【労働安全衛生法改正】SDS(安全データシート)交付義務の拡大|2026年実践ガイド完全版

【労働安全衛生法改正】SDS(安全データシート)交付義務の拡大|2026年実践ガイド完全版|主な変更点と取るべき4ステップ |立ち仕事のミカタ | アルケリス株式会社

2026年4月、SDS(安全データシート)の交付義務が大幅に拡大されることをご存知ですか? これまで約3,000物質に限られていたSDS交付義務の対象が、危険有害性のあるすべての化学物質へと広がります。製造業や建設業をはじめ、化学物質を取り扱う現場で立ち仕事に従事する方々にとって、この改正は日常業務に直結する重要な変更です。本記事では、SDS交付義務の拡大に伴う2026年改正の全体像と、事業者が今から取り組むべき実務対応を詳しく解説します。

この記事でわかること

  • SDS(安全データシート)の基本的な仕組みと16セクション構成
  • 2026年4月施行のSDS交付義務拡大の具体的な変更点
  • SDS情報を活用したリスクアセスメントの進め方
  • 事業者が今すぐ着手すべき実務対応ステップ
  • SDS管理のデジタル化の最新動向

SDS(安全データシート)交付義務の拡大とは? ── 2026年改正の概要

SDSとは何か

SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)とは、化学物質の危険有害性情報を体系的にまとめた文書です。化学物質を譲渡・提供する際に、その物質の性質、取扱い上の注意、応急措置、廃棄方法などの情報を相手方に伝えるために用いられます。

労働安全衛生法第57条の2に基づき、事業者は対象となる化学物質を譲渡・提供する際に、SDSを交付する義務を負っています。SDSは国際的にはGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に準拠した統一的な形式で作成されます。

従来の制度と改正のポイント

これまでのSDS交付義務は、労働安全衛生法施行令別表第9に掲げられた約674物質(通知対象物)と、同別表第3の第1類・第2類物質を合わせた範囲に限定されていました。2024年4月の改正で対象物質は約2,900種に拡大されましたが、それでもなお「リストに載っている物質のみ」という枠組みでした。

2026年4月施行の改正では、この考え方が根本から変わります。

改正のポイント: 「リスト掲載物質のみ」から「危険有害性のあるすべての化学物質」へ対象が拡大

具体的には、GHS分類で危険有害性が確認されているすべての化学物質(およびそれを含む製剤)が、SDS交付義務・ラベル表示義務の対象となります。厚生労働省の推計では、新たに数万種類の化学物質が対象に加わる可能性があるとされています。

制定の背景 ── なぜ対象を拡大するのか

厚生労働省によると、日本国内で業務上疾病として報告される化学物質による健康障害は、年間約500件にのぼります(厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査」2023年)。その中には、従来のリストに掲載されていない物質による被害も含まれていました。

2021年に取りまとめられた「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」報告書では、個別の規制(特化則・有機則等)に依存した従来の管理方式から、事業者による自律的な化学物質管理への転換が提言されました。SDS交付義務の拡大は、この自律的管理を支える情報基盤の整備として位置づけられています。

SDSの16セクション構成 ── 何が記載されているか

SDSはJIS Z 7253に準拠し、以下の16セクションで構成されています。現場で化学物質を取り扱う際に参照すべき重要情報が網羅されています。

セクション項目名主な記載内容
1化学品及び会社情報製品名、供給者の連絡先
2危険有害性の要約GHS分類、注意喚起語、絵表示
3組成及び成分情報化学名、濃度、CAS番号
4応急措置吸入・皮膚接触時の対処法
5火災時の措置消火方法、適切な消火剤
6漏出時の措置封じ込め・回収方法
7取扱い及び保管上の注意安全な取扱い条件、保管条件
8ばく露防止及び保護措置管理濃度、保護具の種類
9物理的及び化学的性質外観、沸点、引火点等
10安定性及び反応性避けるべき条件、混触危険物質
11有害性情報急性毒性、発がん性等
12環境影響情報水生毒性、残留性
13廃棄上の注意廃棄方法、関連法規
14輸送上の注意国連番号、輸送での注意事項
15適用法令労安法、化管法、毒劇法等
16その他の情報作成日、改訂履歴

特に現場の安全管理において重要なのは、セクション2(危険有害性の要約)セクション4(応急措置)セクション7(取扱い及び保管上の注意)セクション8(ばく露防止及び保護措置)の4つです。立ち仕事で化学物質を扱う作業者の方は、少なくともこの4セクションの内容を理解しておくことが推奨されます。

SDS交付の方法とタイミング

交付の方法

SDSの交付方法は、労働安全衛生規則第34条の2の4に定められており、以下の方法が認められています。

  • 書面(紙)の交付: 製品に同封または別送
  • 電磁的方法による提供: メール添付、Web上でのダウンロード提供、CD-ROM等の記録媒体

2026年の改正後も、これらの方法に変更はありません。ただし、対象物質の大幅な増加に伴い、電磁的方法による効率的な提供がますます重要になると考えられています。

交付のタイミング

SDSは、化学物質を譲渡または提供する時までに交付しなければなりません。また、以下の場合にはSDSの更新・再交付が必要です。

  • SDS記載内容に変更が生じた場合
  • 新たな危険有害性情報が判明した場合
  • GHS分類が変更された場合

改正後は、SDSの記載内容を5年以内ごとに確認し、変更があれば更新することが努力義務として求められます。

SDS情報を活用したリスクアセスメントの実施

リスクアセスメントとSDSの関係

2016年6月から、一定の化学物質を取り扱う事業者にはリスクアセスメントの実施が義務づけられています。2026年の改正により、SDS交付義務の対象となるすべての化学物質について、リスクアセスメントの実施が求められるようになります。

リスクアセスメントでは、SDSに記載された以下の情報が不可欠です。

  • セクション2: 危険有害性の分類・区分(リスクの重大性評価に使用)
  • セクション8: 許容濃度・ばく露限界値(ばく露の程度の評価に使用)
  • セクション11: 有害性情報(健康影響の予測に使用)

実施の手順

厚生労働省が公開している「化学物質のリスクアセスメント実施支援ツール」(CREATE-SIMPLE等)を活用することで、専門知識が限られる中小事業者でもリスクアセスメントを進めることができます。基本的な手順は以下のとおりです。

  1. 化学物質の特定: 職場で使用するすべての化学物質を洗い出す
  2. SDS情報の収集: 各化学物質のSDSを入手・確認する
  3. ばく露の推定: 使用量、使用方法、換気状況等からばく露量を推定する
  4. リスクの見積り: 危険有害性とばく露の程度からリスクレベルを判定する
  5. 対策の検討・実施: リスクレベルに応じた低減措置を講じる

特に製造業や建設業など、長時間の立ち仕事で化学物質にばく露される作業では、作業姿勢による疲労と化学物質ばく露が複合的に健康リスクを高める可能性があります。リスクアセスメントの際には、作業環境全体を総合的に評価することが重要です。

SDS管理のデジタル化 ── chemSHERPA等の動向

紙管理からデジタル管理へ

対象物質の大幅な拡大に伴い、SDSの管理業務は従来の紙ベースでは対応が困難になると予想されます。すでに多くの大手製造業では、SDS管理のデジタル化が進んでいます。

chemSHERPA(ケムシェルパ)は、製品含有化学物質の情報を効率的に伝達するための共通スキームで、経済産業省の主導で開発されました。SDSそのものを直接管理するツールではありませんが、サプライチェーン全体での化学物質情報の共有基盤として活用が広がっています。

デジタル化のメリット

SDS管理をデジタル化することで、以下のメリットが期待できます。

  • 検索性の向上: 必要なSDSを即座に見つけられる
  • 更新管理の効率化: 改訂版の自動通知、旧版の管理
  • リスクアセスメントとの連携: SDS情報をリスクアセスメントツールに取り込める
  • 法令遵守の確実性: 交付漏れの防止、交付履歴の記録

中小事業者向けには、NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)が提供するGHS混合物分類判定システムや、厚生労働省の職場のあんぜんサイトでのSDS検索機能など、無料で利用できるツールも整備されています。

違反した場合のリスク

SDS交付義務に違反した場合、労働安全衛生法第119条に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

ただし、罰則の適用以前に重要なのは、SDS未交付によって化学物質の危険有害性情報が伝わらず、労働災害が発生するリスクです。特に立ち仕事の現場では、長時間にわたって化学物質にばく露されるケースが多く、適切な情報提供がなければ、慢性的な健康被害につながりかねません。

また、化学物質による労働災害が発生した場合、SDS交付義務を果たしていなかったことは、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われる根拠にもなり得ます。

事業者の実務対応ステップ ── 2026年4月に向けて

2026年4月の施行に向けて、事業者が取り組むべき実務対応を段階的に整理します。

ステップ1: 自社で取り扱う化学物質の棚卸し

まず、自社で使用・譲渡・提供しているすべての化学物質を洗い出します。原材料だけでなく、洗浄剤、潤滑油、塗料、接着剤など、日常的に使用している製品も対象となる可能性があります。

ステップ2: SDSの入手・整備状況の確認

棚卸しした化学物質について、SDSを入手済みか、最新版であるかを確認します。未入手の場合は供給者に交付を求めます。自社が供給者となる場合は、SDS作成の要否を判断します。

ステップ3: GHS分類の確認

対象となるかどうかの判断には、各化学物質のGHS分類を確認する必要があります。NITEのGHS分類情報や、厚生労働省の「GHS対応モデルSDS」を参考にしてください。

ステップ4: リスクアセスメントの実施・更新

新たにSDS交付義務の対象となった化学物質については、リスクアセスメントの実施が必要です。既存のリスクアセスメント結果についても、最新のSDS情報に基づく見直しを行います。

ステップ5: 社内体制の整備

  • 担当者の選任: 化学物質管理者の選任(2024年4月より義務化済み)
  • 教育訓練: SDSの読み方、リスクアセスメントの方法に関する教育
  • 管理システムの構築: SDS管理のデジタル化、更新ルールの策定

よくある質問

Q: すべての化学物質がSDS交付の対象になるのですか?

A: すべての化学物質ではなく、GHS分類で危険有害性が確認された化学物質が対象です。危険有害性が「分類できない」または「区分に該当しない」とされた物質は、義務の対象外となります。ただし、対象範囲は従来よりも大幅に広がります。

Q: 中小企業でもSDS交付義務はありますか?

A: はい。事業規模にかかわらず、対象となる化学物質を譲渡・提供する事業者はSDS交付義務を負います。ただし、厚生労働省や中小企業支援機関による無料支援ツール・相談窓口を活用することで、対応を効率的に進めることが可能です。

Q: SDSをもらう側(購入者側)に義務はありますか?

A: SDSの交付義務は供給者側にありますが、購入者側にも受け取ったSDSの内容を確認し、リスクアセスメントを実施する義務があります。SDSを受け取っただけで放置せず、現場の安全管理に活かすことが重要です。

まとめ

2026年4月のSDS交付義務の拡大は、日本の化学物質管理を「リスト規制型」から「自律管理型」へ転換させる重要な制度改正です。対象物質の大幅な増加に伴い、事業者には化学物質の棚卸し、SDSの整備、リスクアセスメントの実施など、幅広い実務対応が求められます。

特に製造業や建設業など、化学物質を扱いながら長時間の立ち仕事に従事する現場では、SDSの情報を正しく理解し活用することが、作業者の安全と健康を守る基盤となります。施行まで残された期間を有効に活用し、計画的に準備を進めていきましょう。

なお、本記事は2025年8月時点の情報に基づいています。最新の改正状況については、厚生労働省の公式サイトをご確認ください。

参考文献

  1. 厚生労働省, 「労働安全衛生法の一部を改正する省令等」, 2022年. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00005.html
  2. 厚生労働省, 「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 報告書」, 2021年. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19948.html
  3. 厚生労働省, 「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」, 2023年.
  4. NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構), 「GHS分類結果」. https://www.nite.go.jp/chem/ghs/ghs_index.html
  5. 日本産業規格, 「JIS Z 7253:2019 GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法 ── ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」, 2019年.
  6. 厚生労働省, 「職場のあんぜんサイト SDS情報」. https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/gmsds640.html
  7. 経済産業省, 「chemSHERPA(製品含有化学物質情報伝達スキーム)」. https://chemsherpa.net/
  8. 厚生労働省, 「業務上疾病発生状況等調査」, 2023年.

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立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

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立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

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