【カスハラとは?】カスタマーハラスメントの定義と判断基準|3つの要件を具体例で解説【2026年10月のカスハラ防止義務化】

【カスハラとは?】カスタマーハラスメントの定義と判断基準|3つの要件を具体例で解説【2026年10月のカスハラ防止義務化】 | 立ち仕事のミカタ | アルケリス株式会社

「カスタマーハラスメントの定義って、結局なんですか?」――2026年10月のカスハラ防止義務化を前に、こんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。お客様からの厳しい言葉が「正当なクレーム」なのか「カスハラ」なのか、現場で悩んだ経験はありませんか? 実は、カスタマーハラスメントの定義には法律で定められた3つの明確な要件があります。本記事では、その定義と判断基準を具体例とともにわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • カスタマーハラスメント(カスハラ)の法的な定義と3つの要件
  • 各要件の詳しい内容と判断のポイント
  • カスハラに該当する行為・該当しない行為の具体例
  • 正当なクレームとカスハラの線引き方法
  • 2026年10月の義務化に向けて押さえておくべきこと

カスタマーハラスメントの定義とは

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先などの利害関係者が、社会通念上許容される範囲を超えた言動を行い、労働者の就業環境を害する行為のことです。

この定義は、2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法(いわゆる「カスハラ防止法」)において法的に明文化されました。それ以前は厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2022年)などで概念として示されていましたが、法律上の定義が存在しない状態でした。

法制化によって、カスハラは3つの要件をすべて満たす行為として明確に定義されるようになりました。この3要件を理解することが、カスハラか否かを判断するための出発点となります。

カスハラの3つの要件を詳しく解説

改正労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメントの定義を構成する3つの要件が定められています。以下の要件をすべて同時に満たす場合に、カスハラに該当します。

要件概要判断のポイント
要件1利害関係者が行う行為であること顧客・取引先・施設利用者など、業務上の関係がある相手か
要件2社会通念上許容される範囲を超えた言動であること要求の内容または手段が社会常識に照らして妥当か
要件3労働者の就業環境を害すること業務遂行に支障が生じるほどの身体的・精神的苦痛があるか

要件1:「利害関係者」が行う行為であること

カスハラの第1の要件は、その行為が業務に関連する利害関係者によって行われることです。

「利害関係者」には、以下のような幅広い相手方が含まれます。

  • 顧客: 店舗の来店客、ECサイトの購入者など
  • 取引先: 資材の納入業者、委託先・委託元の担当者など
  • 施設利用者: 病院の患者、介護施設の入所者、公共施設の利用者など
  • その他: 配送先の受取人、サービスの利用者の家族(業務上接点がある場合)など

注意すべきは、「顧客」に限定されていないという点です。取引先からの威圧的な言動や、施設利用者の家族による過度な要求なども、カスハラに該当し得ます。

一方で、業務とまったく関係のない通行人や、SNS上で面識のない第三者からの嫌がらせは、この要件を満たさないため、カスハラの定義には当てはまりません(ただし、他の法令で対応できる場合があります)。

要件2:「社会通念上許容される範囲を超えた」言動であること

第2の要件は、その行為が社会通念上許容される範囲を超えた言動であることです。これがカスハラの判断基準として最も難しく、現場で悩みやすいポイントです。

厚生労働省のガイドラインでは、この判断を「要求の内容」「要求の手段・態様」の2つの観点から行うことが示されています。

要求の内容が不当な場合

そもそも要求している内容自体に合理性がない場合です。

  • 商品やサービスに瑕疵がないにもかかわらず、無償での提供を要求する
  • 契約内容を超えた過剰なサービスを執拗に要求する
  • 金品や慰謝料を要求する(法的根拠がない場合)
  • 従業員の解雇を要求する

要求の手段・態様が不当な場合

要求内容に一定の妥当性があったとしても、その伝え方・手段が社会的に許容される範囲を超えている場合は、カスハラに該当し得ます。

  • 暴言・侮辱: 人格を否定する発言、差別的な表現
  • 威嚇・脅迫: 「ネットに書くぞ」「上に言うぞ」などの脅し
  • 長時間の拘束: 執拗な電話や居座りによる業務妨害
  • 土下座の要求: 社会的相当性を著しく逸脱した謝罪の強要
  • 性的な言動: セクシュアルハラスメントに相当する発言や行為
  • SNSでの晒し: 従業員の氏名・写真の無断公開、誹謗中傷の拡散

この「社会通念」の基準は、「平均的な労働者」が同じ状況に置かれた場合にどう感じるかという客観的な視点で判断されます。個人の主観だけではなく、一般的な感覚が基準となる点が重要です。

要件3:労働者の「就業環境を害する」こと

第3の要件は、当該行為によって労働者の就業環境が害されることです。具体的には、以下のような状態が生じている場合を指します。

  • 精神的な苦痛により業務に集中できない、遂行が困難になる
  • 心身の不調(不眠、食欲不振、出勤困難など)が生じる
  • 当該顧客の対応を恐怖や強い不安を感じながら行っている
  • 結果として休職や離職に至る

この判断も、「平均的な労働者の感じ方」を基準として客観的に行われます。つまり、「この状況なら多くの労働者が就業環境を害されたと感じるだろう」と認められる場合に、要件3を満たすと判断されます。

一度きりの行為であっても、その内容が極めて悪質であれば就業環境を害すると認められることがあります。逆に、個々の行為は軽微でも反復・継続されることで蓄積的に就業環境を害する場合もあります。

カスハラに該当する具体例・該当しない具体例

3つの要件を踏まえて、具体的にどのような行為がカスハラに該当するのか(または該当しないのか)を見ていきましょう。

カスハラに該当する行為の例

以下は、3つの要件をすべて満たし、カスハラに該当すると考えられる行為の例です。

カテゴリ具体例
暴言・侮辱「こんなこともできないのか、バカじゃないの」と人格を否定する発言を繰り返す
威嚇・脅迫「おまえの名前を覚えたからな」「ネットに実名で書いてやる」と威圧する
長時間拘束2時間以上にわたりレジ前で苦情を言い続け、他の顧客対応を妨げる
土下座要求商品の不具合に対し、店員に土下座での謝罪を強要する
SNSでの晒し従業員の顔写真を無断で撮影し、「この店員の対応が最悪」とSNSに投稿する
性的言動接客中の従業員に対して性的な発言を繰り返す、身体に触れる
過剰な要求契約にない無料サービスを執拗に要求し、断ると「訴えるぞ」と脅す
リピート型毎週来店して同じ苦情を繰り返し、そのたびに1時間以上従業員を拘束する

カスハラに該当しない行為の例

一方で、以下のような行為は正当なクレーム・苦情として扱われ、カスハラには該当しないと考えられます。

  • 正当な返品・交換の要求: 購入した商品に不具合があり、返品・交換を求める
  • 品質への苦情: 提供された料理に異物が混入しており、改善を求める
  • サービスへの意見: 対応が遅かったことについて冷静に不満を伝える
  • 合理的な説明の要求: 請求金額の内訳について説明を求める
  • 再発防止の要望: 同じミスが起きないよう改善を要望する

これらは、要求の内容に合理性があり、手段も社会通念上許容される範囲内にとどまっているため、要件2を満たしません。顧客が不満を述べること自体はカスハラではないという点を理解しておくことが大切です。

グレーゾーンの判断ポイント

現場で最も悩ましいのは、カスハラか正当なクレームか判断が難しいグレーゾーンのケースです。判断に迷った場合は、以下の4つの視点で整理すると考えやすくなります。

  1. 要求内容の妥当性: 提供した商品・サービスに実際に瑕疵や不備があるか
  2. 手段の相当性: 要求の伝え方が、内容に対して相当な範囲に収まっているか
  3. 反復性・継続性: 同じ行為が繰り返されていないか
  4. 業務への影響度: 対応にかかる時間や精神的負担が業務遂行に支障をきたすレベルか

たとえば、「商品の不具合に対して強い口調で一度苦情を伝える」行為は、手段の相当性について検討の余地はあるものの、一度きりで業務への支障が限定的であれば、カスハラとまでは言えない可能性があります。しかし、同じ行為が繰り返される場合や、長時間にわたる場合は、要件2・要件3を満たすと判断される可能性が高まります。

重要なのは、一つの行為だけで即座にカスハラと断定するのではなく、状況全体を総合的に評価するという視点です。厚生労働省は今後公布される指針(ガイドライン)において、より具体的な事例を示す予定です。

2026年10月の義務化で企業に求められること

改正労働施策総合推進法は2026年10月1日に施行され、すべての事業主にカスハラ防止の措置義務が課されます。カスハラの定義を正しく理解することは、義務化対応の第一歩です。

事業主に求められる対応としては、主に以下の3点が挙げられます。

  • 方針の明確化と周知・啓発: カスハラの定義や対応方針を社内で共有し、研修を実施する
  • 相談体制の整備: カスハラ被害を相談できる窓口を設け、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止を徹底する
  • 事後対応の体制構築: 事実確認、被害者保護、再発防止のプロセスを整備する

とりわけ、立ち仕事が中心の小売業、医療・福祉、飲食業、サービス業などの現場では、接客の最前線で働く従業員がカスハラに直面しやすい環境にあります。厚生労働省の実態調査(2024年)でも、これらの業種でカスハラ相談の割合が高いことが報告されています。立ち仕事の身体的な疲労に、カスハラによる精神的ストレスが重なる「二重の負担」を軽減するためにも、定義の正確な理解と早期の対策準備が重要です。

カスハラ防止義務化の全体像については、「カスタマーハラスメント防止が義務化|2026年10月施行の法改正を解説」で詳しく解説しています。

よくある質問

Q: 大声で怒鳴られたら、すべてカスハラに該当しますか?

A: 大声で怒鳴る行為だけで自動的にカスハラに該当するわけではありません。3つの要件をすべて満たすかどうかで判断します。商品に重大な不具合があり、一度だけ強い口調で苦情を伝えた場合は、正当なクレームの範囲内と判断される可能性があります。一方で、不具合の有無にかかわらず人格否定を含む暴言を長時間にわたって浴びせる行為は、カスハラに該当する可能性が高いといえます。

Q: カスハラの定義は法律で決まったのですか? それとも企業が独自に決めるものですか?

A: 2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、カスハラの定義は法律で明文化されました。企業が独自に定義する必要はなく、法律上の3つの要件が判断の基本的な枠組みとなります。ただし、各企業が自社の業態に合わせてより具体的な判断基準やマニュアルを策定することが推奨されています。

Q: 正当なクレームをカスハラ扱いしてしまうリスクはありますか?

A: その懸念は重要です。カスハラ対策は顧客の正当な権利を侵害するものであってはなりません。3つの要件に基づいて冷静に判断し、「お客様の意見を封じる」ためではなく、「従業員の就業環境を守る」ための対策であることを社内で共有することが大切です。判断に迷うケースは一人で抱え込まず、管理者や相談窓口に報告する仕組みを整えましょう。

まとめ

カスタマーハラスメント(カスハラ)の定義は、改正労働施策総合推進法において3つの要件として明確化されました。

  1. 利害関係者が行う行為であること
  2. 社会通念上許容される範囲を超えた言動であること
  3. 労働者の就業環境を害すること

この3要件をすべて満たす場合にカスハラに該当し、いずれか一つでも欠ければ該当しません。判断に迷うグレーゾーンのケースでは、要求内容の妥当性、手段の相当性、反復性、業務への影響度の4つの視点で総合的に評価することが重要です。

2026年10月の施行に向けて、まずはこの定義を社内で正しく共有することから始めましょう。正当なクレームとカスハラの違いを理解し、従業員が安心して働ける環境を整えることが、すべての事業者に求められています。

参考文献

  1. 厚生労働省, 「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部を改正する法律」, 2025年6月11日公布. https://www.mhlw.go.jp/
  2. 厚生労働省, 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」, 2022年. https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf
  3. 厚生労働省, 「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/
  4. 厚生労働省, 「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(パワハラ指針), 2020年. https://www.mhlw.go.jp/
  5. 東京都, 「東京都カスタマーハラスメント防止条例」, 2024年制定・2025年4月施行. https://www.metro.tokyo.lg.jp/

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