中小企業ほど腰痛リスクが高い?事業場規模と腰痛の関係を労働者健康安全機構が発表

中小企業ほど腰痛リスクが高い?事業場規模と腰痛の関係を労働者健康安全機構が発表 - 立ち仕事のミカタ
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職場規模が腰痛リスクに与える影響とは?

腰痛は、さまざまな業種・業態で共通して見られる労働災害のひとつですが、その発生リスクは「どんな職種か」だけでなく、「どんな職場環境か」にも大きく左右されます。特に注目すべきなのが、事業場の規模です。

独立行政法人労働者健康安全機構が発表した「平成30年及び令和元年労働者死傷病報告における業務上腰痛の発生状況に関する報告書」によれば、労働者数10〜49人の中小規模事業場での腰痛発生件数が最も多く、全体の**35.9%**を占めていました。これは他の規模の事業場と比較しても突出した数値です。

本記事では、事業場の規模と業務上腰痛の関連性に着目し、なぜ小規模事業場で腰痛が多発するのか、その背景と改善のための方向性を探ります。


小規模事業場で腰痛が多い理由とは?

労働者数が10〜49人の事業場は、産業全体の中でも特に多く存在するカテゴリーであり、地域密着型の介護施設や中小の製造業、飲食・サービス業などが該当します。

報告書のデータでは、この規模の事業場で3,666件の腰痛が発生しており、次点の100〜299人規模(2,222件)を大きく上回っています。

事業場規模別の業務上腰痛件数 出典:平成 30 年及び令和元年労働者死傷病報告における業務上腰痛の発生状況に関する報告書
事業場規模別の業務上腰痛件数
出典:平成 30 年及び令和元年労働者死傷病報告における業務上腰痛の発生状況に関する報告書
業種ごとの事業場規模別の業務上腰痛件数 出典:平成 30 年及び令和元年労働者死傷病報告における業務上腰痛の発生状況に関する報告書
業種ごとの事業場規模別の業務上腰痛件数
出典:平成 30 年及び令和元年労働者死傷病報告における業務上腰痛の発生状況に関する報告書

背景にある主な要因:

  • 衛生管理体制の未整備:労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に産業医や衛生管理者の選任が義務付けられていますが、それ未満の事業場には義務がありません。そのため、健康管理やリスクアセスメントが十分に行われていないケースが多いと考えられます。
  • 多能工的業務による負担集中:少人数の職場では、ひとりの作業者が複数の業務を担当することが一般的であり、その分だけ身体的負担も偏りやすくなります。
  • 設備・機材の整備不十分:大企業に比べ、補助器具や作業補助機材の導入が遅れがちであり、腰部への負担が直接かかる場面が多い傾向にあります。
  • 教育・訓練機会の不足:腰痛予防のための姿勢指導や荷物の持ち上げ方に関する教育が体系的に行われていない職場が多く、自己流で作業することによるリスクが高まります。

保健衛生業における典型例:介護現場の課題

小規模事業場に該当する分野で特に顕著なのが、**保健衛生業(特に社会福祉施設)です。報告書によると、社会福祉施設では腰痛発生件数の42.0%**が10〜49人規模の事業場で報告されています。

社会福祉施設における事業場規模別腰痛件数 出典:平成 30 年及び令和元年労働者死傷病報告における業務上腰痛の発生状況に関する報告書
社会福祉施設における事業場規模別腰痛件数
出典:平成 30 年及び令和元年労働者死傷病報告における業務上腰痛の発生状況に関する報告書

これは、

  • 利用者の身体介助など重労働が日常的に求められる
  • ケアワーカー1人あたりの業務負荷が高い
  • 物理的な腰痛対策機器(リフトや補助器具)の導入が進んでいない などの複合的な要因によるものと考えられます。

対策の方向性:小規模だからこそできる工夫とは?

1. 作業手順の見直しと可視化

腰痛の原因となる動作や姿勢を洗い出し、それを軽減できるように作業手順を改善します。その際、改善点をチェックリスト化し、現場に掲示することで、日々の業務の中で自然にリスク低減行動が定着していきます。簡単なチェックシートを紙1枚で貼るだけでも、作業者の意識が変わります。

2. 簡易な補助器具の段階的導入

予算の制約がある小規模事業場では、まずは安価で効果の高い補助具から導入するのが現実的です。たとえば、

  • 腰部サポートベルト
  • 持ち上げ補助具(スライディングボードや小型リフト)
  • 荷物の滑りを良くするマット類 などの小型機器は数千円〜数万円の範囲で購入可能であり、投資対効果が高いとされています。

3. 短時間でできるストレッチ習慣の定着

「時間がない」を理由にストレッチを省略しがちですが、1日1回の朝礼時や休憩時に2分程度のストレッチを実施するだけでも、腰痛発生リスクを大幅に軽減できます。小規模な職場であれば全員で実施するハードルが低く、職場の一体感づくりにもつながります。

4. 外部専門家の支援活用

産業医の選任義務がなくても、地域の産業保健センターや労働基準監督署、商工会議所などから無料または低コストで支援を受けられる制度があります。たとえば、労働災害予防のための簡易なリスク評価や職場巡視、腰痛予防講習の講師派遣などを依頼できます。

5. 作業環境の簡易改善

  • 作業台の高さを調整できるようにする
  • 長時間立ちっぱなしにならないよう、適宜座れるスペースを設ける
  • 重い物の保管場所を腰の高さに設定する(床や高所を避ける) など、ちょっとした環境整備でも腰部負担を大幅に減らすことができます。

6. 従業員参加型の改善活動

現場で実際に作業している従業員自身が「腰に負担がかかる瞬間」を最もよく理解しています。定期的なミーティングやアンケートを通じて、現場の声を集め、対策に反映させることで、職場全体の意識が高まり、改善が継続しやすくなります。


小さな職場の“大きな課題”に取り組む意義

腰痛対策は、大企業だけのものではありません。むしろ現場に近い中小規模事業場こそ、日々の実務の中で具体的かつ持続可能な取り組みを重ねることで、従業員の健康と安全を守ることができます。

労働環境の整備は、

  • 離職率の低下
  • 医療費や労災リスクの削減
  • モチベーションと生産性の向上 といった、企業全体の健全な成長にもつながります。

腰痛を「現場の声」として捉え、組織的な改善につなげていくことが、これからの持続可能な働き方の鍵となるのです。

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立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

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立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

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実証実験において、スタビハーフによる体重分散効果が示されました。

立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

スネ部のロールクッションが体重の一部を優しく支えることで、足裏の荷重が軽減していることがデータから示されました。

スタビハーフの負荷軽減効果検証実験の様子。立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

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