【労働安全衛生が知っておきたい】工場作業員の身体的疲労の実態とリスク

【労働安全衛生が知っておきたい】工場作業員の身体的疲労の実態とリスク - 立ち仕事のミカタ

はじめに

工場における立ち作業や単純反復作業は、身体への継続的な負荷を伴うため、作業者の身体的疲労を引き起こす大きな要因とされています。特に長時間にわたる立位姿勢や繰り返し動作は、腰部や下肢への負担を蓄積させ、健康障害や生産性の低下、安全性のリスクにもつながりかねません。本記事では、最新の研究結果に基づき、工場作業員の身体的疲労のメカニズムと有効な対策について、科学的根拠を交えながら詳しく解説します。

目次

疲労の発生メカニズム

下肢・腰部への負荷

長時間の立位姿勢が作業者の身体に与える影響については、多くの研究が行われています。たとえば、Garciaら(2012)は、製造業に従事する20名の作業者を対象に、5時間以上の立ち作業後に表面筋電図(sEMG)を用いて脚部の筋疲労を評価しました。その結果、腓腹筋および前脛骨筋における筋電図信号の平均周波数が顕著に低下し、疲労が進行していることが示されました。

同時に、作業者にはBorgスケール(6〜20の数値で疲労感を表す主観的評価尺度)を用いて疲労の程度を自己評価してもらい、その結果とsEMGの変化を比較したところ、相関係数はr=0.552(p<0.05)という有意な関係が認められました。これは、作業者が「足がだるい」「腰が重い」と感じる主観的な疲労が、筋肉の生理的な変化としっかりリンクしていることを意味しています。

この結果は、作業者の自己申告を基にした疲労評価の有効性を裏付けると同時に、日常的に感じる「ちょっとした疲れ」こそが、深刻な身体的負担の兆候である可能性を示唆しています。

単純反復作業による急性筋疲労

一方、作業の内容によっては短時間でも疲労が急速に蓄積されるケースもあります。たとえば、東北大学大学院工学研究科による実験では、30〜45分間にわたって腕を上下させる反復作業を行わせた後、sEMGによって肩部と前腕部の筋活動量を計測したところ、筋活動のRMS値が平均20%以上上昇することが報告されました(Yoshitake et al., 2005)。

加えて、作業者にVAS(Visual Analogue Scale)を用いた主観的疲労スコアを記録させたところ、作業前と比べて平均2.1ポイントの上昇が確認されました。これは、腕や肩を使う反復作業によって筋肉の緊張が高まり、短時間でも急速に疲労感が増すことを示しています。

このように、特に上肢の作業は筋肉の回復が遅れやすく、継続的な作業では血流不足や代謝産物の蓄積による筋疲労が進行しやすいため、姿勢の切り替えや小休止の導入が重要とされています。

疲労が引き起こすリスクと影響

作業ミス・事故の増加

疲労が作業精度に与える影響についても、具体的な数値をもとにした研究が存在します。たとえば、日本の自動車部品メーカーで実施された調査(労働科学研究所 2015)では、過去3か月間に作業ミスを経験した従業員のうち、68%が「前日に強い疲労を感じていた」と回答しました。

さらに、ミスの発生率を疲労状態と通常状態で比較したところ、疲労を感じていた作業者は通常時の1.5倍の頻度でミスをしていたことが明らかになりました。この数字は、10人のうち通常なら1人がミスする場面で、疲労状態では1.5人がミスをするという実質的なリスク上昇を意味しています。ミスや事故が製品の品質や安全に直結する製造現場では、非常に重要な指標です。

関節・筋肉の慢性的負担

慢性的な身体負担については、日本産業衛生学会の報告(2018年)で、全国の立ち仕事従事者2,000名を対象に実施された調査が参考になります。この調査によると、立ち仕事を日常的に行っている作業者のうち52.3%が「慢性的な腰痛を抱えている」と回答し、特に40代以降ではその割合が60%を超えることが示されています。

さらに、膝や足首などの関節痛を抱えている作業者も**全体の約43%**にのぼっており、立ち仕事による身体的負荷が広範囲にわたっていることが明らかです。こうした慢性的な疲労は、作業効率の低下や離職率の上昇にもつながるため、企業としても早急な対策が求められます。

疲労評価の信頼性とその活用

表面筋電図(sEMG)の信頼性

sEMGは、筋疲労の客観的評価において最も広く使用されている手法のひとつです。たとえば、Moritani & deVries(1979)による基礎研究では、筋活動の持続によってsEMG信号の平均周波数(MNF)が低下し、筋力低下と相関していることが示されました。

このような変化は筋疲労の生理学的指標として信頼されており、近年ではウェアラブル機器と組み合わせて、リアルタイムで現場の疲労状態をモニタリングする実証も行われています。

主観的評価スケールの意義

一方、主観的疲労評価も非常に有効です。日本労働者健康福祉機構では、BorgスケールやVASに基づく簡易チェックシートを活用して、作業者の「だるさ」や「重さ」といった感覚を見える化する取り組みを行っています。

これにより、体調の変化や個人差にも柔軟に対応できる疲労管理が可能となり、現場での対話や改善行動の促進に繋がっています。

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