【2026年10月から義務化】パワハラ・セクハラ・カスハラ|3つのハラスメント防止義務を整理する

ハラスメント防止義務の比較をしたいと考えたことはありませんか? パワハラ、セクハラ、カスハラ――職場で問題になるハラスメントにはそれぞれ異なる法的根拠があり、事業主に求められる措置義務の内容も少しずつ異なります。しかし、3つを並べて整理すると、共通する枠組みが見えてきます。これを理解することが、実務上の一体的な対策の第一歩です。
とくに、小売・飲食・医療・製造など現場では、顧客対応や上下関係のストレスが身体的負担と重なりやすく、ハラスメント対策は労働者の健康と定着率に直結するテーマです。本記事では、パワハラ・セクハラ・カスハラの3つの防止義務を比較し、根拠法・定義・加害者の関係性・義務化時期などの違いと共通点をわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- パワハラ・セクハラ・カスハラそれぞれの法的根拠と義務化の経緯
- 3つのハラスメント防止義務を一覧で比較した全体像
- 措置義務に共通する3つの柱(方針明確化・相談体制・事後対応)
- 根拠法・加害者の関係性・対象行為など主な相違点
- 一体的に運用するメリットと実務上のポイント
ハラスメント防止義務 比較――3つの全体像を一覧で把握する
まず、パワハラ・セクハラ・カスハラの防止義務を比較表で俯瞰しましょう。細かな条文を読む前に全体像をつかむことが、理解への近道です。
| 比較項目 | パワーハラスメント(パワハラ) | セクシュアルハラスメント(セクハラ) | カスタマーハラスメント(カスハラ) |
|---|---|---|---|
| 根拠法 | 労働施策総合推進法(第30条の2) | 男女雇用機会均等法(第11条) | 労働施策総合推進法(改正法・第30条の5) |
| 定義のポイント | 優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境を害すること | 職場における性的な言動に対する労働者の対応により不利益を受けること、または就業環境が害されること | 顧客等の利害関係者による社会通念を超えた言動で、就業環境を害すること |
| 加害者の関係性 | 主に職場内の上司・同僚・部下 | 職場内外(上司・同僚・取引先等) | 顧客・取引先・施設利用者等(社外) |
| 義務化時期 | 2020年6月(大企業)/2022年4月(中小企業) | 1999年4月(配慮義務)→2007年4月(措置義務に強化) | 2026年10月(全事業主に一律適用予定) |
| 対象事業主 | すべての事業主 | すべての事業主 | すべての事業主 |
| 行政措置 | 助言・指導・勧告、企業名公表 | 助言・指導・勧告、企業名公表、調停 | 助言・指導・勧告、企業名公表(予定) |
| 直接的な罰則 | なし(ただし報告拒否等に過料) | なし(ただし報告拒否等に過料) | なし(予定) |
この表からわかるように、いずれも事業主に対する措置義務という枠組みは共通しています。一方で、根拠法、加害者の立場、義務化の時期には明確な違いがあります。以下では、それぞれの詳細を解説します。
各ハラスメント防止義務の詳細
パワーハラスメント防止義務
パワーハラスメント(パワハラ)防止の措置義務は、労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)第30条の2に規定されています。
2020年6月に大企業に対して義務化され、2022年4月からは中小企業にも適用が拡大されました。これにより、現在ではすべての事業主がパワハラ防止措置を講じる義務を負っています。
厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)では、パワハラの典型的な6類型として以下が示されています。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制)
- 過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
立ち仕事の現場では、製造ラインや店舗での上司からの過度な叱責、経験の浅い従業員への無理な作業配分などがパワハラに該当するケースがあります。長時間の立位作業で疲労が蓄積した状態では、些細な言動でもストレスが増幅されやすく、パワハラ対策は身体的な負担軽減策と合わせて考える必要があります。
セクシュアルハラスメント防止義務
セクシュアルハラスメント(セクハラ)の防止義務は、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)第11条に規定されています。
セクハラ防止は、3つのハラスメントの中で最も早く法制化されました。1997年の法改正で事業主の「配慮義務」として規定され、1999年4月から施行されました。その後、2007年4月の改正で「措置義務」に強化され、現在に至ります。
セクハラは大きく2つの類型に分けられます。
- 対価型セクハラ: 性的な言動への対応(拒否・抗議等)を理由に、解雇・降格・減給などの不利益を受けること
- 環境型セクハラ: 性的な言動により就業環境が不快なものとなり、業務遂行に支障が生じること
重要な点として、セクハラの加害者は職場内の人物に限定されません。取引先の担当者や顧客からの性的な言動もセクハラに含まれ、事業主は措置義務の対象として対応する必要があります。
カスタマーハラスメント防止義務
カスタマーハラスメント(カスハラ)の防止義務は、改正労働施策総合推進法(第30条の5)に基づき、2026年10月1日に施行予定です。2025年6月11日に改正法が公布されました。
カスハラ防止の義務化は、3つのハラスメントの中で最も新しい動きです。厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(2024年)によると、過去3年間にカスハラに関する相談があった企業は27.9%に上り、前回調査(2020年)の19.5%から8.4ポイント増加しています。こうした被害の深刻化が法制化の大きな推進力となりました。
カスハラの法的定義は、以下の3つの要件をすべて満たす行為です。
- 顧客・取引先等の利害関係者が行う言動であること
- 社会通念上許容される範囲を超えた言動であること
- 労働者の就業環境を害すること
パワハラ防止と同じ「労働施策総合推進法」を根拠法とする点が特徴的です。これは、パワハラ防止措置で培った企業の対応ノウハウを、カスハラ対策にも転用しやすくする意図があるとされています。
なお、パワハラ防止措置は大企業先行・中小企業段階適用でしたが、カスハラ防止措置は最初からすべての事業主に一律適用されます。小規模事業者も施行日までの準備が必要です。
3つの防止義務に共通する措置義務の枠組み
パワハラ・セクハラ・カスハラはそれぞれ根拠法や定義が異なりますが、事業主に求められる措置義務の基本構造は共通しています。この共通性を理解することが、効率的な対策の鍵です。
方針の明確化と周知・啓発
3つのハラスメントすべてについて、事業主はハラスメントを行ってはならないという方針を明確にし、労働者に周知・啓発することが求められます。具体的には、就業規則やハラスメント防止規程への明記、社内報やポスターによる周知、研修の実施などが該当します。
相談体制の整備
相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知することが義務づけられています。相談窓口の担当者が適切に対応できるよう、研修やマニュアルの整備も求められます。相談者のプライバシーを保護し、相談したことを理由に不利益な取り扱いをしてはならないという点も共通です。
事後の迅速かつ適切な対応
ハラスメントが発生した場合(または発生の疑いがある場合)、事業主は事実関係を迅速・正確に確認し、被害者への配慮措置と再発防止策を講じる義務があります。行為者に対する懲戒処分等の措置も、就業規則に基づいて適切に行う必要があります。
この3本柱――方針明確化・相談体制・事後対応――は、パワハラ・セクハラ・カスハラのいずれにおいても共通する枠組みです。厚生労働省が各ハラスメントの指針で示す措置義務の内容を並べると、その構造的な共通性は明らかです。
知っておくべき3つの相違点
共通の枠組みがある一方で、実務上押さえておくべき重要な相違点があります。
相違点1:根拠法と義務化の時期
セクハラ防止は男女雇用機会均等法に基づき、最も長い歴史を持ちます。措置義務としては2007年から約18年の運用実績があります。一方、パワハラ防止は労働施策総合推進法に基づき2020年に義務化、カスハラ防止は同法の改正により2026年10月に義務化予定です。
義務化の時期が異なるため、企業の対応の成熟度にも差があります。セクハラ対策は比較的整備されている企業が多い一方、カスハラ対策はこれから本格的に整備する企業が大半でしょう。
相違点2:加害者の関係性
パワハラの加害者は主に職場内の優越的な立場にある者(上司、先輩、専門知識を持つ同僚など)です。セクハラは職場内外を問わず加害者となり得ますが、事業主の措置義務は主に職場内での発生に焦点が当てられます。カスハラは顧客・取引先など社外の利害関係者が加害者であるという点が、他の2つとは大きく異なります。
加害者が社外にいるカスハラの場合、社内規程による懲戒処分が行えないため、対応の選択肢が異なるという実務上の特徴があります。出入り禁止措置、対応の打ち切り、法的措置の検討など、社内ハラスメントとは異なるアプローチが必要です。
相違点3:保護の範囲と対応方法
パワハラ・セクハラでは、加害者に対する懲戒処分や配置転換が典型的な措置です。一方、カスハラでは加害者が社外にいるため、労働者を守る手段として、対応者の交代、複数人での対応、対応マニュアルの整備、さらには警察や弁護士との連携といった方法が中心となります。
また、カスハラ防止措置では、正当なクレームとカスハラを区別するための判断基準の明確化が特に重要です。過度な対応制限は顧客満足度の低下を招くため、バランスの取れた運用が求められます。
一体的に運用するメリット
3つのハラスメント防止義務を別々に管理するのではなく、一体的に運用することで、以下のメリットが得られます。
共通の相談窓口で効率化
パワハラ・セクハラ・カスハラの相談窓口を一元化することで、運用コストを抑えながら、労働者にとっても「どこに相談すればいいかわからない」という問題を解消できます。厚生労働省も、ハラスメントの相談窓口は一元的に受け付ける体制を推奨しています(令和2年厚生労働省告示第5号)。
研修・啓発の効率化
3つのハラスメントに関する研修を個別に行うのではなく、一体的な研修プログラムとして実施することで、限られた研修時間を有効に活用できます。「ハラスメントとは何か」「共通する措置義務の枠組み」「各ハラスメントの特徴と対応の違い」を一連の流れで学べるため、受講者の理解も深まりやすくなります。
規程・マニュアルの統合
就業規則や社内規程においても、ハラスメント防止に関する規定を統合的に整備することで、管理の手間を軽減できます。「ハラスメント防止規程」として一本化し、各ハラスメントの定義と対応の違いを章立てで明記する方法が実務的です。
実務上のポイント
就業規則への記載
3つのハラスメント防止に関する方針と、行為者に対する処分の基準を就業規則に明記することが基本です。カスハラ防止義務の施行(2026年10月)に合わせて、既存の就業規則にカスハラの項目を追加する改定を計画的に進めましょう。
定期的な研修の実施
措置義務の中でも「周知・啓発」は継続的に行う必要があります。年1回以上の定期研修に加え、新規採用時や管理職昇進時の研修にハラスメント防止を組み込むことが推奨されています。研修では、現場に即した具体的な事例を用いると効果的です。
立ち仕事の現場では、接客中の顧客トラブル、作業ライン上での上司の指導方法など、業種・職種特有の場面を想定したケーススタディが有効です。
記録の保管と振り返り
相談の受付記録、事実確認の経過、対応結果などを適切に記録・保管することが重要です。記録は、同種の問題が再発した場合の対応指針となるほか、行政からの報告徴収や助言・指導に対応する際のエビデンスにもなります。厚生労働省は、相談記録は少なくとも3年間保管することを推奨しています。
よくある質問
Q: 3つのハラスメント防止義務に違反した場合、罰則はありますか?
A: パワハラ・セクハラ・カスハラのいずれについても、措置義務に違反したこと自体に対する直接的な罰則(罰金・懲役等)は設けられていません。ただし、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。また、厚生労働大臣の求める報告を行わなかった場合や虚偽の報告をした場合には過料が科されます。なお、措置義務を怠った結果としてハラスメントが発生し、労働者が損害を受けた場合には、民事上の損害賠償責任を問われるリスクがあります。
Q: カスハラ防止義務は2026年10月からですが、今から準備すべきですか?
A: はい、早期の準備を強くおすすめします。厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2022年)を公表しており、法制化に先駆けて対策を講じることが推奨されています。また、2026年10月の施行に向けて、今後省令や指針の詳細が順次公布される予定です。就業規則の改定、相談窓口の見直し、研修計画の策定など、準備には一定の期間が必要ですので、計画的に取り組みましょう。
Q: 小規模事業者でも3つの措置義務すべてに対応する必要がありますか?
A: はい、事業場の規模にかかわらず、1人でも労働者を雇用するすべての事業主が対象です。ただし、小規模事業者の場合、専任の担当者を置くことが難しいケースもあるでしょう。その場合は、事業主自身が相談窓口を兼ねることや、外部の相談機関(都道府県労働局、社会保険労務士等)を活用することも認められています。
まとめ
パワハラ・セクハラ・カスハラの3つのハラスメント防止義務は、根拠法や義務化の時期、加害者の関係性に違いがあるものの、方針明確化・相談体制・事後対応という措置義務の基本構造は共通しています。この共通性を活かして一体的に運用することで、対策の効率化とコスト削減を実現できます。
とくに、2026年10月のカスハラ防止義務化を控えた今は、既存のパワハラ・セクハラ対策を見直し、カスハラを含めた包括的なハラスメント防止体制を構築する絶好のタイミングです。就業規則の改定、相談窓口の一元化、研修計画の立案など、段階的に準備を進めることが重要です。
立ち仕事の現場では、身体的な疲労とハラスメントストレスの複合的な影響が労働者の健康と生産性を低下させます。身体的な負担軽減策と合わせてハラスメント防止対策を進めることが、持続可能な職場づくりの鍵となるでしょう。
参考文献
- 厚生労働省, 「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号), 2020年. https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf
- 厚生労働省, 「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号), 2006年(最終改正2020年). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605548.pdf
- 厚生労働省, 「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html
- 厚生労働省, 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」, 2022年. https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法). https://elaws.e-gov.go.jp/
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法). https://elaws.e-gov.go.jp/
- 厚生労働省, 「労働施策総合推進法の改正について(カスタマーハラスメント対策の義務化)」, 2025年. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

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