歯科衛生士のMSD有病率96%!?歯科衛生士の疲れ・筋骨格系疾病の実態と対策とは

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導入:身体負担がキャリアを左右する時代に

歯科衛生士という専門職は、患者の健康を支えるプロフェッショナルでありながら、自身の健康を損なうリスクとも常に向き合っています。特に、腰痛、肩こり、手首の痛みなどの筋骨格系障害(Musculoskeletal Disorders:MSD)は、業務に深く結びついた“職業病”として広く知られています。

厚生労働省の「労働者健康状況調査」や各国の疫学調査からも、医療・介護系職種の中で歯科衛生士が特にMSDの有病率が高いことが報告されています。中でも注目されるのが、カナダ歯科衛生士協会(CDHA)が主導した大規模レビューの結果です。この調査によれば、歯科衛生士の1年間のMSD有病率は60〜96%にも達し、その多くが複数部位に慢性的な痛みや違和感を抱えていることが明らかとなりました。

このデータは単なる統計にとどまらず、「歯科衛生士という職業の構造的課題」と「今後の予防策の必要性」を突きつける重要な示唆を含んでいます。


MSDの実態:首・肩・手首・背中に集中する多部位症状

カナダのレビューを含む複数の文献では、歯科衛生士が経験するMSDの発症部位はきわめて広範囲にわたることが示されています。以下に代表的なデータを示します:

  • 首(cervical region):60〜72%
  • 肩(shoulder):55〜70%
  • 手首・前腕(wrist/forearm):50〜65%
  • 背中(upper and lower back):65〜80%
  • 腰(lumbar region):60〜75%
  • 脚・下肢(lower extremities):30〜50%

MSDの特徴は、単一部位だけでなく複数部位に同時に症状が現れる点にあります。たとえば、「肩こりと手首の痛み」「腰痛と背中の張り」など、部位間の連鎖的な負担が慢性的な不調を引き起こします。さらに、作業内容や使用器具、勤務年数、週の労働時間、身体活動レベルなどによってもリスクは大きく左右されます。

国際比較でも、北米・ヨーロッパ・アジアいずれの地域でも、歯科衛生士におけるMSDの高い有病率は共通して報告されており、職業的に本質的なリスクであることが分かります。


要因分析:職業構造に潜む「慢性疲労のトリガー」

なぜこれほどまでに歯科衛生士はMSDのリスクが高いのでしょうか。その答えは、業務の根幹にある“身体の使い方”にあります。

1. 長時間の静的姿勢保持

歯科衛生士の業務は、長時間同じ姿勢を維持することが不可避です。特に中腰で前傾する姿勢は、腰椎・頸椎にかかる圧力を増大させ、背中や腰の筋肉に負担が集中します。エルゴノミクスの観点から見ても、30分以上の静止姿勢は筋緊張と血流障害を招き、痛みの要因となります。

2. 高頻度・高精度の反復動作

口腔内の処置は、ミリ単位の正確さが求められる繊細な作業です。**繰り返し動作(repetitive motion)**は手指や前腕の筋腱に過剰な負荷を与え、腱鞘炎や関節炎のリスクを高めます。

3. 視覚中心のワークスタイル

患者の口腔内をのぞき込む姿勢を長時間維持することは、首や肩周囲の筋群に過剰な緊張を生みます。さらに、視認性を高めようとして顔を近づける・首を傾けるなどの無意識の姿勢変化が重なることで、リスクが増幅します。

4. 器具や作業環境の非最適性

作業台の高さが合っていない、トレーが遠い、ライトが暗いなど、環境要因の積み重ねが身体負担を助長します。これらの要素は、技術や経験とは無関係に、すべての作業者に等しく影響します。


身体と心理への複合的な影響

MSDは単なる筋肉の痛みにとどまらず、業務全体に波及する深刻な影響を及ぼします。

  • 疼痛の慢性化:一度発症すると慢性化しやすく、特に手首や腰のMSDは数年単位での継続的なケアが必要となります。
  • 集中力の低下:痛みにより思考力や判断力が低下し、医療安全や業務効率に悪影響を及ぼします。
  • 離職・職種転換:慢性疼痛が原因で職場を去る歯科衛生士も少なくありません。2023年の業界調査では、「身体の痛み」が退職理由の上位3位以内に入っていました。
  • 心理的ストレス:「また痛くなるのでは」という予期不安、職場での配慮が得られない孤立感など、心理的な2次被害も看過できません。

解決策:教育・環境・セルフケアの3本柱で予防を

MSD対策には、症状が出てからの対処療法ではなく、発症前の予防教育と環境整備が鍵を握ります。

教育段階での姿勢指導

  • エルゴノミクスに基づいた座位・立位の理想姿勢の習得
  • 動線・器具配置を考慮した実習環境の最適化
  • 定期的な姿勢フィードバックと自己評価の導入

職場環境の整備

  • 作業チェアの高さ、背もたれの角度、肘のサポートなどの椅子の見直し
  • ライト・拡大鏡(loupes)など視認性改善ツールの活用
  • 足元マットやフットレストによる立位作業の負担軽減

日常的なセルフケア習慣

  • 肩甲骨周囲筋・下肢のストレッチ
  • 前腕・手指のトレーニング
  • ヨガ・ピラティス・ウォーキングによる全身コンディショニング

最新研究では、週2回のヨガ実践がMSD関連疼痛を明らかに軽減した例や、短時間のサーキットストレッチが疲労感を50%以上軽減したという報告もあります。


今後の展望:MSDは「防げる職業病」へ

歯科衛生士の高いMSD有病率は、「構造的な職業リスク」である一方で、予防可能な疾患群でもあります。

今後、歯科業界が取り組むべき課題は次の3点に集約されます:

  1. 教育現場へのエルゴノミクス導入
  2. 現場への姿勢改善支援ツールの普及
  3. 継続的な身体チェックとサポート体制の構築

MSDの予防は、単に身体の不調を防ぐだけでなく、職業寿命の延伸、医療サービスの質の向上、ひいては働き方改革の推進にも直結します。

“身体を守ることが、プロフェッショナルであり続けること”。この意識を共有することが、業界全体の健康と成長にとって不可欠な一歩となるでしょう。

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立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

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立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

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立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

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スタビハーフの負荷軽減効果検証実験の様子。立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

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