【60歳以上の労災死傷者が初の3割台に】データで見る高齢者労災の実態

高齢者の労災発生率のデータをご覧になったことはありますか? 2024年、労災による休業4日以上の死傷者に占める60歳以上の割合が、ついに3割台に到達しました。過去20年で倍増したこの数字は、立ち仕事の現場にも深刻な影響を及ぼしています。本記事では、厚生労働省の公的統計データを中心に、高齢者労災の実態を年齢別・災害類型別・業種別に読み解きます。
この記事でわかること
- 60歳以上の労災死傷者数が全体の3割を超えた最新データの詳細
- 30代と比較して60歳以上の労災発生率が男性約2倍・女性約5倍に達する背景
- 高齢者に多い災害類型(転倒・墜落・転落・動作の反動)の特徴
- 業種別に見た高齢者労災の発生状況
- 2026年の法改正(努力義務化)を裏付けるデータの意味
高齢者労災の発生率データが示す深刻な現状
60歳以上の労災死傷者が初の3割台に
厚生労働省が公表する「労働者死傷病報告」によると、2024年の労災による休業4日以上の死傷者数は約13万5,000人を超え、そのうち60歳以上の労働者が占める割合は約30%に達しました。これは統計が整備されて以来、初めて3割台に乗った歴史的な数値です。
この割合を時系列で見ると、傾向の深刻さがより鮮明になります。2004年頃には60歳以上の労災死傷者の割合は約15%前後でしたが、2014年頃には約22%に上昇し、そして2024年にはついに30%を突破しました。わずか20年で倍増したことになります。
年齢別に見る労災発生率の格差
労災の「件数」だけでなく、就業者数あたりの「発生率」で比較すると、年齢による差はさらに顕著です。
厚生労働省の分析データによれば、30代の労災発生率を基準(1.0)とした場合の相対リスクは以下のとおりです。
| 年齢層 | 男性の相対リスク | 女性の相対リスク |
|---|---|---|
| 30代(基準) | 1.0 | 1.0 |
| 40代 | 約1.1 | 約1.5 |
| 50代 | 約1.3 | 約2.5 |
| 60歳以上 | 約2.0 | 約4.7 |
注目すべきは女性の60歳以上で約4.7倍という数値です。男性の約2倍と比較しても極めて高く、女性高齢労働者が労災リスクにおいて特に脆弱な立場にあることがデータから読み取れます。
この性別差の背景には、加齢に伴う骨密度の低下速度の違いがあると考えられています。女性は閉経後に骨密度が急速に低下するため、転倒時に骨折に至りやすく、休業4日以上の重篤な労災として計上される割合が高くなるのです。
高齢者に多い災害類型とその特徴
転倒が最大の要因
高齢労働者の労災において最も多い災害類型は「転倒」です。60歳以上の労災死傷者のうち、転倒が占める割合は約30%に上り、全年齢の平均(約25%)を大きく上回ります。
転倒災害が高齢者に多い理由は複合的です。
- バランス機能の低下: 加齢により前庭機能や固有感覚が衰え、姿勢の維持が困難になる
- 筋力の低下: 下肢筋力(特に大腿四頭筋)の減少により、つまずいた際のリカバリー動作が遅れる
- 視覚機能の変化: 暗順応の遅延や視野の狭窄が、床面の段差・障害物の認識を遅らせる
- 反応速度の低下: 滑りやすい床面などの危険への反応が全般的に遅くなる
特に立ち仕事の現場では、長時間の立位による下肢の疲労が蓄積し、勤務時間の後半に転倒リスクが高まることが指摘されています。
墜落・転落
「墜落・転落」は建設業をはじめとする高所作業で多発する災害類型です。60歳以上では全体の約15%を占め、死亡災害に限ると最も高い割合を示します。高齢者は転落時の受け身が取りにくく、同じ高さからの転落でも若年層より重篤化しやすい傾向があります。
動作の反動・無理な動作(腰痛等)
重量物の取り扱いや不自然な姿勢での作業による腰痛等の筋骨格系障害(MSDs: Musculoskeletal Disorders)も、高齢者に多い災害類型のひとつです。60歳以上では約13%を占めており、特に介護・看護や製造業の現場で多く報告されています。
加齢による椎間板の変性や筋柔軟性の低下が、同じ作業負荷でも損傷リスクを高めていると考えられています。
業種別に見る高齢者労災の発生状況
製造業
製造業は高齢者の労災死傷者数が最も多い業種のひとつです。機械への巻き込まれ・はさまれに加え、長時間の立ち作業に伴う転倒や腰痛が多く発生しています。製造業では60歳以上の就業者が増加傾向にあり、熟練技能者の高齢化が労災リスクの増加と結びついています。
建設業
建設業は死亡災害の割合が高い業種です。高所作業における墜落・転落災害が高齢者に特に多く、60歳以上の死亡災害のうち建設業が大きな割合を占めています。体力や反射神経の低下が高所作業の危険性を増大させる要因となっています。
小売業
小売業では転倒災害の割合が際立って高い点が特徴です。店舗内の床面が濡れている状況や、バックヤードでの段差・荷物の運搬時に転倒が発生しやすく、特に女性高齢労働者の割合が高い小売業では、先述の女性の高い相対リスク(約4.7倍)が深刻な問題となっています。
社会福祉施設(介護・看護)
社会福祉施設では、利用者の移乗介助や体位変換時の腰痛(動作の反動・無理な動作)が高齢職員に多く発生しています。介護業界は慢性的な人手不足から高齢職員への依存度が高く、身体的負荷の大きい作業を高齢者が担わざるを得ない状況が労災増加の一因です。
高齢者労災増加の背景にある構造的要因
65歳以上の就業者数の急増
総務省の「労働力調査」によれば、65歳以上の就業者数は2004年の約480万人から2024年には約914万人へと、20年間で約1.9倍に増加しました。就業者全体に占める65歳以上の割合も約7%から約13%へと上昇しています。
この背景には、少子高齢化による生産年齢人口の減少と、年金支給開始年齢の引き上げ、そして高年齢者雇用安定法の改正による65歳までの雇用確保措置の義務化や70歳までの就業機会確保の努力義務化があります。
定年延長・再雇用制度の広がり
多くの企業が60歳定年後の継続雇用制度を導入しており、定年延長や再雇用により60歳以降も同じ職場で働き続けるケースが増加しています。しかし、再雇用後の職務内容や作業環境が高齢者の身体機能に十分配慮されていないケースも少なくありません。
厚生労働省の調査では、再雇用後に「以前と同じ業務」に従事している高齢者が約7割に上るとされており、加齢による身体機能の変化に応じた業務調整が進んでいない現状がうかがえます。
2026年の法改正と高齢者労災対策の方向性
エイジフレンドリーガイドラインから努力義務化へ
こうしたデータを踏まえ、国は高齢者の労働災害防止に本腰を入れ始めています。厚生労働省は2020年に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称:エイジフレンドリーガイドライン)を策定しましたが、2026年の労働安全衛生法改正では、高齢者への配慮措置が努力義務として法的に位置づけられる見通しです。
この努力義務化の必要性を裏付けているのが、本記事で見てきた一連のデータです。60歳以上の労災割合が3割を超え、年齢別の発生率格差が2〜5倍に達する状況は、従来の自主的な取り組みだけでは不十分であることを統計が示しています。
立ち仕事の現場に求められること
高齢者の労災データが示す課題の多くは、立ち仕事の現場と密接に関わっています。転倒防止のための床面の整備、作業台の高さ調整、適切な休憩の確保、身体的負荷を軽減する補助器具の導入など、作業環境のエイジフレンドリー化が求められています。
アルケリスが取り組んでいる立ち仕事の負担軽減も、こうした高齢者労災の予防という観点から重要性が増しているといえるでしょう。
まとめ
本記事では、厚生労働省の「労働者死傷病報告」をはじめとする公的統計データをもとに、高齢者の労災発生率の実態を多角的に分析しました。
主なポイントを整理します。
- 60歳以上の労災死傷者の割合が初めて3割台に到達し、過去20年で倍増した
- 30代比で60歳以上の労災発生率は男性約2倍・女性約5倍と大きな格差がある
- 高齢者に多い災害類型は転倒・墜落・転落・動作の反動であり、いずれも加齢による身体機能の変化と関連している
- 製造業・建設業・小売業・社会福祉施設など、立ち仕事が多い業種で高齢者労災が多発している
- 65歳以上の就業者数の急増と再雇用制度の広がりが、構造的な労災増加要因となっている
- 2026年の労働安全衛生法改正による努力義務化は、こうしたデータが裏付ける必然的な政策対応である
高齢者が安全に、そして長く働き続けられる職場環境の実現は、少子高齢化が進む日本社会全体の課題です。データに基づいた適切な対策を講じることが、企業にとっても労働者にとっても不可欠な時代を迎えています。
参考文献
- 厚生労働省, 「労働者死傷病報告」各年版, https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/
- 厚生労働省, 「令和6年 労働災害発生状況」, 2025年, https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/
- 厚生労働省, 「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」, 2020年, https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10178.html
- 総務省統計局, 「労働力調査」各年版, https://www.stat.go.jp/data/roudou/
- 厚生労働省, 「高年齢者雇用状況等報告」, 各年版, https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000182200.html
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法の改正について」(2026年施行予定分), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/

「立ちっぱなし」でお悩みはありませんか?
✔︎ 足裏が痛い
✔︎ 腰痛がつらい
✔︎ ふくらはぎがむくむ
✔︎ ヒザが痛い
✔︎ 姿勢の悪化
✔︎ 全身疲労
✔︎ 足裏が痛い
✔︎ 腰痛がつらい
✔︎ ふくらはぎがむくむ
✔︎ ヒザが痛い
✔︎ 姿勢の悪化
✔︎ 全身疲労
立ち姿勢の負担軽減
「スタンディングレスト」
という新発想!

立ち作業の負担軽減デバイス
アルケリスは立ち姿勢の負荷軽減デバイスを販売中です。職場環境に合わせて、疲労軽減ジェルマット、スタビ ハーフ、スタビフルから選ぶことができます。立ち仕事の身体疲労を軽減し、働く人に選ばれる職場づくりをサポートします。
その他の負荷軽減デバイス
上肢の負担や局所疲労の軽減にフォーカスした製品ライン SUTIX by Ottobock を販売中です。熱暑対策・腰痛対策に加え、手首や首の疲労のためのサポートデバイスで安心安全な職場づくりを実現します。
製品写真(スタビハーフ)






身体負荷を軽減する
立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

負荷軽減の検証データ
実証実験において、スタビハーフによる体重分散効果が示されました。
立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。
スネ部のロールクッションが体重の一部を優しく支えることで、足裏の荷重が軽減していることがデータから示されました。







