2026年安衛法改正の国会審議を振り返る|附帯決議のポイントと今後の展望

2026年安衛法改正の国会審議を振り返る|附帯決議のポイントと今後の展望 | 立ち仕事のミカタ | アルケリス株式会社

労働安全衛生法の改正が国会でどのように審議され、成立に至ったかご存知ですか?2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」は、国会審議の過程で多くの議論が交わされ、衆参両院で附帯決議が付されました。この附帯決議には、中小企業への配慮や段階施行への要望など、現場で働く人にとって重要なメッセージが込められています。

この記事では、改正法案の提出経緯から国会審議の過程、附帯決議の主要ポイント、そして今後の省令・指針の整備スケジュールまでを時系列で振り返ります。

: 本記事は2025年7月時点の情報に基づいています。省令・告示等の詳細は今後順次公布される予定です。

この記事でわかること

  • 労働安全衛生法改正法案の国会への提出経緯と労働政策審議会での事前検討内容
  • 衆議院・参議院における審議の過程と主な論点
  • 附帯決議で示された中小企業への配慮や支援策の充実に関する要望
  • 改正法に対する使用者側・労働者側それぞれの見解
  • 今後の省令・指針の整備スケジュールと注目すべきポイント

労働安全衛生法 改正 国会審議の全体像

法案提出に至るまでの経緯

改正法案が国会に提出されるまでには、厚生労働省の審議会で長い議論の積み重ねがありました。その流れを時系列で振り返ります。

労働政策審議会安全衛生分科会では、2023年度から本格的な検討が始まりました。同分科会では、働き方の多様化への対応労働者の高齢化に伴う労災増加化学物質管理の国際的な潮流への対応など、複数のテーマについて集中的な議論が行われています。

主な検討経緯は以下のとおりです。

  • 2023年4月〜: 労働政策審議会安全衛生分科会で、個人事業者の安全衛生対策について議論を開始
  • 2023年10月: 同分科会に「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」の報告書が提出される
  • 2024年1月: ストレスチェック制度の全事業場への適用拡大について、「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が中間とりまとめを公表
  • 2024年6月〜9月: 安全衛生分科会で改正法案の骨格について審議。使用者側委員・労働者側委員からそれぞれ意見が提出される
  • 2024年12月: 安全衛生分科会が「今後の職場における安全衛生対策について(建議)」を厚生労働大臣に提出
  • 2025年2月: 法案要綱が安全衛生分科会に諮問され、「おおむね妥当」との答申を受ける
  • 2025年3月: 閣議決定を経て、改正法案が第214回国会に提出される

労働政策審議会での主な論点

安全衛生分科会での事前検討では、以下のような論点が重点的に議論されました。

個人事業者保護の範囲と実効性

フリーランスや一人親方を安衛法の保護対象に含めることについては、その必要性自体に大きな異論はありませんでした。ただし、「どこまでを保護対象とするか」「元方事業者の義務が過度な負担にならないか」という点で、使用者側委員から慎重な意見が示されています(厚生労働省, 安全衛生分科会議事録, 2024年)。

ストレスチェックの小規模事業場への義務化

50人未満の事業場への義務化については、費用負担や産業医の確保が困難であるという実務的な課題が指摘されました。一方で、労働者側委員からは「メンタルヘルス不調は事業場の規模を問わず生じる問題であり、全事業場への義務化は不可欠」との強い要望が出されています。

化学物質管理のリスクアセスメント対象拡大

対象物質を約900種から約2,900種に拡大することについて、中小企業の対応能力への懸念が示されました。分科会では、段階的な施行と十分な周知期間の確保、そして技術的支援の充実を求める意見が多く出されています。

国会での審議過程

衆議院での審議

改正法案は2025年3月に衆議院に提出され、厚生労働委員会で審議が行われました。

衆議院厚生労働委員会では、2025年4月に質疑が行われ、与野党の議員から幅広い質問が提起されました。主な質疑のポイントは以下のとおりです。

  • 個人事業者保護の実効性確保: 法律で義務を定めても、個人事業者の現場にどう周知・徹底するのかという実行面の懸念
  • 中小企業への支援策: ストレスチェック義務化や化学物質管理の強化に伴う中小企業の負担増加への対策
  • カスタマーハラスメント防止の具体的な基準: 「カスハラ」の定義や、正当なクレームとの線引きをどう行うか
  • 高年齢労働者対策の実効性: 努力義務にとどまることで、十分な効果が得られるかどうか

質疑を経て、衆議院厚生労働委員会では改正法案を賛成多数で可決し、併せて附帯決議が付されました。その後、衆議院本会議でも可決されています。

参議院での審議

衆議院での可決を受け、法案は参議院に送付されました。参議院厚生労働委員会でも同様に質疑が行われ、以下のような論点が追加的に議論されています。

  • 省令委任事項の明確化: 改正法では多くの具体的事項が省令に委任されており、その内容をいつ、どのように決定するのかという透明性への懸念
  • 段階施行のスケジュールの妥当性: 2026年4月から2028年にかけて段階的に施行されるスケジュールが、現場の準備期間として十分かどうか
  • フリーランスの労災保険適用拡大との連携: 別途進められているフリーランスの労災保険特別加入の拡大と、今回の安衛法改正との整合性

参議院厚生労働委員会でも改正法案は賛成多数で可決され、附帯決議が付された後、参議院本会議で可決・成立しました。2025年5月14日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」として公布されています。

附帯決議の主要ポイント

衆参両院の厚生労働委員会で付された附帯決議は、改正法の運用にあたって政府に求める事項をまとめたものです。法的拘束力はありませんが、省令・指針の策定にあたって尊重されるべきものとして、重要な意味を持ちます。

中小企業への配慮と支援策の充実

附帯決議の中で最も多くの項目が割かれたのが、中小企業への配慮に関する事項です。具体的には以下の内容が盛り込まれました。

  • ストレスチェックの全事業場義務化にあたり、小規模事業場が利用しやすい簡易な実施方法を整備すること
  • 化学物質のリスクアセスメント対象拡大に伴い、中小企業向けの技術的支援・相談体制を拡充すること
  • 個人事業者保護に関する元方事業者の義務について、中小の元方事業者に過度な負担が生じないよう配慮すること
  • 各種支援制度(エイジフレンドリー補助金、産業保健総合支援センターの支援等)の周知を徹底し、予算を十分に確保すること

立ち仕事の現場の多くは中小企業が占めています。製造業の町工場、個人経営の飲食店、小規模な美容室など、限られた人員・予算の中で改正法に対応しなければならない事業者にとって、この附帯決議の内容は大きな意味を持つと考えられます。

段階施行と十分な周知期間の確保

改正法は2026年4月から段階的に施行されますが、附帯決議では以下の点が強調されました。

  • 各施行段階の前に十分な周知期間を設け、事業者・労働者への情報提供を徹底すること
  • 省令・指針の策定にあたっては、現場の声を十分に反映させること
  • 施行後の状況を適切にフォローアップし、必要に応じて見直しを行うこと

その他の重要事項

附帯決議にはこのほか、以下のような項目も含まれています。

  • カスタマーハラスメントの定義を明確化し、事業者が適切に対応できるよう具体的な指針を示すこと
  • 高年齢労働者の労災防止について、努力義務の実効性を検証し、必要に応じて義務化を検討すること
  • 化学物質管理について、国際的な基準との整合性を確保しつつ、日本の産業実態に即した運用を行うこと
  • 個人事業者の安全衛生教育について、受講機会の確保と費用負担の軽減策を講じること

改正法に対する労使の見解

使用者側の立場

日本経済団体連合会(経団連)や日本商工会議所は、改正法の趣旨には基本的に賛同しつつも、以下の点について懸念を表明しています。

  • コスト負担の増加: 特にストレスチェックの義務化や化学物質管理の強化は、中小企業にとって大きな経済的負担になる可能性がある
  • 元方事業者の責任範囲: 個人事業者の安全衛生について、元方事業者がどこまで責任を負うべきかの線引きが曖昧
  • 省令への過度な委任: 法律の骨格は理解できるものの、具体的な義務内容が省令に委任される部分が多く、事業者が先を見通しにくい

使用者側としては、段階的な施行と十分な準備期間の確保、そして中小企業向けの手厚い支援策を求める姿勢が一貫していました。

労働者側の立場

日本労働組合総連合会(連合)をはじめとする労働者側は、改正法を「長年求めてきた安全衛生対策の前進」として評価する一方、以下の点でさらなる充実を求めています。

  • 個人事業者保護の早期完全実施: 第2段階(2027年4月)の施行を待たず、できる限り早期に全面適用すべき
  • ストレスチェックの質の確保: 義務化するだけでなく、結果を踏まえた**職場環境改善(集団分析の活用)**まで義務化すべき
  • 高年齢労働者対策の義務化: 努力義務にとどまらず、より強い義務づけが必要
  • カスハラ防止の実効性確保: 法制化を歓迎しつつも、被害者の保護と加害者への対応についてより踏み込んだ規定を求める

労使双方の意見は、今後の省令・指針の策定過程に反映されることが期待されています。

今後の省令・指針の整備スケジュール

改正法の多くの具体的事項は省令(施行規則等)や指針・告示に委ねられています。今後のスケジュールとして、以下の流れが見込まれます。

2025年度中(〜2026年3月)に予定される整備事項

  • 個人事業者保護に関する省令: 元方事業者の具体的な措置内容、対象となる業種・作業の範囲などを規定
  • 高年齢労働者の労災防止に関する指針: エイジフレンドリーガイドラインの改定版を公表
  • カスタマーハラスメント防止に関する指針: カスハラの定義、事業者が講ずべき雇用管理上の措置の具体的内容を規定

2026年度中に予定される整備事項

  • 化学物質管理の強化に関する省令: リスクアセスメント対象物質のリスト確定、個人ばく露測定の具体的な方法・基準の策定
  • ストレスチェック全事業場義務化に関する省令: 小規模事業場向けの簡易実施方法、集団分析の取り扱い等の具体化

注目すべきポイント

省令・指針の策定にあたっては、改めて労働政策審議会安全衛生分科会での審議が行われます。附帯決議で示された事項がどの程度反映されるかは、この審議過程にかかっています。

特に立ち仕事の現場に関連が深い項目として、以下に注目する必要があります。

  • エイジフレンドリーガイドラインの改定内容: 立ち仕事における高年齢労働者への具体的な配慮事項がどう規定されるか
  • 個人事業者保護の対象範囲: 製造業や建設業の現場で立ち仕事に従事する一人親方・フリーランスへの措置義務の具体的内容
  • 中小企業向け支援策の拡充: エイジフレンドリー補助金の拡充や、無料相談窓口の整備状況
施行時期主な改正内容省令・指針の整備時期(見込み)
2026年4月個人事業者保護(第1段階)、高年齢労働者の労災防止2025年度中
2026年10月化学物質管理の強化、カスハラ防止2025年度〜2026年度
2027年4月個人事業者保護(第2段階)2026年度中
2028年5月(最長)ストレスチェック全事業場義務化2026年〜2027年度

まとめ

2025年5月14日に公布された労働安全衛生法改正は、労働政策審議会での約2年にわたる検討を経て、国会での審議・附帯決議を含む充実した立法過程を経て成立しました。

附帯決議では、中小企業への配慮と支援策の充実段階施行と十分な周知期間の確保施行後のフォローアップが強く求められています。これらの内容は、今後の省令・指針の策定に反映されることが期待されます。

立ち仕事に従事する方や、その職場を管理する事業者にとって重要なのは、法律の条文だけでなく、今後策定される省令・指針の内容を注視することです。特にエイジフレンドリーガイドラインの改定や、中小企業向け支援策の具体化は、現場の働きやすさに直結するテーマです。

「立ち仕事のミカタ」では、今後公布される省令・指針の内容についても、引き続き情報をお届けしてまいります。

参考文献

  1. 厚生労働省, 「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」, 2025年5月14日公布. https://www.mhlw.go.jp/
  2. 厚生労働省, 「労働政策審議会安全衛生分科会 議事録」, 2023年〜2025年. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126972.html
  3. 厚生労働省, 「今後の職場における安全衛生対策について(建議)」, 2024年12月. https://www.mhlw.go.jp/
  4. 衆議院, 「厚生労働委員会議事録」, 第214回国会, 2025年. https://www.shugiin.go.jp/
  5. 参議院, 「厚生労働委員会議事録」, 第214回国会, 2025年. https://www.sangiin.go.jp/
  6. 厚生労働省, 「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会 報告書」, 2023年. https://www.mhlw.go.jp/
  7. 厚生労働省, 「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/
  8. 日本経済団体連合会, 「労働安全衛生法改正に関する意見」, 2024年. https://www.keidanren.or.jp/
  9. 日本労働組合総連合会(連合), 「安全衛生法制の充実に向けた要望」, 2024年. https://www.jtuc-rengo.or.jp/

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