【対応はお済みですか?】小売・サービス業の安衛法改正チェックリスト|カスハラ防止とストレスチェック義務化の実務ガイド

2026年に労働安全衛生法が改正――あなたの店舗では、すでに対応の準備を始めていますか? 2025年5月に公布された改正労働安全衛生法と改正労働施策総合推進法により、小売・サービス業の現場に大きな変化が訪れます。カスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置の義務化、ストレスチェックの全事業場への拡大、高年齢労働者の労災防止の努力義務化――これらはすべて、接客の最前線で立ち仕事をする従業員の安全と健康に直結するテーマです。
とりわけ小売・サービス業は、多店舗展開・パート比率の高さ・顧客接点の多さという業界特有の事情から、他業種にはない複合的な対応が求められます。本記事では、小売・サービス業の事業者・店長・安全衛生担当者が押さえるべき改正ポイントと、現場ですぐに使える対応策を整理します。
注: 本記事は2025年9月時点の情報に基づいています。省令・指針等の詳細は今後公布される予定のものを含みます。
この記事でわかること
- 2026年の安衛法改正が小売・サービス業に与える影響の全体像
- カスハラ防止義務化で接客現場に求められる具体的な対応策
- ストレスチェック全事業場義務化におけるパート・アルバイトの対象範囲
- 高年齢従業員の転倒防止など業界特有の安全衛生課題への対処法
- 多店舗展開企業が統一的に対応を進めるためのロードマップ
小売業 安衛法改正 2026|業界への影響を俯瞰する
小売・サービス業が直面する4つの安全衛生課題
小売・サービス業は、他業種と比較して以下の4つの課題が複合的に絡み合う業種です。
- カスタマーハラスメント: UAゼンセンの2024年調査によると、接客業務に従事する組合員の約46%が直近2年間にカスハラ被害を経験しています。暴言、長時間拘束、SNSでの誹謗中傷など、立ち仕事で身体的に疲弊している状態での精神的攻撃は、離職やメンタルヘルス不調に直結します。
- 長時間の立ち仕事: レジ業務、品出し、接客、調理など、小売・サービス業の多くの業務は立位姿勢で行われます。厚生労働省の「業務上疾病発生状況」によると、小売業における腰痛発生件数は製造業に次いで多く、とりわけ50歳以上の女性パート従業員で発生率が高い傾向にあります。
- メンタルヘルス: 顧客対応のストレス、シフト勤務による生活リズムの乱れ、人手不足による業務負荷の増大が重なり、精神障害の労災認定件数は小売・サービス業で増加傾向にあります。
- 転倒災害: 厚生労働省の統計では、小売業の労働災害で最も多い事故類型は「転倒」であり、全体の約30%を占めています。バックヤードの段差、濡れた床面、高所からの商品取り出しなど、店舗特有のリスク要因が存在します。
2026年改正で何が変わるのか
これらの課題に対し、2026年の法改正は以下の3つの柱で小売・サービス業に影響を及ぼします。
| 改正の柱 | 根拠法 | 施行時期 | 小売・サービス業への影響 |
|---|---|---|---|
| カスハラ防止措置の義務化 | 改正労働施策総合推進法 | 2026年10月 | 全事業主が対象。接客頻度の高い業種ほど影響大 |
| ストレスチェック全事業場義務化 | 改正労働安全衛生法 | 公布後3年以内(最長2028年5月) | 50人未満の店舗・事業場も義務対象に |
| 高年齢労働者の労災防止(努力義務) | 改正労働安全衛生法 | 2026年4月 | パート・アルバイトに60歳以上が多い業種で対応急務 |
カスハラ防止義務化|小売・サービス業の接客現場で求められる対応
法改正の概要と接客業への影響
改正労働施策総合推進法により、2026年10月から全事業主にカスハラ防止の雇用管理上の措置が義務づけられます。カスハラは「顧客等からの著しい迷惑行為により労働者の就業環境が害されること」と定義され、事業主には以下の3つの措置が求められます。
- 方針の明確化と周知・啓発: カスハラを許容しない企業方針の策定と従業員への周知
- 相談体制の整備: 相談窓口の設置と適切な対応の確保
- 事後対応: 被害者のケア、事実確認、再発防止措置
小売・サービス業では、レジカウンター、売場、電話対応など顧客接点が多岐にわたるため、対応が画一的になりにくい点が特徴です。店舗ごと、場面ごとに想定されるカスハラの類型を整理し、具体的な対応フローを構築する必要があります。
多店舗展開企業の統一的対応
チェーンストアやフランチャイズなど多店舗展開を行う企業では、以下の点に留意した統一的な体制構築が重要です。
- 本部主導のポリシー策定: 企業全体で統一したカスハラ対応方針を定め、全店舗に展開する。ポリシーには「従業員を守ることを最優先にする」という基本姿勢を明記する
- エスカレーション基準の標準化: 「店長対応」「エリアマネージャー対応」「本部・法務対応」の段階別基準を明文化し、店舗ごとの判断のばらつきを防ぐ
- 相談窓口の一元化: 各店舗に窓口を設けるのは現実的でない場合が多い。本部に一元化した相談窓口(電話・オンラインフォーム)を設置し、匿名での相談も受け付ける体制を構築する
- 研修プログラムの標準化: eラーニングや動画教材を活用し、全店舗の従業員に均質な研修を実施する。特にパート・アルバイトの入れ替わりが激しい現場では、入社時研修への組み込みが効果的
接客現場での実践的な対策
現場レベルでは、以下の対策が有効です。
- 対応マニュアルの整備: 「暴言を受けた場合」「長時間拘束された場合」「土下座を求められた場合」など、具体的なシーン別に対応手順を明示する
- 複数対応の原則: カスハラが疑われる場面では必ず2人以上で対応する。立ち仕事で長時間レジに立つ従業員が1人で対応し続けることは、身体的・精神的に大きな負担となる
- 記録の習慣化: 発生日時・場所・内容・対応を定型フォーマットで記録する。POSシステムのメモ機能や専用アプリを活用する方法もある
- 防犯カメラの活用: 映像記録は事実確認の客観的証拠となるだけでなく、カスハラの抑止効果も期待できる
サービス業のストレスチェック|パート・アルバイトの対象範囲と実施のポイント
全事業場義務化の概要
改正労働安全衛生法により、ストレスチェックの実施義務が50人未満の事業場にも拡大されます。これまでストレスチェックが努力義務にとどまっていた小規模な店舗も、法的な義務として実施する必要が出てきます。
小売・サービス業は、従業員50人未満の事業場(店舗単位)が多い業種です。厚生労働省の調査では、50人未満の事業場におけるストレスチェック実施率はわずか32.3%にとどまっており(厚生労働省, 2024)、多くの店舗で新たな対応が求められることになります。
パート・アルバイト従業員のストレスチェック対象範囲
小売・サービス業で最も関心が高いのが、パート・アルバイト従業員がストレスチェックの対象になるかどうかです。
現行制度では、ストレスチェックの対象となる「常時使用する労働者」は、以下の2つの要件を両方満たす者とされています(厚生労働省, 2015)。
- 期間の定めのない労働契約を締結している者(契約更新により1年以上使用されている、または使用されることが見込まれる者を含む)
- 1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者
したがって、週30時間以上(フルタイムが40時間の場合)勤務し、継続雇用されているパート・アルバイトは対象に含まれます。一方、週数日・短時間のアルバイトは原則として義務の対象外です。ただし、厚生労働省は対象外の労働者に対してもストレスチェックを実施することが望ましいとの見解を示しています。
今後の省令改正で対象範囲が見直される可能性もあるため、最新の動向を注視する必要があります。
多店舗展開企業のストレスチェック実施戦略
50人以上の本部と50人未満の各店舗が混在する多店舗展開企業では、以下の戦略が効果的です。
- 外部委託の一括契約: ストレスチェックの実施を外部のEAP(従業員支援プログラム)事業者に一括委託し、全店舗で統一した質問票・運用フローを適用する
- オンライン実施の活用: Webベースのストレスチェックツールを導入し、シフト勤務の従業員でも都合の良い時間に受検できる環境を整える
- 集団分析の店舗別活用: 50人以上の事業場では集団分析が努力義務とされていますが、50人未満の店舗でも本部単位で集団分析を行うことで、店舗ごとのストレス傾向の比較が可能になる。高ストレス店舗の要因分析と改善に役立てる
- プライバシーの確保: 小規模店舗では「回答内容が店長に知られるのではないか」という懸念が実施率の低下を招く。結果は本人のみに通知される仕組みであることを繰り返し説明し、安心して受検できる環境をつくる
接客業の安全衛生|転倒防止と高齢者対策
高年齢労働者の労災防止が努力義務に
2026年4月施行の改正労働安全衛生法により、60歳以上の労働者に対する安全衛生上の配慮が事業者の努力義務として法的に位置づけられます。
小売・サービス業は、60歳以上のパート・アルバイトが多い業種の代表格です。総務省の「労働力調査」によると、卸売業・小売業における65歳以上の就業者数は約100万人に達しており、今後さらに増加が見込まれています。高齢従業員の安全確保は、業界全体の喫緊の課題です。
店舗における転倒防止の具体策
小売業で最も多い労働災害である転倒を防止するために、以下の対策が有効です。
- 床面管理: バックヤードの水濡れ、油汚れを速やかに清掃する。滑り止めマットの設置や防滑性の高い床材への張り替えを検討する
- 段差の解消: 売場とバックヤードの段差にスロープを設置する。段差のある箇所には視認性の高いマーキングを施す
- 照明の確保: 高齢者は若年者に比べて暗所での視認性が低下する。通路やバックヤードの照度を適切に確保する(JIS Z 9110では通路で100ルクス以上を推奨)
- 適切な作業靴の支給: 滑りにくいソールの作業靴を支給する。厚生労働省のSAFEコンソーシアムでは、転倒防止に効果的な靴の選び方を公表している
- 高所作業の見直し: 棚上段への商品補充時の踏み台使用ルールを定める。高齢従業員には高所作業を避ける配慮も有効
立ち仕事の身体負荷軽減
長時間の立位作業による身体負荷を軽減することは、全年齢の従業員にとって重要ですが、特に高齢従業員には以下の配慮が望まれます。
- 休憩時間の柔軟な確保: レジ業務の交代制を工夫し、連続立位時間を2時間以内にする
- 座れる環境の整備: レジカウンターに高さ調節可能なスツールを設置するなど、座位と立位を切り替えられる環境を用意する
- 疲労軽減マットの導入: レジ前やラインの立ち位置に抗疲労マットを敷設することで、下肢への負担を軽減できる
- 身体を支える補助器具の検討: アシストスーツなどのウェアラブルデバイスや、立ち仕事を支える補助器具の導入も選択肢の一つ。作業内容に合ったツールを選定することが重要
2026年改正対応チェックリスト|小売・サービス業向け
以下のチェックリストを活用して、自社の対応状況を確認してください。
カスハラ防止対応(2026年10月施行)
- [ ] カスハラ対応方針を策定し、社内に周知した
- [ ] 相談窓口を設置し、連絡先を全従業員に伝達した
- [ ] 場面別の対応マニュアルを作成した
- [ ] エスカレーション基準を明文化した
- [ ] 従業員向け研修(eラーニング等)を実施した
- [ ] 被害者のメンタルケア体制を整備した
- [ ] 記録・報告の仕組みを構築した
ストレスチェック対応(公布後3年以内に施行)
- [ ] 自社の事業場ごとの従業員数を把握した
- [ ] パート・アルバイトの対象該当者を確認した
- [ ] 実施体制(外部委託or自社実施)を検討した
- [ ] オンライン実施環境を整備した(または整備計画を策定した)
- [ ] 高ストレス者への面接指導の実施体制を確認した
- [ ] プライバシー保護のルールを策定した
高年齢労働者の労災防止(2026年4月施行)
- [ ] 60歳以上の従業員数と配置状況を把握した
- [ ] 店舗の転倒リスク箇所を点検した
- [ ] 床面・段差・照明の改善計画を策定した
- [ ] 高齢従業員の作業負荷の見直しを行った
- [ ] 健康診断結果を踏まえた就業上の配慮を実施した
まとめ
2026年の安衛法改正は、小売・サービス業にとってカスハラ・メンタルヘルス・身体安全の3領域にわたる包括的な対応を求めるものです。
重要なポイントを改めて整理します。
- カスハラ防止措置は2026年10月から全事業主に義務化される。顧客接点が多い小売・サービス業では、本部主導の統一的な方針策定と現場レベルの対応マニュアル整備を並行して進める必要がある
- ストレスチェックの全事業場義務化により、50人未満の店舗も対象に。パート・アルバイトの対象範囲を正確に把握し、外部委託やオンライン実施で効率的な運用体制を構築することが望ましい
- 高年齢労働者の労災防止は2026年4月から努力義務に。転倒防止を中心とした店舗環境の改善と、立ち仕事の身体負荷軽減策を組み合わせた対応が効果的
いずれの改正も、施行日を待ってから対応を始めるのでは遅いというのが共通する注意点です。特に多店舗展開企業では、方針策定から全店舗への展開までに相応の時間を要します。本記事のチェックリストを活用しながら、今日から計画的に準備を進めていくことをお勧めします。
よくある質問
Q: パート・アルバイトもカスハラ防止措置の対象になりますか?
A: はい、対象になります。改正労働施策総合推進法に基づくカスハラ防止措置は、正社員・パート・アルバイトを問わず、すべての労働者を保護対象としています。雇用形態による区別はありません。したがって、パート・アルバイト従業員に対しても研修を実施し、相談窓口を周知する必要があります。
Q: フランチャイズ店舗のカスハラ対策は、本部とオーナーのどちらが責任を負いますか?
A: 法的には、労働者を直接雇用している事業主が措置義務を負います。フランチャイズの場合、各加盟店のオーナーが事業主となるため、カスハラ防止措置の義務はオーナーが負うことになります。ただし、フランチャイズ本部がブランド保護の観点から統一マニュアルや研修プログラムを提供し、加盟店を支援する体制を構築することが推奨されます。
Q: 週2日勤務のアルバイトもストレスチェックを受けさせる必要がありますか?
A: 現行の基準では、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満のアルバイトは義務の対象外です。ただし、厚生労働省は対象外の労働者にもストレスチェックを実施することが望ましいとしています。今後の省令で対象範囲が変更される可能性もあるため、最新情報の確認をお勧めします。
参考文献
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」, 2025年5月14日公布. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「労働施策総合推進法の一部を改正する法律」, 2025年6月11日公布. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」, 2024. https://www.mhlw.go.jp/
- UAゼンセン, 「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」, 2024. https://uazensen.jp/
- 厚生労働省, 「ストレスチェック制度の施行を踏まえた今後の対応」, 2024. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「ストレスチェック制度導入マニュアル」, 2015. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」, 2020. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「業務上疾病発生状況等調査」, 2024. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, SAFEコンソーシアム, 「転倒予防のための靴の選び方」. https://safe-consortium.mhlw.go.jp/
- 総務省統計局, 「労働力調査(基本集計)」, 2024. https://www.stat.go.jp/

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