【2026年4月1日労衛法改正】製造業の構内請負・業務委託と安衛法改正|変更点と実務ステップを整理して解説

製造業の構内請負や業務委託で、安衛法改正がどのような影響を及ぼすかご存知ですか?同じ工場内で元方事業者、下請企業、個人事業者が混在して作業する製造現場では、安全衛生管理の責任の所在が曖昧になりがちです。2026年4月施行の改正労働安全衛生法により、個人事業者も元方事業者の安全衛生措置の対象に含まれることになりました。
この変化は、製造業の現場管理に大きなインパクトをもたらします。「うちは請負契約だから関係ない」「業務委託先の安全管理は相手の責任」と考えていた事業者にとって、今回の改正は従来の認識を見直す転機となるでしょう。
本記事では、製造業の安全衛生担当者や現場管理者の方に向けて、構内請負・業務委託の実態と法改正への実務的な対応を解説します。
注: 本記事は2025年8月時点の情報に基づいています。省令・告示等の詳細は今後公布される予定のものを含みます。
この記事でわかること
- 製造業における構内請負・業務委託の実態と安全衛生管理上の課題
- 2026年4月施行の安衛法改正で個人事業者の保護がどう変わるか
- 混在作業場所の安全管理体制に求められる見直しポイント
- 偽装請負のリスクと法的な留意事項
- 現場で今から進められる実務的な対応ステップ
製造業の構内請負・業務委託の現状と安全衛生課題
構内請負・業務委託とは何か
製造業における構内請負とは、発注元企業の工場敷地内で、請負企業が自社の労働者を使って業務を遂行する形態を指します。組立、検査、梱包、設備保全など、製造工程の一部を請負企業に委託するケースは多くの工場で見られます。
一方、業務委託は、企業同士の契約関係に基づいて特定の業務を外部に委ねる広い概念です。近年では、設備点検やメンテナンス、品質管理の一部を個人事業者に業務委託するケースも増えています。
厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(告示第37号)では、請負と派遣の区別を明確にしていますが、実態として指揮命令系統が曖昧なまま運用されている現場も少なくありません。
混在作業場所の安全衛生リスク
同一の工場内で複数の事業者が作業する「混在作業場所」には、以下のような安全衛生上の課題があります。
- 安全ルールの不統一: 事業者ごとにルールが異なり、作業者間で認識のズレが生じる
- 危険情報の共有不足: 設備の不具合情報や化学物質の危険性が、請負企業や個人事業者に伝わらない
- 保護具の不統一: 元方事業者の従業員には支給されるが、請負作業者には行き届かない
- 緊急時対応の連携不備: 災害発生時の連絡体制や避難経路の周知に漏れがある
- 安全教育の格差: 元方事業者の従業員は教育を受けるが、構内で作業する請負事業者や個人事業者は対象外になりやすい
中央労働災害防止協会(中災防)の調査によると、製造業における労働災害の一定割合が、元方事業者と請負事業者の間の安全衛生管理の連携不足に起因していると指摘されています。特に「はさまれ・巻き込まれ」「墜落・転落」「転倒」など、混在作業場所で起こりやすい災害類型が多いことが特徴です。
立ち仕事の多い製造現場と人間工学的配慮
製造業の現場は、ラインでの組立作業や検査、溶接、機械操作など、長時間の立ち仕事が常態化している職場の代表格です。元方事業者の従業員であれば、疲労軽減マットの導入や作業台の高さ調整といった人間工学的配慮が行われることがありますが、構内請負の作業者や個人事業者がそうした措置から漏れてしまうケースが見受けられます。
立ち仕事による筋骨格系障害(MSDs: Musculoskeletal Disorders)は、雇用形態にかかわらず同じ作業を行えば同じリスクを負います。人間工学的な作業環境の改善は、構内で働くすべての人を対象にすべきというのが、今回の法改正の根底にある考え方でもあります。
2026年安衛法改正の要点:個人事業者保護の拡大
改正の概要と製造業への影響
2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法では、個人事業者等への安全衛生対策の拡大が大きな柱のひとつとなっています。
従来の安衛法では、保護対象は原則として「事業者に雇用される労働者」に限定されていました。しかし改正法により、2026年4月1日から、元方事業者の安全衛生措置義務の対象に個人事業者も含まれることになります。
製造業で想定される具体的な影響は以下のとおりです。
| 改正前の実務 | 改正後に求められる対応 |
|---|---|
| 個人事業者は安衛法の保護対象外として扱っていた | 個人事業者も元方事業者の措置義務の対象に |
| 構内で作業する個人事業者への安全教育は任意 | 安全衛生に関する情報提供・教育の実施が求められる |
| 保護具の支給は雇用労働者のみ | 個人事業者も含めた保護具支給・使用ルールの整備が必要に |
| 危険箇所の周知は自社従業員が中心 | 個人事業者への危険情報の周知が明確に義務づけ |
| KY(危険予知)活動への参加は任意 | 混在作業に関わるすべての作業者の参加が推奨される |
元方事業者に求められる具体的措置
改正安衛法のもとで、製造業の元方事業者には以下のような措置が求められます。
1. 安全衛生に関する情報提供
工場内で使用する設備、化学物質、作業環境に関するリスク情報を、個人事業者にも確実に伝えることが必要です。MSDS(安全データシート)の共有、設備の操作手順書の提供などが含まれます。
2. 危険箇所への立入制限・周知
高温環境、高所、有害物質の取扱区域など、危険箇所への立入制限を個人事業者にも徹底する必要があります。
3. 安全衛生教育・KY活動への参加促進
朝礼でのKY活動(危険予知活動)やツールボックスミーティング(TBM)への参加について、個人事業者にも門戸を開き、情報共有の場を設けることが重要です。
4. 保護具の使用に関するルール整備
元方事業者が定める保護具の着用ルール(安全靴、保護メガネ、耳栓等)について、個人事業者にも同等の基準を適用し、必要に応じて保護具を貸与・支給する体制を整えます。
統括安全衛生責任者の選任要件との関連
現行の安衛法第15条では、建設業と造船業については、一定規模以上の混在作業場所で統括安全衛生責任者の選任が義務づけられています。しかし、一般的な製造業はこの選任義務の対象外です。
今回の改正では、製造業の統括安全衛生責任者の選任義務そのものは新設されていません。ただし、元方事業者の措置義務の対象が個人事業者に拡大されたことで、混在作業場所における安全衛生管理体制の実質的な強化が求められることになります。
製造業の現場では、統括安全衛生責任者の選任義務がなくとも、安全衛生協議会の設置や連絡調整のための責任者の選任を自主的に行うことが望ましいと考えられています。厚生労働省も「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」(2006年)において、この点を推奨しています。
偽装請負との関係と法的リスク
偽装請負とは
製造業の構内請負においては、偽装請負の問題が常にリスクとして存在します。偽装請負とは、形式上は請負契約でありながら、実態として発注元企業が請負作業者に直接的な指揮命令を行っている状態を指します。
厚生労働省の告示第37号(「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」)では、以下の要件をすべて満たさなければ適正な請負とは認められないとしています。
- 請負企業が自らの労働者に対する指揮命令権を有していること
- 請負企業が業務の処理について事業主としての責任を負っていること
- 自己の機械・設備を使用するか、専門的な技術・経験を有して業務を処理すること
安衛法改正と偽装請負リスクの関係
今回の安衛法改正によって、元方事業者が個人事業者に対しても安全衛生措置を講じることが求められるようになります。ここで注意すべきは、安全管理の名目で個人事業者への指揮命令が過度になると、偽装請負と判断されるリスクがある点です。
具体的には、以下のような行為は、請負の適正性を損なう可能性があります。
- 個人事業者の作業手順を細かく指示する(安全指示を超えた業務指示)
- 個人事業者の作業時間や休憩時間を直接管理する
- 個人事業者を自社の指揮系統に組み込む
安全衛生措置の実施と、請負契約の独立性を両立させるためには、契約書に安全衛生上の協力事項を明記し、指揮命令ではなく情報提供・協力要請という形をとることが重要です。労働局や弁護士への事前相談も有効な手段です。
実務的な対応ステップ
ステップ1:現状把握と契約書の確認
まずは、自社の工場内で作業している構内請負企業や個人事業者の実態を把握しましょう。
- 構内で作業する請負企業・個人事業者の一覧作成
- 各事業者の契約形態(請負・業務委託・派遣)の再確認
- 契約書における安全衛生条項の有無と内容の確認
- 実態として指揮命令が行われていないかの偽装請負チェック
ステップ2:安全衛生管理体制の見直し
改正法の施行に向けて、以下の体制整備を進めます。
- 安全衛生協議会への請負企業・個人事業者の参加体制の整備
- 作業手順書・安全ルールの共有方法の確立(紙面配布、掲示、デジタル共有等)
- 保護具の貸与・支給ルールの策定(対象者、管理方法、費用負担の明確化)
- 危険情報の伝達フローの整備(設備異常、化学物質リスク等)
ステップ3:安全衛生教育の拡充
個人事業者を含むすべての構内作業者を対象とした教育体制を構築します。
- 入場時教育(工場ルール、危険箇所、緊急時対応)の対象を個人事業者にも拡大
- **KY活動・TBM(ツールボックスミーティング)**への参加を組み込む
- 化学物質のGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)ラベルの見方など、必要な専門教育の提供
- 教育記録の管理(実施日、内容、受講者名の記録保存)
ステップ4:人間工学的な作業環境の整備
立ち仕事が中心の製造現場では、雇用形態にかかわらず、作業者の身体的負担を軽減する環境づくりが重要です。
- 疲労軽減マットの共用エリアへの敷設
- 作業台の高さ調整が可能な設備の導入
- 適切な休憩場所の確保と利用ルールの明確化
- 人間工学的な作業姿勢に関する啓発ポスターの掲示
これらの措置は、法的な義務にとどまらず、構内で働くすべての人の安全と健康を守るための基盤的な投資です。
対応チェックリスト
現場の管理者が確認すべき項目を以下にまとめます。
- [ ] 構内で作業するすべての事業者・個人事業者を把握しているか
- [ ] 契約書に安全衛生上の協力事項を明記しているか
- [ ] 偽装請負に該当しないか、指揮命令関係を確認しているか
- [ ] 安全衛生協議会に請負企業・個人事業者が参加する体制があるか
- [ ] 入場時教育の対象に個人事業者を含めているか
- [ ] KY活動・TBMへの参加をすべての構内作業者に促しているか
- [ ] 保護具の貸与・支給ルールが個人事業者にも適用されているか
- [ ] 危険情報の伝達フローに個人事業者が含まれているか
- [ ] 作業手順書・安全ルールを個人事業者にも共有しているか
- [ ] 立ち仕事の負担軽減策(マット、作業台調整等)を共用エリアに導入しているか
よくある質問
Q: 製造業には統括安全衛生責任者の選任義務がないのに、なぜ管理体制の整備が必要なのですか?
A: 確かに現行法では、製造業は統括安全衛生責任者の選任義務の対象外です。しかし、2026年4月の安衛法改正により、元方事業者の安全衛生措置義務の対象に個人事業者が含まれることになりました。選任義務がなくとも、混在作業場所の安全確保のために、安全衛生協議会の設置や連絡調整責任者の配置を自主的に行うことが、厚生労働省の指針でも推奨されています。
Q: 安全衛生措置を講じると偽装請負と見なされませんか?
A: 安全衛生上の情報提供や協力要請は、労働者派遣法上の「指揮命令」には該当しないと考えられています。ただし、安全管理の名目で作業手順や作業時間を細かく指示すると、偽装請負と判断されるリスクがあります。契約書に安全衛生上の協力事項を明記し、指揮命令ではなく情報提供・協力要請の形をとることが重要です。
Q: 個人事業者の保護具は誰が費用を負担するのですか?
A: 法改正では費用負担の具体的なルールは定められていませんが、元方事業者が保護具の着用を求める場合、費用負担のあり方を契約時に明確にしておくことが望ましいです。元方事業者が貸与・支給する方法や、契約単価に含める方法など、事前に取り決めておきましょう。
まとめ
製造業の構内請負・業務委託の現場では、複数の事業者が同じ工場内で作業する「混在作業」が日常的に行われています。2026年4月施行の改正労働安全衛生法により、個人事業者も元方事業者の安全衛生措置の対象に含まれることで、従来以上に包括的な安全管理体制の構築が求められます。
ポイントは、安全衛生措置の拡充と、請負契約の独立性の維持を両立させることです。契約書の見直し、安全衛生協議会への参加体制の整備、入場時教育の対象拡大、保護具の貸与ルール策定など、今から段階的に準備を進めることが現場の安全を守ることにつながります。
また、立ち仕事が多い製造現場では、人間工学的な配慮を雇用形態にかかわらずすべての作業者に提供することが、労働災害の予防だけでなく、作業効率や品質の向上にも寄与します。
改正法の施行まで、今から一つひとつ対応を進めていきましょう。
参考文献
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第27号), 2025年5月14日公布. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」報告書, 2023年. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」, 2006年. https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号). https://www.mhlw.go.jp/
- 中央労働災害防止協会, 「製造業における安全衛生管理の実態調査」. https://www.jisha.or.jp/
- 厚生労働省, 「労働災害発生状況」各年版. https://www.mhlw.go.jp/
- 内閣官房, 「フリーランス実態調査結果」, 2020年. https://www.cas.go.jp/

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