【機械安全の国際規格】ISO12100と日本の労働安全衛生法|リスクアセスメントの考え方

【機械安全の国際規格】ISO12100と日本の労働安全衛生法|リスクアセスメントの考え方 | 立ち仕事のミカタ | アルケリス株式会社

製造業や食品加工の現場で、機械による労働災害をどのように防いでいますか? 厚生労働省の統計によると、機械安全 ISO 12100 安衛法に関わる機械災害は労働災害全体の約4分の1を占め、死亡災害に限ると約3分の1に達します。「安全装置を付ければ十分」と考えがちですが、国際規格ISO 12100が示すのは、設計段階から危険源そのものを取り除くという根本的なアプローチです。日本でもJIS B 9700として採用され、安衛法の改正によりリスクアセスメントの努力義務化が進んでいます。本記事では、機械安全の国際的な考え方と日本の法制度の関係を分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • ISO 12100(機械類の安全性)の基本概念と3ステップメソッドの全体像
  • 本質的安全設計・安全防護・使用上の情報という3段階のリスク低減策
  • 日本のJIS B 9700とISO 12100の関係、安衛法における機械安全規制の位置づけ
  • 機械リスクアセスメントの具体的な進め方(危険源の同定からリスク低減まで)
  • CEマーキングとの関係や日本の製造業における機械安全の最新動向

機械安全の国際規格ISO 12100とは

ISO 12100の位置づけと基本理念

ISO 12100(正式名称:Safety of machinery – General principles for design – Risk assessment and risk reduction)は、機械類の安全性に関する最も基本的な国際規格です。国際標準化機構(ISO)が策定したこの規格は、あらゆる機械に共通する安全設計の原則とリスクアセスメントの方法論を定めています。

ISO 12100の基本理念は、「機械の設計者が、設計段階からリスクを体系的に低減する」という考え方にあります。従来の「事故が起きてから対策する」という事後対応型のアプローチではなく、設計の段階で危険源を特定し、許容可能なレベルまでリスクを低減することを求めています。

この規格は、ISO安全規格の階層構造において「タイプA規格」(基本安全規格)に位置づけられています。タイプA規格はすべての機械に適用される最上位の規格であり、その下にタイプB規格(グループ安全規格)、タイプC規格(個別機械安全規格)が体系的に配置されています。

規格の階層分類内容
タイプA基本安全規格すべての機械に適用される基本概念・設計原則ISO 12100
タイプBグループ安全規格広範囲の機械に適用される安全面・安全装置ISO 13849(制御システムの安全関連部)、ISO 14120(ガード)
タイプC個別機械安全規格特定の機械に対する詳細な安全要求事項ISO 10218(産業用ロボット)、ISO 23125(旋盤)

3ステップメソッドによるリスク低減

ISO 12100の核心は、3ステップメソッドと呼ばれるリスク低減の優先順位です。設計者は以下の順序でリスク低減策を講じなければなりません。

ステップ1:本質的安全設計方策

最も優先度が高いのが本質的安全設計です。これは危険源そのものを除去するか、リスクを低減するように機械を設計する方策を指します。具体的には以下のようなアプローチがあります。

  • 危険源の除去: 鋭利な端部を丸める、挟まれ箇所をなくす設計に変更する
  • エネルギーの低減: 駆動力・速度・温度・電圧を必要最小限にする
  • 暴露の低減: 自動給材装置の導入により、作業者が危険区域に入る頻度を減らす
  • 人間工学原則の適用: 不自然な姿勢や過度な力を必要としない設計にする

本質的安全設計は、後から追加する安全装置と異なり、無効化されたり劣化したりすることがないため、最も信頼性の高いリスク低減策とされています。

ステップ2:安全防護策(ガード・保護装置)

本質的安全設計だけでは除去できないリスクに対して、ガード(覆い・柵)や保護装置(ライトカーテン・両手操作装置等)を設置します。

  • 固定式ガード: ボルト等で固定され、工具なしでは取り外せない覆い
  • インターロック付き可動式ガード: ガードを開けると機械が停止する仕組み
  • 光線式安全装置(ライトカーテン): 検知エリアに人が入ると機械を停止させる
  • 両手操作装置: 両手で同時にボタンを押さないと起動しない仕組み

ステップ3:使用上の情報

ステップ1と2を講じてもなお残るリスク(残留リスク)については、使用者に情報を提供します。

  • 機械本体への警告表示: 警告ラベル・安全標識の貼付
  • 取扱説明書: 残留リスクの内容、安全な操作手順、保護具の指定
  • 教育訓練の指針: 必要な訓練内容の明示

重要なのは、この3ステップには厳格な優先順位があるということです。「警告ラベルを貼れば済む」という考え方は許されず、まず本質的安全設計を追求し、それでも残るリスクに対して安全防護を講じ、最後に使用上の情報で補完するという順序を守らなければなりません。

日本におけるISO 12100の受容――JIS B 9700と安衛法

JIS B 9700:ISO 12100の日本版

日本では、ISO 12100を翻訳し、JIS B 9700「機械類の安全性―設計のための一般原則―リスクアセスメント及びリスク低減」として2013年に制定しました(日本産業標準調査会)。技術的内容はISO 12100と一致しており(IDT: identical)、国際規格と同等の要求事項が日本語で参照できるようになっています。

JIS B 9700の制定により、日本の機械メーカーは国内向け製品であっても、国際的に認められたリスクアセスメントの方法論に基づいて安全設計を行う基盤が整いました。

安衛法における機械安全規制の変遷

日本の労働安全衛生法(安衛法)は、従来「仕様規定」と呼ばれるアプローチで機械安全を規制してきました。これは「回転軸には覆いを設けなければならない」「プレス機械には安全装置を取り付けなければならない」といった具体的な仕様を法令で定める方式です。

しかし、技術の多様化・高度化に伴い、仕様規定だけでは対応しきれないリスクが増加しました。そこで導入されたのがリスクアセスメントに基づくアプローチです。

安衛法における機械安全の主な規制を整理すると、以下のようになります。

法令・通達内容施行・発出年
安衛法第28条の2事業者によるリスクアセスメントの努力義務2006年
「機械の包括的な安全基準に関する指針」ISO 12100に対応した機械のリスクアセスメント・リスク低減の指針2007年改正
安衛則第24条の13機械譲渡者等による残留リスク情報の提供の努力義務2012年
化学物質のリスクアセスメント義務化(安衛法第57条の3)一定の化学物質についてリスクアセスメントを義務化(参考)2016年

特に重要なのが、2007年に改正された「機械の包括的な安全基準に関する指針」(厚生労働省告示)です。この指針はISO 12100の3ステップメソッドを日本の法体系に取り入れたもので、機械の製造者と使用者の双方にリスクアセスメントの実施を求めています。

仕様規定からリスクベースアプローチへの転換

従来の仕様規定は「最低限の安全基準」を定めるものであり、法令に書かれていない危険源への対応は事業者の判断に委ねられていました。一方、リスクベースアプローチでは、機械に関わるすべての危険源を洗い出し、体系的にリスクを評価・低減することが求められます。

この転換は「法令を守っていれば安全」という考え方から、「自ら危険を見つけ出し、合理的に低減する」という考え方への大きなパラダイムシフトです。厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」(2007年改正)でも、ISO 12100の考え方に基づく3ステップメソッドの実施が求められています。

機械リスクアセスメントの具体的な進め方

リスクアセスメントの基本プロセス

ISO 12100に基づく機械リスクアセスメントは、以下のプロセスで進めます。

1. 機械の制限の決定

まず、対象となる機械の使用条件を明確にします。

  • 使用上の制限: 意図する使用と合理的に予見可能な誤使用
  • 空間上の制限: 機械の可動範囲、作業者のアクセス範囲
  • 時間上の制限: 機械や部品の寿命、保全の間隔

2. 危険源の同定

次に、機械に存在するすべての危険源を体系的に洗い出します。ISO 12100では、危険源を以下のように分類しています。

  • 機械的危険源(押しつぶし、せん断、切傷、巻き込み等)
  • 電気的危険源(感電、アーク、静電気等)
  • 熱的危険源(高温・低温の表面、炎、爆発等)
  • 騒音による危険源
  • 振動による危険源
  • 放射による危険源
  • 材料・物質による危険源
  • 人間工学原則の無視による危険源(不自然な姿勢、不適切な照明等)

最後の「人間工学原則の無視による危険源」は、立ち仕事の現場にとって特に重要な視点です。長時間の立位作業を強いる機械レイアウトや、不自然な姿勢を要求する操作パネルの配置なども、ISO 12100の枠組みでは危険源として扱われます。

3. リスクの見積り

同定された各危険源について、リスクの大きさを見積もります。リスクは一般に以下の2つの要素の組み合わせで評価されます。

  • 危害のひどさ: 傷害や健康障害の重大性(軽傷→重傷→死亡)
  • 危害の発生確率: 暴露の頻度・時間、危険事象の発生確率、回避の可能性

4. リスクの評価

見積もったリスクが許容可能かどうかを判断します。許容できないリスクがある場合は、3ステップメソッドに従ってリスク低減策を実施します。

5. リスク低減の実施と記録

3ステップメソッドに従ってリスク低減策を実施し、その結果を記録します。リスク低減後に新たな危険源が生じていないかを確認することも重要です。この一連のプロセスは反復的に行われ、すべてのリスクが許容可能なレベルに達するまで繰り返します。

立ち仕事の現場における機械リスクアセスメントの視点

製造ラインや食品加工工場では、作業者は機械のそばで長時間立ち続けながら作業を行います。機械リスクアセスメントでは、挟まれ・巻き込まれといった急性の機械的危険源だけでなく、立位作業に伴う筋骨格系障害(MSDs: Musculoskeletal Disorders)のリスクも人間工学的危険源として評価すべきです。

例えば、機械の操作パネルの高さが不適切であれば、作業者は腰を曲げたり腕を持ち上げたりする不自然な姿勢を長時間とることになります。ISO 12100では、こうした人間工学的要因も設計段階で考慮すべき危険源として明記されており、本質的安全設計の一環として適切な作業高さや操作力の設定が求められます。

CEマーキングと日本の機械安全の最新動向

CEマーキングにおけるISO 12100の役割

EU(欧州連合)域内で機械を販売するには、機械指令(Machinery Directive 2006/42/EC)に適合し、CEマーキングを貼付する必要があります。2023年には新たに機械規則(Machinery Regulation (EU) 2023/1230)が採択され、2027年1月から適用が開始されます。

CEマーキング取得の過程では、ISO 12100に基づくリスクアセスメントの実施が事実上不可欠です。整合規格(Harmonised Standards)としてEN ISO 12100が指定されており、この規格に適合することで機械指令の必須安全衛生要求事項(EHSR)への適合が推定されます。

日本の機械メーカーがEU向けに製品を輸出する際には、ISO 12100に基づくリスクアセスメントの実施と技術文書の整備が必須となるため、国内向け製品であっても同じ手法を適用することが合理的です。

日本の製造業における機械安全の取組み状況

日本の製造業における機械安全の取り組みは着実に進展しています。厚生労働省は「機械の包括的な安全基準に関する指針」の普及を推進しており、中央労働災害防止協会(中災防)や日本機械工業連合会(日機連)を通じた研修・セミナーも活発に行われています。

一方で、課題も残されています。中小企業を中心に、リスクアセスメントの実施率にはまだ改善の余地があります。厚生労働省の「労働安全衛生調査」(2023年)によると、リスクアセスメントを実施している事業所の割合は製造業で約68%であり、特に従業員50人未満の事業所では実施率が低い傾向にあります。

また、機械の使用者(ユーザー企業)と製造者(メーカー)の間でのリスク情報の共有が十分でないケースも指摘されています。安衛則第24条の13で製造者による残留リスク情報の提供が努力義務化されていますが、実際には情報提供が不十分な場合や、提供された情報がユーザー企業で十分に活用されていない場合があります。

今後は、ISO 12100の考え方を機械の設計者だけでなく、現場の安全担当者や作業者にも広く浸透させることが重要です。特に、立ち仕事の現場で機械を日常的に使用する作業者が、残留リスクの内容を正しく理解し、適切な保護措置を講じられるようにすることが、機械災害のさらなる低減につながります。

まとめ

ISO 12100は、機械安全の国際的な基本規格として、設計段階からリスクを体系的に低減するための方法論を提供しています。その核心である3ステップメソッド(本質的安全設計→安全防護→使用上の情報)は、「危険源そのものを取り除く」ことを最優先とする考え方であり、日本でもJIS B 9700として採用されています。

安衛法においても、2006年のリスクアセスメント努力義務化、2007年の「機械の包括的な安全基準に関する指針」改正を経て、ISO 12100の考え方が法体系に組み込まれてきました。仕様規定からリスクベースアプローチへの転換は、機械安全の水準を向上させる重要な一歩です。

製造業や食品加工、医療機器製造など、立ち仕事と機械作業が密接に関わる現場では、機械的な危険源への対策だけでなく、人間工学的な危険源(不自然な姿勢、過度な力、長時間の立位作業)も含めた包括的なリスクアセスメントが求められます。機械を安全に設計し、安全に使用する――ISO 12100が示すこの原則は、すべての現場で働く人を守るための基盤です。

参考文献

  1. ISO, “ISO 12100:2010 Safety of machinery — General principles for design — Risk assessment and risk reduction,” 2010. https://www.iso.org/standard/51528.html
  2. 日本産業標準調査会, 「JIS B 9700:2013 機械類の安全性―設計のための一般原則―リスクアセスメント及びリスク低減」, 2013.
  3. 厚生労働省, 「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年改正), 2007. https://www.mhlw.go.jp/
  4. 厚生労働省, 「労働安全衛生法」第28条の2(リスクアセスメントの努力義務), 2006年施行.
  5. 厚生労働省, 「労働安全衛生規則」第24条の13(機械の残留リスク情報の提供), 2012年施行.
  6. 厚生労働省, 「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」, 2023. https://www.mhlw.go.jp/
  7. European Parliament and Council, “Regulation (EU) 2023/1230 on machinery,” Official Journal of the European Union, 2023.
  8. European Parliament and Council, “Directive 2006/42/EC on machinery,” Official Journal of the European Union, 2006.
  9. 中央労働災害防止協会, 「機械安全の推進について」, https://www.jisha.or.jp/
  10. 日本機械工業連合会, 「機械安全に関する取組み」, https://www.jmf.or.jp/

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