【2026年4月1日に労衛法改正】安全衛生教育の種類と体系を解説|5つの教育区分と教育カリキュラム

職場で働くすべての人に関わる「安全衛生教育」。その種類や体系を正確に理解していますか?労働安全衛生法(安衛法)は、事業者に対して段階的な安全衛生教育の実施を義務づけていますが、雇入時教育、特別教育、職長教育など、教育の種類ごとに対象者や内容が異なります。さらに、2026年の安衛法改正により、個人事業者への安全衛生教育義務化や化学物質管理者講習の新設など、教育体系に大きな変化が生じます。
本記事では、安全衛生教育の種類と体系の全体像を整理し、2026年改正がもたらす影響までわかりやすく解説します。
※本記事は2025年10月時点の情報に基づいています。
この記事でわかること
- 安全衛生教育の種類と体系の全体像(5つの教育区分)
- 雇入時教育(安衛法第59条第1項)の義務内容と省略できるケース
- 特別教育の対象となる危険有害業務と実施要件
- 職長教育・能力向上教育の対象者と教育カリキュラム
- 2026年改正で変わる安全衛生教育(個人事業者義務化・化学物質管理者講習・高齢者向け教育)
安全衛生教育の種類と体系|全体像を理解する
安全衛生教育とは
安全衛生教育とは、労働安全衛生法に基づき、労働者が安全かつ健康に業務を行うために事業者が実施する教育のことです。1972年の安衛法制定以来、労働災害の防止に向けた基盤的な仕組みとして位置づけられてきました。
厚生労働省の統計によれば、労働災害の原因の多くは「不安全な行動」に起因しており、適切な安全衛生教育の実施が災害防止の最も効果的な手段の一つとされています。とりわけ、立ち仕事が中心となる製造業・建設業・食品加工業などの現場では、転倒・墜落や機械への巻き込まれ等のリスクが高く、入職時からの体系的な教育が不可欠です。
5つの教育区分
安衛法が定める安全衛生教育は、労働者のキャリアステージや業務内容に応じて5つの区分に体系化されています。
| # | 教育の種類 | 法的根拠 | 対象者 | 実施タイミング |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 雇入時教育 | 安衛法第59条第1項 | すべての新規雇用労働者 | 雇入時 |
| 2 | 作業内容変更時教育 | 安衛法第59条第2項 | 作業内容が変更される労働者 | 作業内容変更時 |
| 3 | 特別教育 | 安衛法第59条第3項 | 危険有害業務に従事する労働者 | 当該業務への従事前 |
| 4 | 職長教育 | 安衛法第60条 | 新たに職長等に就く者 | 職長就任時 |
| 5 | 能力向上教育 | 安衛法第60条の2 | すべての労働者・安全衛生業務従事者 | 随時(概ね5年ごと) |
この5つの教育は、「入職時→業務変更時→危険業務従事時→管理職就任時→継続的なスキルアップ」という労働者のキャリアに沿った段階的な構造となっています。以下、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
雇入時教育(安衛法第59条第1項)
義務の内容と対象者
雇入時教育は、事業者が労働者を雇い入れたときに実施しなければならない安全衛生教育です。正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣労働者など、雇用形態を問わずすべての労働者が対象となります。
安衛則第35条に定められた教育事項は以下の8項目です。
- 機械等、原材料等の危険性・有害性およびこれらの取扱い方法に関すること
- 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること
- 作業手順に関すること
- 作業開始時の点検に関すること
- 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること
- 整理・整頓および清潔の保持に関すること
- 事故時等における応急措置および退避に関すること
- その他当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項
省略できるケースと注意点
安衛則第35条ただし書きにより、事務職など危険有害業務に従事しない労働者については、上記1〜4の事項を省略できるとされています。ただし、5〜8の事項は省略できないため、事務職であっても最低限の安全衛生教育は必要です。
立ち仕事の現場では、この省略規定に安易に頼ることは推奨されません。製造ラインや食品加工の現場では、機械の危険性や作業手順の理解が労働災害の防止に直結するため、8項目すべてについて教育を実施することが望ましいとされています。
作業内容変更時教育(安衛法第59条第2項)
作業内容変更時教育は、労働者の作業内容を変更したときに実施する教育です。教育事項は雇入時教育と同じ8項目ですが、変更後の作業に関連する内容に重点を置いて実施します。
人員配置の見直しや多能工化が進む製造業・物流業の現場では、配置転換や工程変更のたびに教育が必要になる点を見落としがちです。「同じ工場内の異動だから不要」と誤解されるケースもありますが、作業内容が変わる以上、この教育は法的義務として実施しなければなりません。
特別教育(安衛法第59条第3項)
特別教育の対象となる危険有害業務
特別教育は、労働安全衛生規則第36条に列挙された危険または有害な業務に労働者を従事させる場合に、事業者が実施しなければならない教育です。2025年10月時点で、対象業務は約50種類に及びます。
立ち仕事との関連が深い主な対象業務は以下のとおりです。
| 業務分類 | 具体的な業務例 | 関連する立ち仕事の業種 |
|---|---|---|
| 高所作業 | 足場の組立て・解体、フルハーネス型墜落制止用器具を用いた作業 | 建設業、設備工事業 |
| クレーン等の運転 | つり上げ荷重5t未満のクレーン運転、玉掛け補助 | 製造業、物流業 |
| 溶接・溶断 | アーク溶接、ガス溶接の補助 | 製造業、造船業 |
| 電気取扱い | 低圧の充電電路の敷設・修理 | 電気工事業、設備管理業 |
| 粉じん作業 | 研磨、切断等の粉じんを発散する場所での業務 | 製造業、建設業 |
| 有害物質取扱い | 石綿使用建築物の解体、特定化学物質の取扱い | 解体業、化学工業 |
| フォークリフト | 最大荷重1t未満のフォークリフト運転 | 物流業、製造業 |
教育時間と記録の保管
特別教育には、業務ごとに学科教育と実技教育の時間数が定められています。たとえば、フルハーネス型墜落制止用器具を用いた作業の特別教育は学科4.5時間・実技1.5時間(計6時間)です。
事業者は、特別教育の受講者、科目等の記録を3年間保存する義務があります(安衛則第38条)。この記録保管義務を怠った場合、労働基準監督署の臨検で指摘を受ける可能性があります。
職長教育(安衛法第60条)
対象者と教育内容
職長教育は、新たに職長その他の作業中の労働者を直接指導・監督する者に就く場合に実施する教育です。対象業種は、建設業、製造業(一部を除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業と定められています。
教育時間は合計12時間以上で、以下の内容を含みます。
- 作業方法の決定および労働者の配置に関すること(2時間)
- 労働者に対する指導または監督の方法に関すること(2.5時間)
- 危険性・有害性等の調査(リスクアセスメント)に関すること(4時間)
- 異常時等における措置に関すること(1.5時間)
- その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること(2時間)
安全衛生責任者教育との関係
建設業では、職長教育に加えて安全衛生責任者教育(2時間)を合わせた「職長・安全衛生責任者教育」(合計14時間)として実施されることが一般的です。元方事業者の現場で下請事業者の職長が安全衛生責任者を兼ねるケースが多いためです。
能力向上教育(安衛法第60条の2)
能力向上教育は、事業者が労働者に対して安全衛生の水準の向上を図るために実施する教育です。他の4つの教育区分と異なり、実施は努力義務にとどまりますが、厚生労働省は「安全衛生教育推進要綱」(1990年策定、2024年改正)において積極的な実施を推奨しています。
具体的には、以下の対象者ごとにカリキュラムが定められています。
- 安全管理者等の能力向上教育: 概ね5年ごとに実施
- 職長等に対する能力向上教育(再教育): 概ね5年ごとに実施
- 危険有害業務従事者に対する安全衛生教育: 業務の危険度に応じて随時実施
特に、長期間同じ業務に従事する立ち仕事の労働者にとって、マンネリ化した安全意識を刷新する機会として、能力向上教育の重要性は高まっています。
2026年改正で変わる安全衛生教育
2025年5月に公布された労働安全衛生法改正により、安全衛生教育の体系にも重要な変化が生じます。ここでは、教育に直接関わる3つの改正ポイントを解説します。
個人事業者への安全衛生教育義務化(2027年4月施行)
最も大きな変化は、個人事業者(フリーランス・一人親方等)自身に安全衛生教育の受講義務が課されることです。従来、安全衛生教育は「事業者が労働者に実施する」ものでしたが、2027年4月以降は、危険有害業務に従事する個人事業者も、雇用労働者に対する特別教育に相当する教育を自ら受けなければなりません。
改正のポイント: 安衛法の保護対象が「雇用労働者」から「働くすべての人」へ拡大され、安全衛生教育の枠組みにも個人事業者が組み込まれる
加えて、2026年4月施行の改正により、元方事業者には個人事業者に対する安全衛生教育に関する援助(教育機会の提供や情報提供)を行う義務も課されます。建設業や製造業の現場で個人事業者と協働する事業者は、自社の教育体制を見直す必要があるでしょう。
化学物質管理者講習の新設
2024年4月より、リスクアセスメント対象物を製造・取り扱うすべての事業場に化学物質管理者の選任が義務づけられています。2026年改正では、この化学物質管理者に対する講習制度の充実が図られます。
具体的には、化学物質管理者が受講すべき講習の内容が省令で明確化され、特にリスクアセスメントの実施方法やばく露防止措置の選定に関する実践的なカリキュラムが整備される見通しです。塗装、めっき、洗浄等の化学物質を日常的に取り扱う立ち仕事の現場では、化学物質管理者の教育体制整備が急務となります。
高齢者向け安全衛生教育の充実
60歳以上の労働者の労働災害が増加傾向にあることを踏まえ、2026年改正では高年齢労働者への安全衛生教育の充実が盛り込まれています。「エイジフレンドリーガイドライン」(2020年策定)を法的に裏づける形で、加齢に伴う身体機能の変化を踏まえた安全衛生教育の実施が事業者の努力義務として明確化されます。
具体的には、以下のような教育内容の充実が求められます。
- 加齢による身体機能(バランス能力、視力、筋力等)の変化に関する教育
- 転倒・墜落防止のための作業方法の見直しに関する教育
- 基礎疾患を有する高齢労働者への健康管理教育
長時間の立位作業は、高齢労働者にとって下肢の疲労蓄積や転倒リスクの増大につながりやすいことが知られています。こうした知見を安全衛生教育に組み込むことで、高齢労働者が安全に立ち仕事を継続できる環境整備が期待されます。
教育記録の保管義務と実務上の留意点
記録の保管期間と内容
安全衛生教育の実施記録は、法令上の保管義務として以下のように定められています。
- 特別教育の記録: 3年間保存(安衛則第38条)
- 雇入時教育・作業内容変更時教育: 法令上の明文規定はないが、厚生労働省は記録の作成・保管を推奨
- 職長教育の記録: 記録の保管が推奨される(能力向上教育の受講管理にも必要)
実務上のポイント
教育記録には、以下の事項を記載しておくことが推奨されます。
- 受講者の氏名
- 教育の種類・科目
- 実施日時・場所
- 講師の氏名・資格
- 教育時間数(学科・実技の別)
労働基準監督署の臨検においては、安全衛生教育の実施状況が重点的に確認されるケースが少なくありません。特に、労働災害が発生した際には、被災労働者に対する教育記録の有無が事業者の法的責任を左右する重要な証拠となります。記録の電子化やデータベース管理など、確実に保管・検索できる体制を構築しておくことが重要です。
違反した場合のリスク
安全衛生教育の義務に違反した場合、事業者は以下のリスクに直面します。
- 罰則: 雇入時教育・特別教育・職長教育の義務違反には、安衛法第119条に基づき6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性がある
- 行政指導・是正勧告: 労働基準監督署から是正勧告を受け、改善が求められる
- 労災認定への影響: 教育未実施の状態で労働災害が発生した場合、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任が認定されやすくなる
- 企業の社会的信用の低下: 重大な労働災害が公表された場合、取引先や求職者からの信頼を失うリスクがある
まとめ
安全衛生教育は、雇入時教育、作業内容変更時教育、特別教育、職長教育、能力向上教育の5つの区分で体系化されています。それぞれ法的根拠・対象者・実施タイミングが異なるため、自社に必要な教育を正確に把握し、漏れなく実施することが求められます。
2026年改正では、個人事業者への安全衛生教育義務化(2027年4月施行)、化学物質管理者講習の充実、高齢者向け教育の強化など、教育体系に大きな変革がもたらされます。特に、立ち仕事の現場では転倒・墜落や化学物質ばく露のリスクと隣り合わせで業務を行うケースが多く、安全衛生教育の重要性はますます高まっています。
「教育の種類が多くて何から手をつければいいかわからない」という場合は、まず自社の業務内容を洗い出し、特別教育の対象業務に該当するものがないか確認することから始めるとよいでしょう。教育記録の保管体制の整備と合わせて、計画的な安全衛生教育の実施に取り組むことが、労働災害の防止と法令遵守の両立への第一歩です。
よくある質問
Q: パート・アルバイトにも雇入時教育は必要ですか?
A: はい、必要です。安衛法第59条第1項の雇入時教育は、雇用形態を問わずすべての労働者が対象です。パート・アルバイト・契約社員・派遣労働者(派遣元事業者が実施)のいずれであっても、雇い入れた際には教育を実施しなければなりません。
Q: 特別教育は社内で実施できますか?外部機関に委託する必要がありますか?
A: 特別教育は社内で実施することが可能です。ただし、教育内容が安全衛生特別教育規程に定められたカリキュラム(学科・実技の時間数を含む)を満たしている必要があります。自社に適切な講師がいない場合は、登録教習機関や安全衛生団体に委託することが一般的です。
Q: 2027年4月以降、フリーランスに安全衛生教育を受けさせる義務は誰にありますか?
A: 2027年4月施行の改正では、危険有害業務に従事する個人事業者自身に教育を受ける義務が課されます。加えて、元方事業者には個人事業者への教育に関する援助(教育機会の提供等)を行う義務が課されます。費用負担のあり方については、今後の省令等で具体化される見込みです。
参考文献
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法」, e-Gov法令検索, https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057, 閲覧日: 2025年10月4日
- 厚生労働省, 「労働安全衛生規則」, e-Gov法令検索, https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032, 閲覧日: 2025年10月4日
- 厚生労働省, 「安全衛生教育推進要綱」(1990年策定、2024年一部改正), https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法等の一部を改正する法律(令和7年法律第○号)の概要」, 2025年5月
- 厚生労働省, 「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会 報告書」, 2023年
- 厚生労働省, 「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」, 2020年
- 中央労働災害防止協会, 「安全衛生教育の進め方」, https://www.jisha.or.jp/

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