【介護従事者の約7割がハラスメントを経験】医療・介護現場のカスハラ問題|患者・利用者からのハラスメント対策

医療・介護の現場で働くあなたは、患者や利用者からの暴言・暴力に悩んだ経験はありませんか? 医療 介護 カスハラは、いま業界全体で深刻化している問題です。厚生労働省の調査では、介護従事者の約7割がハラスメントを経験したと報告されており、医療現場でも同様の傾向が確認されています。2026年10月には改正労働施策総合推進法が施行され、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止が全事業主に義務化されます。命と健康を預かる医療・介護の現場では、患者・利用者との関係性の特殊さゆえに、対策が後回しにされがちでした。本記事では、医療・介護現場特有のカスハラの実態から、組織的な対応策、法改正への備えまでを網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 医療・介護現場で発生するカスハラの類型と具体例
- 認知症患者の行為とカスハラの線引きの考え方
- 患者ハラスメントが医療従事者のメンタルヘルスに与える影響
- 組織として取り組むべき具体的な対策と職場改善チェックリスト
- 2026年10月の義務化に向けて医療・介護施設が準備すべきこと
医療・介護現場における カスハラの実態
なぜ医療・介護は特殊なのか
医療・介護の現場は、他のサービス業とは本質的に異なる特徴を持っています。第一に、生命や健康に直結するサービスであるため、患者・利用者やその家族の不安やストレスが極めて高い状態で接することになります。第二に、身体に触れるケアが業務の中心であるため、セクシュアルハラスメントの被害が発生しやすい構造があります。第三に、サービスの拒否が難しいという点です。小売業や飲食業であれば退店を求めることも可能ですが、医療機関には応招義務(医師法第19条)があり、正当な事由がなければ診療を拒否できません。
こうした構造的な要因が重なり、医療・介護従事者は「患者のためだから仕方がない」と被害を我慢してしまう傾向があると指摘されています。
医療現場でのカスハラ類型
医療現場で発生するカスハラは、主に以下の5つに分類できます。
1. 暴言・威圧的言動
「治らなかったらどうしてくれるんだ」「お前に何がわかる」といった暴言は、外来窓口や病棟で日常的に発生しています。日本医労連の調査(2024年)によると、医療従事者の約5割が患者やその家族からの暴言を経験しています。
2. 身体的暴力
殴る、蹴る、つねる、物を投げるといった行為は、救急外来や精神科病棟で特に多く報告されています。全日本病院協会の調査では、過去1年間に院内暴力を経験した医療機関は約半数に上りました。
3. セクシュアルハラスメント
入浴介助や身体診察の場面で、看護師や介護職員が性的な言動や身体への接触被害を受けるケースが後を絶ちません。女性従事者だけでなく、男性従事者も被害に遭うことがあります。
4. 過度な要求・特別扱いの強要
「個室に無料で移してほしい」「主治医を替えろ」「24時間付きっきりで対応しろ」など、医療サービスの範囲を超えた要求を執拗に繰り返すケースです。
5. 訴訟を盾にした脅迫
「訴えてやる」「SNSで拡散する」「マスコミに言う」といった言葉で、従事者を心理的に追い詰める行為です。近年はSNSでの誹謗中傷や口コミサイトへの悪質な書き込みも増加しています。
介護現場での利用者・家族からのハラスメント
介護現場のハラスメントは、利用者本人からの行為と、利用者の家族からの行為に大別されます。
利用者本人からのハラスメント
厚生労働省が2019年に公表した「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書」によると、介護従事者の約4割〜7割(サービス種別により差異)が利用者からのハラスメントを経験しています。内訳は、身体的暴力が最も多く、次いで精神的暴力、セクシュアルハラスメントの順です。
- 身体的暴力: 叩く、つねる、引っかく、唾を吐く、物を投げつける
- 精神的暴力: 怒鳴る、罵倒する、無視する、理不尽な要求を繰り返す
- セクシュアルハラスメント: 身体を触る、卑猥な言葉をかける、下着姿で対応する
利用者の家族からのハラスメント
「介護のプロなんだからもっとしっかりやれ」「こんなサービスなら金を返せ」といった精神的暴力が中心です。ケアプランの範囲外のサービスを強要したり、夜間・休日に私的な連絡を繰り返すケースも報告されています。
認知症患者の行為とカスハラの線引き
判断が難しいケース
医療・介護現場特有の課題として、認知症や精神疾患のある患者・利用者による行為をどう扱うかという問題があります。認知症の周辺症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)として現れる暴言や暴力、セクシュアルな行為は、本人の意図的な行為とは言い切れない場合があります。
厚生労働省の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」(2022年改訂版)では、認知症等の病態に起因する行為であっても、職員の安全と健康は守られるべきであるという基本姿勢を示しています。
線引きの基本的な考え方
重要なのは、行為者の責任能力の有無にかかわらず、従事者が受ける被害は同じであるという認識です。線引きにおいては、以下のポイントが参考になります。
- 疾患に起因する行為: カスハラとは分類しないが、職員の安全確保のための対策は同等に必要
- 疾患があっても判断能力が残存している場合の行為: カスハラに該当し得る
- 家族による行為: 患者・利用者の疾患を理由にした免責は認められない
いずれの場合も、「仕方がない」と放置するのではなく、組織としてリスクアセスメントを行い、適切なケア体制を整えることが求められます。
医療従事者 保護の観点からみるメンタルヘルスへの影響
深刻な精神的ダメージ
患者ハラスメントが医療・介護従事者のメンタルヘルスに与える影響は深刻です。公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」(2023年度)によると、介護従事者の離職理由として「利用者やその家族との人間関係」を挙げる割合が上位に入っています。
カスハラを受けた従事者に見られる症状として、以下が報告されています。
- 急性ストレス反応: 動悸、不眠、食欲不振、集中力の低下
- バーンアウト(燃え尽き症候群): 情緒的消耗感、脱人格化、達成感の低下
- PTSD様の症状: 暴力被害後のフラッシュバック、回避行動
- 離職意向の上昇: 「この仕事を続けていけない」という気持ちの高まり
立ち仕事の身体的負担との複合効果
医療・介護の現場は、長時間の立ち仕事や移乗介助による身体的負担も大きい職場です。腰痛や下肢の疲労を抱えながら、さらにカスハラによる精神的ストレスが重なることで、心身の健康が複合的に損なわれるリスクがあります。
全日本自治団体労働組合の調査(2023年)では、カスハラを受けた看護師の約6割が「身体的な症状も悪化した」と回答しており、精神的ストレスが身体症状を増幅させる悪循環が指摘されています。医療従事者保護の観点からは、カスハラ対策と労働安全衛生対策を一体的に進めることが重要です。
組織的な対応策――現場を守る具体的な取り組み
予防策:ハラスメントを起こさせない環境づくり
1. 院内・施設内のポスター掲示
「当院では暴言・暴力・ハラスメント行為に対し、毅然とした対応をいたします」といった掲示は、抑止効果が期待できます。厚生労働省も、方針の明確化と周知を対策の第一歩として推奨しています。
2. 防犯カメラの設置
受付窓口や待合室、共用スペースへの防犯カメラの設置は、暴力行為の抑止と事後検証の両面で有効です。設置にあたっては、プライバシーへの配慮と設置目的の明示が必要です。
3. 複数対応(ペア対応)の原則化
訪問看護や訪問介護では、ハラスメントリスクの高い利用者に対して2人体制での対応を基本とすることが推奨されています。密室状態を避けることで、被害のリスクを大幅に低減できます。
発生時の対応:被害を最小化する仕組み
1. 対応マニュアルの整備
ハラスメント発生時の具体的な対応手順をマニュアル化します。「誰に報告するか」「どの段階で警察に通報するか」「記録はどのように残すか」といった手順を明確にしておくことで、現場の判断負荷を軽減できます。
2. 報告・記録システムの構築
インシデントレポートと同様の仕組みで、ハラスメント事案を組織として把握・蓄積する体制が必要です。報告しやすい環境をつくるために、匿名での報告も可能にすることが効果的です。
3. 被害者へのケア体制
被害を受けた従事者に対して、直属の上司による面談、産業医・カウンセラーへの相談窓口、必要に応じた配置転換や休暇取得の支援など、被害者を孤立させない仕組みを整えることが不可欠です。
事後対応:再発防止と組織学習
発生した事案を分析し、再発防止策を講じることも重要です。事案の類型化、発生要因の分析、対応策の見直しを定期的に行い、組織全体で学びを共有するPDCAサイクルを回していくことが求められます。
職場改善チェックリスト
医療・介護施設の管理者が、自施設のカスハラ対策の現状を確認するためのチェックリストです。
- [ ] カスハラに対する組織の方針を文書化し、院内・施設内に掲示している
- [ ] カスハラ対応マニュアルを整備し、全職員に周知している
- [ ] ハラスメント発生時の報告・記録の仕組みがある
- [ ] 相談窓口(内部または外部)を設置し、職員に周知している
- [ ] 暴力・ハラスメントリスクの高い場面で複数対応を原則としている
- [ ] 防犯カメラや緊急通報ボタンなどのセキュリティ設備を整備している
- [ ] 認知症等の疾患に起因する行為への対応手順を定めている
- [ ] 被害を受けた職員へのメンタルヘルスケア体制がある
- [ ] カスハラに関する職員研修を定期的に実施している
- [ ] 発生事案のデータを蓄積・分析し、再発防止に活用している
厚労省の指針と2026年10月の義務化への対応
国の取り組みと指針
厚生労働省は、医療・介護分野のハラスメント対策として、複数の指針やマニュアルを公表しています。
- 「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」(2019年初版、2022年改訂):介護事業者向けの具体的な対策手順を提示
- 「医療機関における暴言・暴力等のハラスメント対策について」(2024年通知):医療機関が講じるべき安全管理体制を整理
- 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2022年):業種横断的なカスハラ対策の基本的な枠組みを提示
2026年10月施行に向けた準備
2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日からすべての事業主にカスハラ防止措置が義務化されます。医療・介護施設が準備すべき事項は、主に以下の通りです。
1. 事業主の方針の明確化と周知・啓発
カスハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、職員への周知・啓発を行います。院内掲示だけでなく、就業規則への記載、研修の実施なども含まれます。
2. 相談体制の整備
職員が安心して相談できる窓口を設置し、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止を明示します。
3. 事後の迅速かつ適切な対応
事案が発生した場合の事実確認、被害者への配慮、行為者への対応、再発防止策の実施などの体制を整えます。
4. プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
相談者・行為者双方のプライバシー保護を徹底し、相談や事実確認への協力を理由とする不利益取扱いを禁止します。
なお、カスハラ義務化の全体像については、「カスタマーハラスメント防止が義務化|2026年10月施行の法改正を解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
よくある質問
Q: 患者が認知症の場合、暴力を受けても「カスハラ」にはならないのですか?
A: 法的なカスハラの定義に照らすと、意図的な行為かどうかは判断要素の一つになり得ます。しかし、認知症に起因する行為であっても、職員の安全を守るための対策は同等に必要です。厚生労働省のマニュアルでも、疾患に起因するかどうかにかかわらず、組織として安全対策を講じることが求められています。
Q: 応招義務があるので、暴力を振るう患者の診療を断ることはできないのですか?
A: 応招義務(医師法第19条)は絶対的なものではありません。厚生労働省の「応招義務の解釈に関する通知」(2019年)では、患者の迷惑行為が診療の基礎となる信頼関係を喪失させるレベルに達している場合、正当な事由として診療を拒否できると示されています。ただし、緊急性の高い場合は対応が必要です。
Q: 小規模なクリニックや介護事業所でも対策は必要ですか?
A: 2026年10月の法改正では、事業規模にかかわらずすべての事業主が対象です。小規模施設であっても、方針の明確化、相談窓口の設置、対応マニュアルの整備は必要になります。外部の相談窓口サービスを活用するなど、施設の規模に応じた工夫が可能です。
まとめ
医療・介護現場のカスハラ問題は、従事者の心身の健康と直結する重大な労働安全衛生の課題です。患者・利用者との関係性の特殊さや応招義務の存在から対策が遅れがちでしたが、2026年10月のカスハラ防止措置義務化を契機に、業界全体での取り組み強化が求められています。
カスハラ対策は、従事者を守るだけでなく、提供する医療・介護サービスの質を維持・向上させるためにも不可欠です。人手不足が深刻化する医療・介護業界において、従事者が安心して働ける環境の整備は、人材の確保・定着にも直結します。
まずは本記事のチェックリストを活用して自施設の現状を把握し、できるところから対策を始めてみてください。
参考文献
- 厚生労働省, 「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書」, 2019年. https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000208381_00001.html
- 厚生労働省, 「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」(改訂版), 2022年. https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947528.pdf
- 厚生労働省, 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」, 2022年. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24067.html
- 厚生労働省, 「職場のハラスメントに関する実態調査」, 2024年.
- 全日本病院協会, 「院内暴力等に関する実態調査報告書」.
- 公益財団法人介護労働安定センター, 「令和5年度 介護労働実態調査結果」, 2024年. https://www.kaigo-center.or.jp/
- 厚生労働省, 「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」(医政発1225第4号), 2019年.
- 改正労働施策総合推進法(令和7年法律第48号), 2025年6月11日公布.

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