【2025年4月施行】東京都カスタマーハラスメント防止条例から具体的な企業の取組みまで|カスハラ対策の先進事例

カスハラ(カスタマーハラスメント)への条例制定や企業の対策が、いま急速に進んでいます。2025年4月に施行された東京都カスタマーハラスメント防止条例を皮切りに、全国の自治体や企業が本格的な取組みを開始しました。立ち仕事の多い小売・飲食・医療・介護の現場では、顧客や利用者からの理不尽な言動が深刻な問題となっており、働く人の心身を守るための仕組みづくりが急務です。本記事では、カスハラに関する条例の動向と企業の先進事例を幅広く紹介します。
この記事でわかること
- 東京都カスタマーハラスメント防止条例(2025年4月施行)の概要と意義
- 北海道・三重県など地方自治体のカスハラ対策の動き
- JR東日本・NTT・全日空など大手企業の具体的な取組み事例
- AI・テクノロジーを活用した最新のカスハラ対策
- 2026年10月の全国義務化に向けた今後の展望
カスハラ条例の先駆け──東京都カスタマーハラスメント防止条例の概要
条例制定の背景
カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)とは、顧客や取引先からの著しい迷惑行為を指します。暴言・威嚇・長時間の拘束・土下座の強要・SNSでの誹謗中傷など、その形態は多岐にわたります。
厚生労働省が2023年に公表した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にカスハラを経験した労働者の割合は10.8%に上り、パワーハラスメント(19.3%)に次ぐ深刻さとなっています。特に、対面での接客が多い小売業・飲食サービス業・医療福祉の現場では被害が顕著です。
こうした状況を受け、東京都は全国に先駆けて「東京都カスタマーハラスメント防止条例」を制定し、2025年4月1日に施行しました。
条例の主なポイント
東京都カスタマーハラスメント防止条例の特徴は、以下の通りです。
- カスハラの定義を明確化: 顧客等からの著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものと定義
- 「何人も」カスハラを行ってはならない: 事業者だけでなく、顧客側の責務も明記した点が画期的
- 罰則規定はなし: あくまで理念条例として、社会全体の意識醸成を目指す
- 事業者の責務: 従業員をカスハラから守るための体制整備を努力義務として規定
- 相談体制の整備: 東京都として相談窓口を設置し、被害者を支援
罰則がない「理念条例」であることに対して実効性を疑問視する声もありますが、東京都は「まず社会全体でカスハラは許されないという共通認識を形成することが重要」との立場を示しています(東京都産業労働局, 2025)。
広がる地方自治体の取組み
東京都の条例制定を契機に、全国の地方自治体でもカスハラ対策の動きが加速しています。
北海道の取組み
北海道は2025年3月に「北海道カスタマーハラスメント防止条例」を可決・成立させ、同年4月に施行しました。東京都と同じく罰則のない理念条例ですが、道民・事業者・顧客それぞれの責務を明確にし、観光業が盛んな北海道ならではの外国人観光客によるハラスメントにも言及している点が特徴です。
三重県の取組み
三重県は2025年4月に「三重県カスタマーハラスメントの防止に関する条例」を施行しました。三重県の条例は、全国で初めて「カスハラを受けた従業員が事業者に申し出る権利」を明文化した点が注目されています。従業員が声を上げやすい環境づくりを制度面から後押しする先進的な試みです。
その他の自治体の動向
2025年末時点で、愛知県・大阪府・福岡県などの大都市圏を含む20以上の自治体がカスハラ防止に関する条例の制定または検討を進めています。各自治体の条例はそれぞれ地域の産業特性を踏まえた独自の規定を設けており、地域に根差したカスハラ対策が広がりつつあります。
企業の先進的なカスハラ対策事例
条例による後押しもあり、民間企業においてもカスハラ対策に本格的に取り組む動きが広がっています。ここでは代表的な事例を紹介します。
JR東日本──カスハラに対する毅然とした方針
JR東日本は2024年4月に「JR東日本グループカスタマーハラスメントに対する方針」を公表し、カスハラに該当する行為があった場合はサービスの提供を中止することを明言しました。駅員や乗務員への暴力・暴言が深刻化していたことを受けた対応で、具体的なカスハラ行為の例示と対応フローを社内に整備しています。
この方針発表は鉄道業界全体に波及し、JR各社や大手私鉄も同様の方針を相次いで策定しました。
NTTグループ──グループ横断のカスハラ対策
NTTグループは2024年5月にグループ共通の「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定しました。通信業界では、サービス障害時のコールセンターへの過剰なクレームや、工事担当者への現場での威嚇行為が問題となっていました。NTTグループの方針の特徴は以下の通りです。
- 録音・記録の活用: 通話録音や対応記録を証拠として保全する体制の整備
- 組織的対応の徹底: 個人で対応を抱え込まず、上席者やチームで対応する仕組み
- 従業員のメンタルヘルスケア: カスハラ被害を受けた従業員への心理的支援の充実
全日空(ANA)──航空業界のカスハラ対策
全日空は2024年6月に「ANAグループ カスタマーハラスメントに対する方針」を公表しました。航空業界では、フライトの遅延・欠航時に地上職員やキャビンアテンダントが激しいクレームにさらされるケースが多く、安全運航に支障をきたすレベルのカスハラが問題となっていました。
ANAの方針では、カスハラ行為が継続する場合は搭乗をお断りする可能性があることを明記し、「安全はすべてに優先する」という原則のもとで従業員を守る姿勢を明確にしています。
その他の業界の動向
小売業界では、イオンやセブン&アイ・ホールディングスなどの大手が従業員向けの対応マニュアルを整備し、店頭での掲示物による抑止策を導入しています。飲食業界でもすかいらーくグループやロイヤルホールディングスが同様の方針を策定するなど、立ち仕事の現場で働く人を守る取組みが業界を問わず広がっています。
業界団体の調査と提言
UAゼンセンの取組み
流通・サービス業の労働組合であるUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)は、カスハラ問題に早くから取り組んできた団体です。同団体が2024年に実施した「カスタマーハラスメント実態調査」では、回答者の46.8%が直近2年間にカスハラ被害を経験したと回答しました。
UAゼンセンは調査結果をもとに、以下の提言を行っています。
- カスハラ行為を明確に禁止する法律の制定
- 悪質なカスハラに対する刑事罰の適用強化
- 企業による従業員保護措置の義務化
- カスハラ被害者への労災認定基準の整備
これらの提言は、2026年の法改正議論に大きな影響を与えています。
ポスター・掲示物による抑止効果
UAゼンセンや厚生労働省が推奨している取組みの一つが、店頭や受付へのカスハラ防止ポスターの掲示です。「カスタマーハラスメントは許しません」「従業員への暴言・威嚇はおやめください」といったメッセージを目に見える場所に掲示することで、一定の抑止効果があることが複数の事業者から報告されています。
厚生労働省は2024年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を改訂し、掲示物のテンプレートを公開しました。立ち仕事の現場で顧客と直接対面する機会が多い職種では、こうした「見える化」の取組みが特に効果的だと考えられています。
海外の先進事例──韓国の感情労働者保護法
カスハラ対策で先行する海外の事例として、韓国の産業安全保健法改正(通称:感情労働者保護法)が注目されます。韓国では2018年に同法が施行され、顧客応対業務を行う労働者(感情労働者)を暴言・暴力から保護することが事業者の義務として法定されました。
具体的には、以下の措置が事業者に求められています。
- 顧客からの暴言等を禁止する内容の告知(音声案内・掲示物等)
- 被害を受けた労働者の業務転換や休息の付与
- 被害労働者への治療・カウンセリングの提供
施行から数年が経過した韓国では、法律の存在自体が社会的な抑止力として機能しているとの評価がある一方、実際の運用面では「企業の対応に温度差がある」「被害申告の手続きが煩雑」などの課題も指摘されています(Korea Occupational Safety and Health Agency, 2024)。日本の法制度設計においても、韓国の経験から学べる点は多いでしょう。
AI・テクノロジーを活用した最新のカスハラ対策
近年では、テクノロジーを活用したカスハラ対策も登場しています。
音声認識・感情分析AI
コールセンター業界を中心に、AIによる通話のリアルタイム感情分析を導入する企業が増えています。顧客の声のトーンや語彙から怒りの度合いをAIが判定し、一定の閾値を超えた場合に自動的にスーパーバイザーに通知する仕組みです。NTTコミュニケーションズやソフトバンクなどが実証実験を進めており、オペレーターの精神的負担を軽減する効果が報告されています。
AIによる応対支援
カスハラが発生した際に、AIがリアルタイムで対応話法を提案するシステムも開発されています。過去の対応事例をAIが学習し、「この場合はこう応対すると効果的です」といったアドバイスを画面上に表示することで、経験の浅い従業員でも適切な対応がとりやすくなります。
録画・録音による証拠保全
店舗やカウンターに防犯カメラの映像と音声を連動して記録するシステムを導入する企業も増えています。カスハラ行為の客観的な証拠を確保することで、悪質なケースにおける法的対応を可能にするとともに、「記録されている」という認識自体が抑止力として機能します。
2026年10月の全国義務化に向けた展望
法改正の方向性
厚生労働省は2025年3月に「労働施策総合推進法」の改正案を取りまとめ、カスハラ対策を企業の義務とする方針を示しました。2026年10月の施行を目指して国会審議が進められています。
改正案の主なポイントは以下の通りです。
- 事業者によるカスハラ防止措置の義務化(相談窓口の設置、対応方針の策定・周知等)
- カスハラの定義の法的明確化
- 行政による指導・助言・勧告の権限の新設
立ち仕事の現場に求められる準備
全国義務化に向けて、立ち仕事の現場を抱える企業では以下の準備が推奨されています。
- カスハラ対応方針の策定・公表: 自社の方針を明文化し、従業員と顧客の双方に周知する
- 相談窓口の整備: 被害を受けた従業員が安心して相談できる体制をつくる
- 対応マニュアルの作成: カスハラ発生時の具体的な対応手順を定める
- 従業員への研修: カスハラの定義や対応方法について定期的に教育する
- 記録・報告の仕組み: カスハラ事案を記録・分析し、再発防止に活かす
特に、小売・飲食・医療・介護など長時間の立ち仕事と顧客対応が重なる業種では、身体的な疲労に精神的なストレスが加わることで、従業員の健康被害がより深刻化しやすいと指摘されています。カスハラ対策は、立ち仕事の現場における労働環境改善の重要な柱の一つといえるでしょう。
まとめ
カスハラ対策は、2025年の東京都条例施行をきっかけに、地方自治体・企業・業界団体が一体となって急速に進展しています。ここまでの動きを整理すると、以下のポイントが浮かび上がります。
- 東京都条例が全国的な流れをつくった: 罰則はないものの、カスハラを社会問題として可視化し、対策の機運を高めた
- 企業の対応が「受け身」から「積極的防御」へ変化: JR東日本やANAのように、サービス提供の中止も含めた毅然とした姿勢を示す企業が増加
- テクノロジーの活用が進む: AI感情分析や録音・録画システムなど、テクノロジーによる対策が現実的な選択肢に
- 2026年10月の全国義務化が迫る: すべての企業が法的な対応を求められる時代がすぐそこに
立ち仕事の現場で日々顧客と向き合う人々を守るために、制度・企業方針・テクノロジーの三つの柱でカスハラ対策を進めていくことが重要です。2026年の法改正を待つのではなく、今から準備を始めることが、従業員の安全と健康を守り、結果として顧客サービスの質を高めることにもつながるのではないでしょうか。
参考文献
- 東京都産業労働局, 「東京都カスタマーハラスメント防止条例の概要」, 2025年. https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/harassment/customerharassment/
- 厚生労働省, 「職場のハラスメントに関する実態調査」, 2023年. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html
- 厚生労働省, 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」改訂版, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
- UAゼンセン, 「カスタマーハラスメント実態調査」, 2024年. https://uazensen.jp/
- JR東日本, 「JR東日本グループカスタマーハラスメントに対する方針」, 2024年4月. https://www.jreast.co.jp/
- NTTグループ, 「カスタマーハラスメントに対する方針」, 2024年5月. https://group.ntt/jp/
- 全日空, 「ANAグループ カスタマーハラスメントに対する方針」, 2024年6月. https://www.ana.co.jp/
- Korea Occupational Safety and Health Agency, “Emotional Labor Worker Protection Guidelines”, 2024. https://www.kosha.or.kr/
- 厚生労働省, 「労働施策総合推進法改正案の概要」, 2025年3月. https://www.mhlw.go.jp/

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