【テレワークと労働安全衛生】最新研究が明らかにした在宅勤務者の健康リスクと対応策

テレワークと労働安全衛生の関係について、あなたはどこまで把握していますか? COVID-19パンデミック以降、在宅勤務は多くの企業で定着しましたが、自宅という「見えない職場」における安全衛生管理は十分に行き届いているとは言えません。不適切な作業環境による腰痛や肩こり、運動不足、社会的孤立など、在宅勤務特有の健康リスクが最新研究で次々と明らかになっています。本記事では、テレワークにおける労働安全衛生の課題とエビデンスを体系的に解説します。
この記事でわかること
- COVID-19以降のテレワーク定着と安全衛生上の新たな課題
- 在宅勤務がもたらす具体的な健康リスクとその科学的エビデンス
- テレワーク時の労働安全衛生法(安衛法)の適用範囲
- 人間工学に基づく在宅ワークステーション整備のポイント
- 2026年安衛法改正がテレワーカーに与える影響
テレワーク定着がもたらした労働安全衛生の課題
パンデミック後のテレワークの現状
総務省の「令和5年通信利用動向調査」(2024)によれば、テレワークを導入している企業の割合は約50%に達し、パンデミック前の約20%から大幅に増加しました。とりわけ情報通信業では約90%の企業がテレワークを実施しており、もはや一時的な緊急対応ではなく、恒常的な働き方として定着しています。
しかし、この急速な移行に対し、労働安全衛生の制度的な対応は追いついていないのが現状です。従来の安衛法は、事業場(オフィスや工場)を前提として設計されており、自宅という私的空間における安全衛生管理には明確な規定が乏しいという問題があります。
見えない職場のリスク
ILO(国際労働機関)とWHO(世界保健機関)の共同報告書(2022)は、テレワークが労働者の健康に与える影響について包括的なレビューを行い、以下の主要なリスクカテゴリーを指摘しています。
- 身体的リスク: 不適切な作業姿勢、作業環境による筋骨格系障害(MSDs)
- 心理社会的リスク: 社会的孤立、ワークライフバランスの崩壊、長時間労働
- 環境的リスク: 照明、温度、騒音などの作業環境の不備
- 組織的リスク: 安全衛生管理の空白、コミュニケーション不足
在宅勤務の健康リスク:最新研究が示すエビデンス
テレワークと腰痛・筋骨格系障害
在宅勤務者の健康リスクとして最も多く報告されているのが、腰痛をはじめとする筋骨格系障害です。
Gerding ら(2021)の体系的レビューでは、パンデミック中にテレワークへ移行した労働者の約40〜65%が新たな筋骨格系の痛みを経験したと報告されています。その主な原因として、以下が挙げられています。
- 不適切な椅子や机の使用: ダイニングチェアやソファでの長時間作業
- 外付けモニターの不在: ノートパソコンの画面を見続けることによる頸部の前傾姿勢
- 休憩の不足: 通勤や会議室への移動がなくなることで、座りっぱなしの時間が増加
Yoshimotoら(2022)による日本の労働者を対象とした調査では、テレワーク開始後に腰痛を訴える割合が約1.5倍に増加したことが報告されています。特に、専用の作業スペースを持たない労働者でリスクが高い傾向が見られました。
運動不足と身体活動量の低下
テレワークの普及に伴い、通勤による身体活動が失われたことの影響も研究で明らかになっています。
Barone Gibbs ら(2021)の研究では、フルタイムテレワーカーは出社者と比較して、1日の歩数が平均約2,000歩少ないことが報告されました。日本のNTTデータ経営研究所(2023)の調査でも、テレワーク中心の働き方をしている人の約60%が「運動不足を感じている」と回答しています。
身体活動量の低下は、以下の健康リスクにつながります。
- 心血管疾患リスクの増加: 座位時間の延長による代謝機能の低下
- 体重増加: エネルギー消費量の減少と間食の増加
- 筋力低下: 特に下肢の筋力が減少し、将来的な転倒リスクに影響
心理社会的リスク:孤立と長時間労働
在宅勤務者のメンタルヘルスに関する研究も蓄積されています。
Moretti ら(2023)のメタ分析では、テレワーカーは対面勤務者と比較して社会的孤立感が有意に高く、それが抑うつ症状やバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスク要因となっていることが示されました。
また、テレワークでは勤務時間と私生活の境界が曖昧になりやすいことも重要な問題です。Eurofound(欧州生活労働条件改善財団)の調査(2022)によると、テレワーカーの約30%が「勤務時間外にも仕事のメールや連絡に対応している」と回答し、実質的な労働時間が延長される傾向が確認されています。
日本においても、連合(日本労働組合総連合会)の調査(2023)では、テレワーク実施者の約25%が「長時間労働になりがち」と回答しており、見えない残業が健康リスクとして懸念されています。
ストレスチェックとテレワーク
2015年に義務化されたストレスチェック制度は、従来は事業場で実施することが前提でした。テレワーク環境下では、以下のような新たな課題が生じています。
- 高ストレス者の把握の遅れ: 対面でのコミュニケーションが減少し、管理者が部下の変化に気づきにくい
- 面接指導の実施方法: オンラインでの医師面接の有効性と限界
- 集団分析の困難さ: 職場環境のストレス要因が「自宅の環境」に置き換わることで、組織的な改善策が立てにくい
厚生労働省(2024)は「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」において、テレワーク実施者にもストレスチェックを確実に実施し、オンラインでの面接指導も活用することを推奨しています。
テレワーク時の安衛法の適用範囲
現行法の位置づけ
労働安全衛生法は、テレワーク中の労働者にも適用されます。事業者には、在宅勤務者に対しても安全配慮義務があり、労働者の健康障害を防止するための措置を講じる必要があります。
ただし、自宅は事業者の管理権限が直接及ばない私的空間であるため、事業場と同レベルの安全衛生管理を実施することには実務上の限界があります。厚生労働省のガイドラインでは、事業者がテレワーク実施者に対して以下を行うことを求めています。
- 作業環境に関するチェックリストの提供と自己点検の促進
- VDT作業(情報機器作業)のガイドラインの周知
- 健康診断の確実な実施
- 安全衛生教育の実施(オンラインを含む)
2026年安衛法改正のテレワーカーへの影響
2026年に施行される安衛法改正は、テレワーク実施者にもいくつかの重要な影響を及ぼすと考えられます。
ストレスチェックの対象拡大は、特に注目すべき改正点です。従来は常時50人以上の事業場に義務づけられていたストレスチェックが、全事業場に義務化されます。これにより、中小企業でテレワークを実施している労働者も、ストレスチェックの対象として確実にカバーされることになります。
また、自律的な化学物質管理の強化は、一見テレワークとは無関係に思えますが、テレワーク中の労働者が自宅で化学物質を取り扱う業務(例:在宅での軽作業、試験・検査業務等)を行う場合には、適切な安全データシート(SDS)の提供や保護具の支給が求められる点に留意が必要です。
さらに、フリーランスとして在宅で働く個人事業主に対しても、2026年改正で発注者の安全配慮義務が拡大される見込みであり、テレワーク型の業務委託における安全衛生確保が新たな焦点となっています。
人間工学的な在宅ワークステーションの整備
エビデンスに基づく推奨事項
在宅勤務の健康リスクを軽減するためには、人間工学に基づいた作業環境の整備が不可欠です。Robertson ら(2022)のレビューでは、在宅ワークステーションの人間工学的改善によって、筋骨格系の不快感が約30%減少したことが報告されています。
以下に、主要な推奨事項を整理します。
デスクと椅子
- 作業面の高さは、肘を90度に曲げた状態で前腕が水平になる高さ
- 椅子は高さ調整可能で、腰部をサポートするランバーサポート付きのものが望ましい
- 足が床につかない場合はフットレストを使用する
ディスプレイ
- 画面の上端が目の高さ、または少し下になる位置に設置
- 画面までの距離は約50〜70cm
- ノートパソコンを使用する場合は、外付けキーボード・マウスと組み合わせる
照明と環境
- 画面へのグレア(映り込み)を防ぐ位置に配置
- 室温は17〜28℃を目安に管理
- 適切な換気を確保する
作業習慣
- 30分〜1時間ごとに短い休憩を取り、ストレッチや歩行を行う
- 座位と立位を交互に行う(可能であればスタンディングデスクの導入)
- 水分を十分に摂取する
事業者の支援策
企業がテレワーカーの作業環境整備を支援する方法として、以下の取り組みが効果的です。
- 備品・設備の貸与や購入補助: モニター、椅子、デスクの提供
- オンライン人間工学チェック: IT管理者や産業保健スタッフによるリモートでの環境評価
- セルフチェックリストの提供: 定期的な作業環境の自己点検を促す仕組み
研究の限界と今後の展望
テレワークの健康影響に関する研究は、COVID-19パンデミック以降に急速に蓄積されてきましたが、いくつかの限界があります。多くの研究が横断的調査に基づいており、テレワークと健康リスクの因果関係を厳密に立証した縦断的研究はまだ限定的です。また、テレワークの形態(完全在宅、ハイブリッド、サテライトオフィス等)による健康影響の違いについても、さらなる研究が必要です。
今後は、テレワーク環境における人間工学的介入の長期的な効果を評価するランダム化比較試験(RCT)や、AI・IoTを活用した在宅作業環境のリアルタイムモニタリングに関する研究の進展が期待されます。
まとめ
テレワークの定着に伴い、在宅勤務者の労働安全衛生管理は企業にとって避けて通れない課題となっています。腰痛などの筋骨格系障害、運動不足、社会的孤立、長時間労働など、在宅勤務特有の健康リスクが多くの研究で報告されています。2026年の安衛法改正はストレスチェックの全事業場義務化などを通じてテレワーカーの安全衛生確保を後押しする一方、事業者には人間工学に基づいた在宅作業環境の整備支援が一層求められます。エビデンスに基づく適切な対策を講じることで、テレワークのメリットを活かしながら、労働者の健康を守ることが可能です。
参考文献
- 総務省, 「令和5年通信利用動向調査」, 2024. https://www.soumu.go.jp/
- ILO & WHO, “Healthy and Safe Telework: Technical Brief,” 2022. https://www.who.int/publications/i/item/9789240040977
- Gerding, T. et al., “An Assessment of Ergonomic Issues in the Home Offices of University Employees Sent Home Due to the COVID-19 Pandemic,” Work, 68(4), 981-992, 2021. https://doi.org/10.3233/WOR-205294
- Yoshimoto, T. et al., “Telework and Low Back Pain Among Japanese Workers During COVID-19 Pandemic,” Journal of Occupational Health, 64(1), e12335, 2022. https://doi.org/10.1002/1348-9585.12335
- Barone Gibbs, B. et al., “COVID-19 Related Sedentary Behavior Changes and Recovery,” JAMA Network Open, 4(7), e2117008, 2021. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.17008
- NTTデータ経営研究所, 「テレワークに関する実態調査」, 2023. https://www.nttdata-strategy.com/
- Moretti, A. et al., “Telework and Mental Health During COVID-19: A Systematic Review and Meta-Analysis,” International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(6), 4875, 2023. https://doi.org/10.3390/ijerph20064875
- Eurofound, “Telework and ICT-Based Mobile Work: Flexible Working in the Digital Age,” 2022. https://www.eurofound.europa.eu/
- 連合(日本労働組合総連合会), 「テレワークに関する調査」, 2023. https://www.jtuc-rengo.or.jp/
- 厚生労働省, 「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」, 2024. https://www.mhlw.go.jp/
- Robertson, M.M. et al., “Office Ergonomics Training and a Sit-Stand Workstation: Effects on Musculoskeletal and Visual Symptoms and Performance of Office Workers,” Applied Ergonomics, 99, 103618, 2022. https://doi.org/10.1016/j.apergo.2021.103618

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