労働安全衛生担当が知っておきたい高齢作業者に配慮した熱中症対策とは?【厚生労働省の報告書を徹底解説】

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高齢化が進む職場で注目される熱中症リスク

少子高齢化の進行とともに、労働現場で働く高齢者の割合が年々増加しています。とりわけ、警備業、清掃業、農業、物流業といった業種では、定年退職後に再雇用されるケースや、アルバイト・パートとして就業する高齢者が多く見られます。

このような背景の中で問題となるのが「高齢作業者の熱中症リスク」です。厚生労働省のデータによれば、2019年〜2023年の間に発生した熱中症による労働災害のうち、65歳以上の死傷者の割合は16%。年齢構成比と比較しても明らかに高い数字であり、高齢者が熱中症による健康被害を受けやすい現状を物語っています。

熱中症は命に関わる深刻な健康障害でありながら、適切な対策を講じれば予防可能な災害です。本記事では、高齢者に特有のリスク要因を明らかにした上で、職場で実施すべき具体的な熱中症対策を解説します。


なぜ高齢者は熱中症にかかりやすいのか?

自覚症状の遅れと感覚の鈍化

加齢により、体温調節機能や喉の渇きの感覚が鈍くなる傾向があります。気温の上昇に体が反応しにくくなり、本人が「暑い」「のどが渇いた」と感じる前に脱水が進行してしまうことがあります。

基礎疾患によるリスクの増大

高齢者の多くは、糖尿病・高血圧・心疾患・腎機能障害といった慢性疾患を抱えています。これらの疾患は熱中症の重症化に直結するだけでなく、服薬の影響で脱水や発汗異常を引き起こすリスクもあります。

筋力・体力の低下と回復力の遅さ

加齢に伴う筋肉量や代謝機能の低下は、身体が熱を逃がす効率を悪化させます。また、一度体調を崩した場合の回復にも時間がかかり、作業中断が長期化する恐れがあります。

社会的要因:無理をしがちな性格傾向

高齢者は「迷惑をかけたくない」「仕事を休むのは申し訳ない」と考えがちで、体調不良を申告せず無理をしてしまうことも、リスクを高める要因です。


高齢者向け熱中症対策の5つの柱

1. 作業前の健康チェックと事前管理

  • 健康診断で要注意とされている項目(高血圧・糖尿病など)を把握し、産業医と連携して就業可否を判断。
  • 作業開始前に簡易問診(例:昨晩の睡眠、朝食、服薬状況)を行い、当日の体調を確認。
  • 作業中も定期的な声掛けや観察を行い、顔色・動作・発汗などの変化に気づける体制を整える。

2. 暑熱順化プログラムの導入

  • 連続作業時間を短く設定し、初日は30分程度の軽作業からスタート。
  • 日を追って少しずつ作業時間と負荷を増やすことで、体が暑さに慣れるよう計画的に対応。
  • 気温が上がる5月〜6月のうちに実施し、ピーク時(7月〜8月)に備える。

3. 水分・塩分補給の徹底と「記録化」

  • 水だけでなく、ナトリウムを含むスポーツドリンクの定期補給を推奨。
  • 一定時間ごとにアラームや放送で補給を促す。
  • 補給した内容とタイミングを記録する「飲水チェックシート」を配布し、管理者が回収・確認する体制を構築。

4. 作業環境の調整と装備の見直し

  • 屋外作業時は簡易テントやパラソルなどの日陰設備を設置。
  • 屋内でも冷房・送風機・除湿機の活用でWBGT値の低減を図る。
  • 冷却ベスト、冷感インナー、吸汗速乾の作業服などを高齢者向けに配布。
  • 長時間の立ち仕事を避け、座って作業できる工程への配置転換も検討。

5. 単独作業の禁止と見守り体制の整備

  • 単独作業を極力避け、常に誰かと組む「バディ制」を導入。
  • ウェアラブルセンサー(体温・心拍数モニター)を装着し、異常があれば管理者に通知されるシステムを活用。
  • 巡視頻度を通常より高く設定し、異常を早期に発見できる体制を整備。

現場事例:高齢作業者に配慮した取り組み

警備会社の取り組み

ある都市警備会社では、65歳以上の隊員向けに「サマー勤務制度」を設けています。内容は、

  • 勤務時間を早朝・夕方に設定し、猛暑の時間帯は休憩中心に。
  • 毎日の体調チェック表に記入後、出勤可否を判断。
  • 屋外勤務には冷感ユニフォームと冷却ベストを貸与。
  • 1時間に1回、無線での安否確認を実施。 これにより、熱中症発症リスクが前年より大幅に低下しました。

清掃業の取り組み

清掃業では、作業が朝6時〜9時、夕方4時〜6時といった「気温が比較的低い時間帯」にシフトされています。高齢者には軽作業や屋内清掃を優先的に割り当て、作業中の水分補給が義務化されました。チェックリストと連動したQRコード報告制度を導入し、管理者がスマホでリアルタイムに確認できる仕組みも構築されています。


高齢者自身が意識したいセルフケアのポイント

  • 暑さを我慢しない。「ちょっと変だな」と思ったらすぐ報告・休憩する。
  • 毎日しっかり朝食をとり、水分と塩分を意識的に摂取する。
  • 睡眠時間を確保し、前日の飲酒は控えめに。
  • 「昨日より暑いかもしれない」と思ったら、冷却グッズを積極的に使う。

まとめ:すべての世代が安心して働ける現場へ

高齢労働者の熱中症対策は、「見えにくい危険」を「見える化」し、体調の変化に早く気付ける仕組みづくりから始まります。個人任せにせず、職場全体で「声かけ・見守り・記録・体制」の4点を軸に対応することが重要です。

加齢は誰にも避けられない変化ですが、職場の工夫と仲間の支えによって、安心・安全に働き続けることは可能です。高齢作業者の安全を守ることは、すべての世代が健やかに働ける職場づくりにつながります。

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立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

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立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

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