、それぞれ担う補完関係にあります。
義務主体が「使用者」(労基法)と「事業者」(安衛法)で異なること、そして両法に加えて**安全配慮義務(労働契約法第5条)**も満たす必要があることは、実務上見落とされがちですが極めて重要なポイントです。
2026年は安衛法と労基法の同時改正という、近年まれに見る大きな法改正の年となります。特に立ち仕事が中心の現場では、ストレスチェックの全社展開や高年齢労働者対策、労働時間管理の厳格化など、両法にまたがる複合的な対応が求められます。
今のうちから両法の関係性を正しく理解し、法改正に向けた準備を進めておくことが、労働者の安全と健康を守り、事業リスクを低減するための第一歩となるでしょう。
よくある質問
Q: 労働安全衛生法と労働基準法は、どちらが優先されますか?
A: どちらかが優先されるという関係ではありません。2つの法律はそれぞれ異なる領域を規律しており、両方を同時に遵守する必要があります。安衛法は安全衛生の確保、労基法は労働条件の最低基準という、異なる目的を持つ補完的な法律です。
Q: 小規模事業場でも両方の法律が適用されますか?
A: はい、事業場の規模にかかわらず、労基法と安衛法は原則としてすべての事業場に適用されます。ただし、安衛法における安全衛生管理体制(産業医の選任、衛生委員会の設置など)は事業場規模に応じた要件が設定されており、2026年改正ではストレスチェックが全事業場に義務化されるなど、小規模事業場への適用も拡大されます。
Q: 安衛法に違反すると、どのような罰則がありますか?
A: 安衛法違反の罰則は、違反の内容によって異なります。たとえば、安全措置・衛生措置義務違反(第20〜25条関連)は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金、労働者死傷病報告の虚偽報告は50万円以下の罰金などが定められています。法人に対しては両罰規定により、行為者とは別に法人にも罰金刑が科されます。
参考文献
- 厚生労働省, 「労働基準法」, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunhou/
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法」, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法等の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」, 2025年5月公布
- 労働基準関係法制研究会, 「報告書」, 厚生労働省, 2025年1月, https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47839.html
- 厚生労働省, 「労働契約法のあらまし」, https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/
- e-Gov法令検索, 「労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)」, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057
- e-Gov法令検索, 「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

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