【2026年4月からストレスチェック義務化へ】厚生労働省が提唱する「ラインケア」とは?|管理職が知るべきメンタルヘルス対策の基本

「ラインケア」という言葉をご存知ですか? ラインケアとは、管理監督者が部下のメンタルヘルスに配慮し、職場環境の改善や相談対応を行う取り組みのことです。製造業の工場ラインや医療・介護の現場など、立ち仕事が中心の職場では、身体的な疲労に加えて精神的なストレスも蓄積しやすい環境にあります。
厚生労働省が示す「4つのケア」の中でも、管理職が日常的に実践できるラインケアは、職場のメンタルヘルス対策の要として位置づけられています。しかし、「具体的に何をすればいいのかわからない」「管理職としてどこまで踏み込んでよいのか判断できない」という声も少なくありません。
本記事では、ラインケアの定義から具体的な実践方法、管理職自身のメンタルヘルスまで、現場で役立つ知識を体系的に解説します。
この記事でわかること
- ラインケアの定義と、厚生労働省が示す「4つのケア」における位置づけ
- ラインケアで管理監督者が行うべき具体的な方法
- 部下の変化に気づくためのポイントと声かけの仕方
- ストレスチェック結果を活用したラインケアの進め方
- 管理職自身のメンタルヘルスを守る重要性
ラインケアとは|定義と「4つのケア」での位置づけ
ラインケアとは、管理監督者(上司)が部下の心の健康に配慮し、職場環境の把握と改善、部下からの相談対応などを行うメンタルヘルスケアのことです。
この概念は、厚生労働省が2006年に策定し、2015年に改正した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)で明確に定められています(厚生労働省, 2015)。「ライン」とは、組織における指揮命令系統(ラインマネジメント)を意味し、日常的に部下と接する管理監督者だからこそ果たせる役割として重視されています。
厚生労働省が示す「4つのケア」
メンタルヘルス指針では、職場のメンタルヘルス対策を効果的に推進するために、以下の4つのケアを継続的かつ計画的に実施することが求められています。
- セルフケア(労働者自身): 労働者が自らのストレスに気づき、対処するための知識や方法を身につけること
- ラインケア(管理監督者): 管理監督者が職場環境の改善や部下の相談対応を行うこと
- 事業場内産業保健スタッフ等によるケア: 産業医や衛生管理者、保健師などの専門スタッフがセルフケアとラインケアを支援すること
- 事業場外資源によるケア: 外部の専門機関(EAP、医療機関、地域の相談窓口等)を活用すること
この4つのケアは独立して機能するものではなく、相互に連携してこそ効果を発揮します。中でもラインケアは、日常的に部下と接する管理監督者が担い手となるため、メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応において最も重要な役割を果たすと考えられています。
厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」(2023年)によると、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合は63.8%に達していますが、その取り組み内容として「管理監督者への教育研修・情報提供」を実施している事業所は39.4%にとどまっています。ラインケアの重要性は認識されつつも、実践のための教育が十分に行き届いているとはいえない状況です。
ラインケアの具体的な方法
ラインケアにおいて管理監督者に求められる役割は、大きく4つに分けられます。
部下の変化への「気づき」
ラインケアの出発点は、部下のいつもと違う様子に気づくことです。以下のような変化が見られた場合、何らかのストレスや心身の不調を抱えている可能性があります。
- 勤怠の変化: 遅刻・早退・欠勤の増加、休みがちになる
- 業務パフォーマンスの変化: ミスの増加、作業スピードの低下、判断力の低下
- 行動面の変化: 表情が暗い、口数が減る、身だしなみの乱れ、チームとの関わりが減る
- 身体面の変化: 疲労感が目立つ、体調不良の訴えが増える
特に立ち仕事の現場では、身体的な疲労が精神的な不調に直結しやすいことが知られています。「最近、体がつらそうだな」という気づきが、メンタルヘルスの問題を早期に発見するきっかけになることも少なくありません。
大切なのは、日頃から部下の「通常の状態」を把握しておくことです。普段の様子を知っているからこそ、変化に気づくことができます。
声かけと傾聴
部下の変化に気づいたら、次に重要なのが声かけです。ただし、いきなり「メンタル面は大丈夫?」と聞くのではなく、以下のようなアプローチが推奨されています。
- 日常的な声かけから始める: 「最近、調子はどう?」「何か困っていることはない?」
- 具体的な事実に基づいて話しかける: 「最近少し疲れているように見えるけど、体調は大丈夫?」
- 話を聞く姿勢を大切にする(傾聴): 相手の話を否定せず、まずは受け止める
- プライバシーに配慮する: 他の人に聞こえない場所で話す
傾聴のポイントは、アドバイスや解決策をすぐに提示しないことです。管理職はつい「こうすればいい」と言いたくなりますが、まずは部下の気持ちを受け止めることが信頼関係の構築につながります。独立行政法人労働者健康安全機構が公開する「職場における心の健康づくり」(2022年)でも、傾聴の重要性が繰り返し強調されています。
職場環境の把握と改善
ラインケアの重要な柱のひとつが、職場環境の改善です。個人のストレスへの対処だけでなく、ストレスの原因そのものを減らすことが根本的な対策となります。
管理監督者が把握すべき職場環境の要素には、以下のようなものがあります。
- 物理的環境: 温度・湿度・照明・騒音・作業姿勢(立ち仕事の場合、長時間の立位による身体負荷も含む)
- 業務量と質: 過重労働、作業の単調さ、裁量度の低さ
- 人間関係: ハラスメント、孤立、コミュニケーション不足
- 労働時間: 長時間労働、不規則なシフト、休憩の取りにくさ
職場環境の改善にあたっては、後述するストレスチェックの集団分析結果を活用することが効果的です。
相談窓口への橋渡し
管理監督者には、部下の不調に気づいた場合に、適切な専門家や相談窓口につなぐ役割が求められます。すべてを自分一人で解決しようとする必要はありません。
橋渡し先としては、以下のような資源があります。
- 産業医・保健師: 事業場内の産業保健スタッフ
- 社内相談窓口: 人事部門やメンタルヘルス担当部署
- EAP(従業員支援プログラム): 外部の専門カウンセリング機関
- 公的相談窓口: こころの耳(厚生労働省)、地域の精神保健福祉センター
橋渡しの際は、「相談することは弱さではない」というメッセージを伝え、安心して利用できる雰囲気づくりを心がけることが大切です。
ストレスチェック結果を活用したラインケア
2015年に義務化されたストレスチェック制度は、ラインケアを効果的に進めるための重要なツールでもあります。
集団分析の活用
ストレスチェックの結果は、個人結果と集団分析結果の2種類に分かれます。個人結果は本人にのみ通知され、管理監督者が直接閲覧することはできません。一方、集団分析結果は、部署や職場単位でストレスの傾向を把握するために活用できます。
集団分析では、以下のような情報が得られます。
- 部署ごとのストレス要因の傾向(仕事の量的負荷、質的負荷、対人関係等)
- 高ストレス者の割合の部署間比較
- 仕事のコントロール度や上司・同僚からのサポートの状況
管理監督者は、自部署の集団分析結果を確認し、どのようなストレス要因が高いのかを把握した上で、具体的な職場環境改善に取り組むことが求められます。これがデータに基づいたラインケアの実践です。
個人結果の取り扱いに関する注意
ストレスチェックの個人結果は、本人の同意なく事業者に提供してはならないことが法律で定められています(労働安全衛生法第66条の10第2項)。管理監督者が部下に対して「ストレスチェックの結果を見せなさい」と求めることは、制度の趣旨に反するだけでなく、部下との信頼関係を損なう行為です。
ラインケアにおいて重要なのは、個人の検査結果ではなく、日常の観察と対話を通じた気づきであることを忘れてはなりません。
現場管理者がラインケアを実践するコツ
工場長やラインリーダー、店長、チーフなど、現場で直接メンバーを指揮する管理者にとって、ラインケアをどのように日常業務に組み込むかは重要な課題です。
「ながら」コミュニケーションを活かす
立ち仕事の現場では、わざわざ面談の時間を設けなくても、作業の合間や休憩時間に自然な声かけをすることでラインケアを実践できます。「体、大丈夫?」「今日は暑いから水分とってね」といった何気ない声かけの積み重ねが、部下が相談しやすい雰囲気をつくります。
5分間ミーティングの習慣化
毎日の始業時や終業時に5分程度の短いミーティングを設けることで、メンバーの体調や業務上の困りごとを定期的に把握できます。形式ばらず、「今日の調子はどうですか」「困っていることはありませんか」と確認するだけでも効果があります。
休憩の取り方を見直す
立ち仕事の現場では、休憩を適切に取れているかどうかがメンタルヘルスにも大きく影響します。「忙しいから休憩を削る」という風潮がある職場では、管理者自らが率先して休憩を取る姿を見せることが重要です。
管理職自身のメンタルヘルスも重要
ラインケアを語る上で見落とされがちなのが、管理監督者自身のメンタルヘルスです。
管理職は、部下のケアに加えて、上層部からのプレッシャー、目標達成の責任、人員管理など、多くのストレス要因を抱えています。厚生労働省の「労働安全衛生調査」(2023年)でも、管理的職業従事者のストレスの高さが指摘されています。
管理職が心身の不調を抱えたままでは、部下への適切なラインケアを行うことは困難です。以下の点を意識することが大切です。
- 自分自身のストレスサインに気づく: セルフケアの実践は管理職にこそ必要
- 一人で抱え込まない: 同僚の管理職や上司、産業医に相談する
- 完璧を目指さない: すべての部下の問題を解決する必要はなく、橋渡し役に徹することも立派なラインケア
ラインケア研修の重要性と実施のポイント
ラインケアを組織全体で機能させるためには、管理監督者への研修・教育が欠かせません。
研修で扱うべき内容
効果的なラインケア研修には、以下のようなテーマが含まれます。
- メンタルヘルスの基礎知識(ストレスのメカニズム、主な精神疾患の概要)
- 部下の変化への気づき方と声かけのロールプレイ
- 傾聴スキルの実践トレーニング
- ストレスチェック集団分析結果の読み方と活用法
- 社内外の相談窓口・支援制度の紹介
- ハラスメント防止との関連
研修の実施方法
厚生労働省は、メンタルヘルス研修を年1回以上実施することを推奨しています。実施方法としては、以下のようなバリエーションがあります。
- 集合研修: 産業医や外部講師による対面での講義・グループワーク
- eラーニング: 時間や場所を問わず受講できるオンライン教材
- ケーススタディ: 実際の事例(匿名化したもの)を用いたディスカッション
特に現場の管理者にとっては、座学だけでなく、実際の場面を想定したロールプレイやケーススタディが実践力の向上に効果的です。
関連する用語・概念
- セルフケア: 労働者自身が自らのストレスに気づき、対処する取り組み。ラインケアと車の両輪として位置づけられる
- EAP(従業員支援プログラム): 従業員のメンタルヘルスや生活上の問題について、外部の専門機関が支援するプログラム。事業場外資源によるケアの代表例
- ストレスチェック制度: 労働安全衛生法に基づき、労働者のストレスの程度を把握するために実施される検査制度。ラインケアの実践にも活用される
- プレゼンティーイズム(presenteeism): 出勤しているが心身の不調により生産性が低下している状態。ラインケアによる早期対応で防止が期待される
まとめ
ラインケアとは、管理監督者が部下のメンタルヘルスに配慮し、職場環境の改善や相談対応を行う取り組みです。厚生労働省の「4つのケア」の中核として、日常的に部下と接する管理職だからこそ果たせる重要な役割を担っています。
具体的には、部下の変化への気づき、声かけと傾聴、職場環境の把握と改善、相談窓口への橋渡しの4つが主な実践方法です。ストレスチェックの集団分析結果を活用することで、データに基づいた効果的なラインケアを進めることもできます。
立ち仕事の現場では、身体的な疲労と精神的なストレスが相互に影響し合うことが少なくありません。現場の管理者が日常のコミュニケーションの中でラインケアを実践することは、働く人の心身の健康を守り、職場全体の生産性を維持するうえで欠かせない取り組みといえるでしょう。
よくある質問
Q: ラインケアは法律で義務づけられていますか?
A: ラインケアそのものを直接義務づける法律はありませんが、労働安全衛生法第69条では事業者に「労働者の心の健康の保持増進のための措置」を講じる努力義務が定められています。また、厚生労働省の「メンタルヘルス指針」では、ラインケアを含む4つのケアの実施が強く推奨されています。安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点からも、管理監督者によるラインケアは事実上欠かせない取り組みといえます。
Q: ラインケアとセルフケアの違いは何ですか?
A: セルフケアは労働者自身が自らのストレスに気づき、対処する取り組みです。一方、ラインケアは管理監督者が部下のメンタルヘルスに配慮して行う取り組みです。両者は独立したものではなく、管理監督者がセルフケアの重要性を部下に伝え、セルフケアを促進することもラインケアの一環とされています。
Q: 部下にメンタルヘルスの不調が疑われるとき、管理職はどこまで踏み込むべきですか?
A: 管理監督者の役割は、診断や治療ではなく、気づきと橋渡しです。部下の変化に気づいたら声をかけ、話を聴き、必要に応じて産業医やEAP、社内の相談窓口につなぐことが求められます。無理に原因を探ったり、プライベートに深く踏み込んだりすることは避け、「あなたのことを心配している」というメッセージを伝えることが大切です。
参考文献
- 厚生労働省, 「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(改正 平成27年11月30日), https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K151130K0020.pdf
- 厚生労働省, 「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」, 2024年, https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r05-46-50b.html
- 独立行政法人労働者健康安全機構, 「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」, 2022年, https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/johoteikyo/tabid/1251/Default.aspx
- 厚生労働省, 「ストレスチェック制度導入マニュアル」, 2015年, https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
- 厚生労働省, 「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」, https://kokoro.mhlw.go.jp/ , 閲覧日: 2025年8月

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