製造業の現場から始める健康経営:「健康経営優良法人2025」認定法人が決定

導入:健康経営の常識が変わる時代に
近年、「健康経営」という言葉が注目を集めています。経済産業省が提唱し、健康経営優良法人の認定制度が広がる中で、多くの企業が従業員の健康管理を経営課題として捉え始めました。
しかし、その施策の多くはホワイトカラー、つまりオフィスワーカーを中心に展開されているのが実情です。たとえば、リモートワークに対応したストレッチ動画の配信、メンタルヘルスケアの相談窓口設置、禁煙支援プログラムの実施など、いずれもオフィス環境に適したものばかりです。
一方で、製造業や建設業などに従事するブルーカラーの従業員、すなわち現場作業者に対する健康経営のアプローチはまだまだ不十分です。実は最も身体を酷使している彼らにこそ、真の意味での健康経営が求められているのです。
本記事では、健康経営の基本から現場作業者に求められる健康施策、さらにその必要性を裏付ける調査データや実践的な対策まで、詳しく解説します。
健康経営とは?──定義と広がる重要性
「健康経営」とは、従業員の健康を企業の経営課題と捉え、戦略的に健康づくりに取り組む経営スタイルのことです。これは経済産業省が中心となって推進しており、健康診断の受診率、生活習慣病の予防、メンタルヘルス対策、禁煙サポートなどを企業評価の対象としています。
健康経営のメリットは次の通りです:
- 生産性の向上:健康状態が良好な従業員はミスが少なく、集中力も高い
- 離職率の低下:健康への配慮は職場満足度に直結し、人材定着につながる
- 企業イメージの向上:健康経営優良法人として認定されることで採用活動にも有利
- 医療費・労災コストの削減:慢性疾患や労働災害の減少に寄与
実際、健康経営の推進に関する制度としては、2016年度に創設された「健康経営優良法人認定制度」があり、経済産業省と日本健康会議が連携して運用しています。この制度では、大規模法人部門と中小規模法人部門に分けて、戦略的に健康経営を実践している企業を毎年認定しており、上位企業には「ホワイト500」「ブライト500」「ネクストブライト1000」といった称号が付与されます。
また、健康経営の取り組み状況をスコア化した「健康経営度調査」も実施されており、企業の取り組みレベルが“偏差値”として可視化されています。このスコアは他社との比較やベンチマークとしても活用されており、自社の改善点を見つける指標にもなります。
2025年3月時点では、「健康経営優良法人2025」として、大規模法人で約3,400法人(うちホワイト500:上位500社)、中小規模法人で約19,796法人が認定されました。
このような取り組みは、単に認定を受けることが目的ではなく、従業員一人ひとりの健康を守ることが企業全体の持続性と生産性向上につながるという考え方に基づいています。特に、ブルーカラー職場への展開は今後の健康経営の成熟度を測る上でも重要なカギとなるでしょう。
なぜブルーカラーの現場に健康経営が必要なのか?
現場で働くブルーカラー労働者は、以下のような過酷な条件下で日々働いています:
- 長時間の立ち仕事
- 重量物の運搬
- 高温・低温・騒音といった物理的ストレス
- 不規則なシフトや夜勤による生活リズムの乱れ
にもかかわらず、彼らは「健康経営の主役」にはなっていません。実際、多くの企業で健康経営施策がオフィス職に偏っており、現場作業員の疲労や疾患、離職は“個人の問題”として片付けられてしまう傾向があります。
これは大きな経営リスクです。なぜなら、現場作業員が抜けた穴はそう簡単に埋まらないからです。技能・経験が蓄積される現場では、健康を維持し、長く働いてもらうことこそが最も効率的な「人材戦略」になります。
データが示す現場作業者の健康リスク
以下のデータは、現場労働者における健康課題の深刻さを裏付けています。
腰痛有病率(厚生労働省調査)
- 保健衛生業:約56%
- 製造業:約45%
- 運輸交通業:約41%
- 一般事務職:約30%以下
現場作業者は、オフィス職と比べて1.5倍以上の腰痛リスクを抱えていることになります。
健康診断の結果異常率(業種別)
- 高血圧(収縮期140以上):約38%
- 脂質異常:約32%
- 肥満(BMI25以上):約36%
生活習慣病リスクが高く、かつ再検査の受診率は約45%に留まっているという課題も存在します。
離職理由の上位に「身体的負担」
- 体力的に厳しい:29%
- 腰痛やひざ痛などの身体的疾患:22%
体の不調を理由に職場を離れるケースが後を絶たないのです。
現場でよくある健康課題とその原因
1. 長時間の立位作業
長時間立ち続けることによる足腰の疲労、血流低下、むくみ、腰痛の発生は、製造業や物流現場では特に深刻な問題です。床材が硬く、靴のクッション性が不十分な場合、衝撃が直接足裏や膝、腰に伝わり、慢性的な痛みへとつながります。また、同じ姿勢を続けることで下肢静脈瘤のリスクも高まります。
さらに、立位作業中は筋肉が緊張し続けているため、体温調節機能が低下し、夏場には熱中症のリスクが上昇します。冬場には血行不良による冷え性や筋肉のこわばりも起きやすく、結果としてパフォーマンスや安全性の低下につながるのです。
2. 単調な作業の繰り返し
単調な反復作業は、身体の一部に過度な負担をかける原因となります。たとえば、同じ部品を1日数百個組み立てる、パレットを一方向にだけ積むといった作業では、特定の筋肉や関節が酷使されます。
このような作業は、腱鞘炎やばね指、肩関節周囲炎(五十肩)などを引き起こすリスクがあり、初期の違和感を放置すると、重度の炎症や長期離脱に至る可能性もあります。また、単調な動作は精神的な倦怠感や集中力の低下も招き、結果的にヒューマンエラーや作業ミスの増加につながります。
作業工程の見直しやジョブローテーション、左右交互で作業できる設計などが、こうしたリスクを分散する有効な対策です。
3. 温度・湿度・騒音などの環境ストレス
現場には、快適とは程遠い過酷な環境条件が存在します。夏場の高温下では熱中症のリスクが高まり、湿度が高い環境では皮膚疾患やカビの発生も問題となります。一方、冬場には冷えによる筋肉のこわばりや血行障害が発生しやすく、これが転倒事故の引き金になることもあります。
また、騒音が常時発生している環境では、聴力低下や慢性的なストレス障害、疲労感の蓄積といった健康被害も見過ごせません。さらに、照明不足や過剰な照度は、目の疲れや頭痛を誘発し、集中力や注意力の低下を引き起こします。
これらの環境ストレスは、身体だけでなく心理的な不快感や不安感にもつながり、職場の離職要因の一つともなっています。
4. 生活リズムの乱れ
交代勤務や夜勤制度を取り入れている現場では、睡眠の質が悪化し、自律神経の乱れや慢性的な疲労感が蓄積しやすくなります。睡眠時間が短かったり、生活のリズムが毎週変化するような勤務体制では、体内時計が狂い、免疫力の低下や生活習慣病の発症リスクが高まります。
また、夜勤明けの過食やアルコール摂取、日中の光を浴びない生活習慣は、うつ症状や集中力低下、メンタルヘルスの悪化につながるケースもあります。特に若手や中高年層では、身体的な順応力に差が出やすく、不調を抱えながら働く“隠れ健康リスク者”が増加傾向にあります。
定期的な生活リズムの可視化や、勤務シフトの工夫、仮眠スペースの設置、深夜勤務者への食事指導などが、生活リズム改善の一助となります。
現場に効く健康経営の具体策5選
① 疲労軽減のための補助ツール導入
背景: 長時間の立ち作業や中腰姿勢が日常化している現場では、足腰への負担が蓄積し、腰痛や膝痛、足底筋膜炎などを引き起こすリスクがあります。
具体策:
- 着座補助具(アシストスツールなど)の活用
- 足元への抗疲労マットや衝撃吸収フロアの敷設
- 作業靴の見直し(クッション性・通気性のあるもの)
導入のポイント:
現場の声を拾い、日常の動線や姿勢にマッチしたツールを選ぶことが重要です。従業員の体格や作業内容に応じたカスタマイズも効果的です。
② 動作の分散・ローテーション
背景: 同じ作業を長時間続けることによる筋骨格系障害(MSD)は、現場作業者の代表的な不調要因です。
具体策:
- 同一動作の連続時間を制限し、定期的に別工程へ移動
- 作業内容の左右交互化(利き手の偏りを減らす)
- ジョブローテーション制度を整備し、習熟度と体の負担をバランスさせる
導入のポイント:
「多能工化」との相乗効果を狙い、教育訓練と並行して進めることで、効率性と健康配慮を両立できます。
③ インターバル休憩の制度化
背景: 忙しい現場では休憩の優先順位が低くなりがちですが、疲労の蓄積はミスや事故の大きな原因となります。
具体策:
- 2時間に1回、5〜10分の“マイクロ休憩”を義務化
- ストレッチや軽運動を組み込んだ「リフレッシュ休憩」の導入
- 休憩の“見える化”(タイマー設置やシフト表に明記)
導入のポイント:
作業効率を落とさない設計がカギ。全員同時でなく、持ち回り式や交代制にすることで無理なく定着します。
④ 体調チェックツールの活用
背景: 作業者本人も気づきにくい“隠れ疲労”や“初期の体調不良”を早期に把握することで、重症化・事故を未然に防げます。
具体策:
- ウェアラブル機器で心拍数・体温・疲労度をモニタリング
- 朝礼前にタブレットや紙で体調チェックシートを記入
- 異常値があった際の即時対応マニュアルを用意
導入のポイント:
「監視」ではなく「自己管理支援」として導入することで、抵抗感なく継続的に運用できます。
⑤ 健康教育・ストレッチタイムの導入
背景: 現場では健康教育の機会が少なく、自分の身体に関心を持てていない人が多いのが現状です。
具体策:
- 作業前後に5分程度のラジオ体操やストレッチを導入
- 保健師や外部講師による健康ワークショップ(月1回など)
- 社内報や掲示物での健康情報の発信
導入のポイント:
形式だけの体操ではなく、“なぜ必要か”を伝え、現場リーダーが模範となって実施することで浸透します。
健康経営×現場改善がもたらす3つの効果
1. 離職率の低下と人材定着
背景:
現場では腰痛や膝痛、慢性疲労など、身体的な負担を理由とした退職が後を絶ちません。加えて、若手社員の早期離職やミドル・シニア層の就労継続困難といった課題も存在します。
効果の詳細:
健康経営によって作業負荷を軽減し、体調不良を未然に防ぐことで「この職場で長く働ける」という安心感が生まれます。これは特に中小企業や地域密着型の工場・物流センターなどにおいて、経験値の高い人材の定着に直結します。
波及効果:
- 新人教育コストの削減
- 採用広告・紹介料などの間接費削減
- 経験値の蓄積による作業効率の向上
- 「従業員を大事にする会社」という社内外への好印象
2. 生産性・品質の向上
背景:
疲労や体調不良は判断力や集中力の低下につながり、ヒューマンエラーの増加や不良品率の上昇を招きます。現場では、ちょっとした「うっかり」が重大事故につながるリスクを常に抱えています。
効果の詳細:
健康状態が良好な従業員は、体のキレが良く動作もスムーズで、注意力や判断力も高く維持できます。定期的なストレッチや休憩導入、体調モニタリングなどを組み合わせた健康経営の取り組みによって、作業の「質」が安定します。
波及効果:
- 不良率の低減 → 品質トラブルの減少
- 作業スピードの最適化 → 稼働率向上
- 現場の改善提案やカイゼン活動の活性化
- 安全衛生委員会などの機能強化とPDCAの定着
3. 安全衛生の強化と企業評価の向上
背景:
労働災害や職場事故の発生は、従業員の健康だけでなく企業ブランドにも直接的な悪影響を及ぼします。特に製造業や建設業では、外部からの安全評価や取引先のコンプライアンス要求が年々厳しくなっています。
効果の詳細:
健康経営と職場の安全対策をセットで進めることで、作業者の体調変化にいち早く気づく仕組みが整い、事故の芽を早期に摘むことができます。また、ヒヤリ・ハット報告や体調不良申告の制度化により、現場の“声が届く”風土が育ちます。
波及効果:
- 労災件数の減少 → 労災保険料率の抑制
- 健康経営優良法人の認定取得 → 採用力・信用力の向上
- SDGs・ESG対応の一環として、サステナブル経営の実践へ
- ステークホルダー(顧客・投資家・取引先)への安心材料に
結論:現場から始める本当の健康経営
健康経営は「ホワイトカラー向け施策」にとどまるものではありません。真の健康経営とは、すべての従業員──特に最前線で働く現場作業者の健康を守ることです。
彼らの健康を支えることは、企業の持続可能性を高め、生産性を向上させ、離職を防ぎ、社会的信頼を獲得する最短の道です。
まずは現場の声を聞き、現場に合った施策から一歩踏み出すこと。それが“健康経営の本質”を実現する第一歩となるでしょう。
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