【ストレスと腰痛の関係とは?】最新研究が明らかにする職場ストレスと筋骨格系障害の関係

【ストレスと腰痛の関係とは?】最新研究が明らかにする職場ストレスと筋骨格系障害の関係 |立ち仕事のミカタ | アルケリス株式会社

ストレスと腰痛の関連について、研究ではどのようなことが明らかになっているのでしょうか。「腰痛の原因は姿勢や重労働だけ」と思っていませんか? 実は近年の研究で、職場のストレスや心理社会的要因が腰痛・肩こりなどの筋骨格系障害(MSDs: Musculoskeletal Disorders)に大きく関わっていることが次々と報告されています。

長時間の立ち仕事による身体的負担に加えて、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスが重なると、腰痛や肩こりはさらに悪化し、慢性化しやすくなります。本記事では、職場のストレスと身体症状の関連に関する国内外の研究を紹介し、「バイオサイコソーシャルモデル」という新しい腰痛の理解の枠組みから、統合的な対策の意義を解説します。

この記事でわかること

  • ストレスと腰痛・肩こりの関連を示す研究エビデンス
  • 職場ストレスが筋骨格系の痛みを悪化させるメカニズム(ストレス→筋緊張→疼痛増悪)
  • 「バイオサイコソーシャルモデル」による腰痛の理解とは
  • 仕事の要求度−コントロールモデル(Karasekモデル)と身体症状の関係
  • メンタルヘルス対策と筋骨格系障害対策を統合的に行う意義

ストレスと腰痛の関連が注目される背景

腰痛は「身体だけの問題」ではない

腰痛は日本人の有訴率が最も高い症状の一つであり、厚生労働省の「国民生活基礎調査」では、男性の自覚症状の第1位、女性では第2位を長年にわたって占めています(厚生労働省, 2022)。特に立ち仕事に従事する方にとって、腰痛は日常的な悩みと言えるでしょう。

従来、腰痛の原因は不良姿勢、重量物の取り扱い、長時間の同一姿勢といった物理的・生体力学的な要因で説明されることが一般的でした。しかし、画像検査で異常が見つからない非特異的腰痛が全体の約85%を占めるとされており(Maher et al., 2017)、身体的な要因だけでは腰痛を十分に説明できないことが明らかになってきました。

こうした背景から、心理社会的要因——すなわち職場のストレス、仕事への不満、人間関係の問題、将来への不安——が腰痛の発症や慢性化に大きく寄与しているという考え方が、研究者の間で広く受け入れられるようになっています。

心理社会的要因とは何か

心理社会的要因(psychosocial factors)とは、個人の心理状態と、その人を取り巻く社会的環境との相互作用を指します。職場における代表的な心理社会的要因には、以下のようなものがあります。

  • 仕事の要求度が高い(業務量が多い、時間的プレッシャーが強い)
  • 仕事のコントロール(裁量権)が低い(自分で仕事の進め方を決められない)
  • 職場の社会的支援が乏しい(上司・同僚からのサポートが少ない)
  • 努力と報酬の不均衡(頑張っても評価や待遇に反映されない)
  • 仕事への不満足感(やりがいを感じられない)

これらの要因が複合的に作用することで、身体的な痛みが増幅されたり、回復が遅れたりすることが、多くの研究で示されています。

研究の概要:ストレスと筋骨格系障害の関連

仕事の要求度−コントロールモデル(Karasekモデル)

職場のストレスを理解するうえで最も広く用いられている理論的枠組みの一つが、Karasek(1979)が提唱した仕事の要求度−コントロールモデル(Job Demand-Control Model) です。

このモデルでは、仕事のストレスを「要求度(demand)」と「コントロール(control=裁量権)」の2軸で整理します。仕事の要求度が高いにもかかわらず、自分で仕事の進め方を決められる裁量権が低い状態は「高ストレイン(high strain)」と呼ばれ、最も健康リスクが高いとされています。

Bongers et al.(1993)の系統的レビューでは、仕事の要求度の高さ、裁量権の低さ、社会的支援の乏しさが、腰痛・頸部痛・肩の痛みの発症リスクを有意に高めることが報告されています。この研究は、職場のストレスが単に「気分の問題」ではなく、客観的に測定可能な筋骨格系の症状と結びついていることを示した重要なエビデンスです。

心理社会的要因が腰痛の慢性化に寄与するエビデンス

ストレスと腰痛の関連は、発症だけでなく慢性化においても重要な役割を果たします。

Lintonの系統的レビュー(2001)は、心理社会的要因と筋骨格系の痛みに関する37の前向き研究をまとめた画期的な論文です。この研究では、ストレス、仕事への不満足感、うつ傾向といった心理社会的要因が、腰痛や頸部痛の発症と慢性化の両方に強く関連していることが明確に示されました。特に注目すべきは、心理社会的要因が急性腰痛から慢性腰痛への移行を予測する独立したリスク因子であるという知見です。

また、Hartvigsenらのレビュー(2004)でも、仕事への不満足感、単調な仕事内容、職場の人間関係の問題が腰痛リスクを高めることが確認されています。

つまり、同じような身体的負荷を受けていても、職場のストレスが高い人ほど腰痛が長引きやすく、重症化しやすいということが、複数の研究から裏付けられているのです。

ストレスが身体症状を引き起こすメカニズム

ストレス→筋緊張→疼痛増悪の経路

では、心理的なストレスはどのようにして身体の痛みにつながるのでしょうか。そのメカニズムとして、主に以下の経路が考えられています。

1. 筋緊張の増大

ストレスを感じると、自律神経系の交感神経が活性化し、無意識のうちに筋肉が緊張します。特に僧帽筋(肩の筋肉)や脊柱起立筋(背中の筋肉) は、ストレスに反応して持続的に緊張しやすいことが知られています。Lundbergら(1994)の研究では、精神的ストレス下で僧帽筋の筋活動が有意に増加することが筋電図(EMG)測定により確認されています。

2. 痛みの感受性の変化

慢性的なストレスは、脳における痛みの処理にも影響を及ぼします。ストレスホルモン(コルチゾール)の長期的な上昇は、痛みを抑制する下行性疼痛抑制系の機能を低下させ、通常であれば感じないような刺激でも痛みとして認識されやすくなります(Apkarian et al., 2009)。

3. 行動面の変化

ストレスが高い状態では、運動や休息といった健康的な行動が減少しがちです。また、痛みに対する恐怖回避行動(痛みを恐れて動かなくなること)が強まり、それがさらなる身体機能の低下と痛みの慢性化を招く悪循環に陥りやすくなります。

バイオサイコソーシャルモデルによる腰痛の理解

3つの側面から痛みを捉える

現在、腰痛の理解において最も有力とされているのがバイオサイコソーシャルモデル(biopsychosocial model) です。このモデルは、痛みを生物学的(bio)・心理学的(psycho)・社会的(social) の3つの側面から総合的に捉えるアプローチです。

側面具体的な要因の例
生物学的(Bio)椎間板変性、筋力低下、姿勢不良、長時間立位、加齢変化
心理学的(Psycho)ストレス、不安、うつ傾向、痛みへの恐怖(破局的思考)、自己効力感の低下
社会的(Social)職場の人間関係、仕事の裁量権、社会的支援の有無、経済的不安、労災補償の問題

従来の生物医学的モデルでは、「構造的な異常があるから痛い」と考えられていましたが、バイオサイコソーシャルモデルでは、心理的・社会的な要因も痛みの体験に本質的に関与していると考えます。

WaddellとBurton(2001)は、腰痛の管理に関するレビューの中で、急性腰痛の予後を決定する最も重要な因子は、画像所見などの生物学的要因ではなく、心理社会的要因(イエローフラッグ) であると指摘しています。つまり、レントゲンやMRIの所見よりも、患者のストレス状態や痛みに対する認知のほうが、腰痛が慢性化するかどうかの予測に有用だということです。

立ち仕事の身体的負担とストレスの複合効果

立ち仕事に従事する方にとって、この問題はとりわけ重要です。長時間の立位作業は、腰部や下肢への身体的負荷(生物学的要因)を増大させますが、それに加えて職場のストレス(心理社会的要因)が重なることで、痛みのリスクは相乗的に高まります。

Watersらの研究(2007)は、小売業などの立ち仕事に従事する労働者を対象に、身体的な作業負荷と心理社会的要因の複合的な影響を検討しました。その結果、身体的負荷が高く、かつ心理社会的ストレスも高い群では、どちらか一方だけが高い群と比較して、腰痛の発症リスクが有意に高くなることが報告されています。

製造業や医療現場、食品加工業など、立ち仕事が中心の職場では、繰り返し動作や重量物の取り扱いといった身体的リスク因子に、納期のプレッシャー、人手不足による業務過多、シフト勤務のストレスなどが加わりやすい環境にあります。身体面と心理面の両方からリスクを評価し、対策を講じることが求められます。

統合的な対策の意義:メンタルヘルスと筋骨格系障害対策の融合

なぜ統合的アプローチが必要なのか

従来、職場における筋骨格系障害対策(人間工学的な介入) とメンタルヘルス対策(ストレスマネジメント) は、別々の枠組みで実施されることがほとんどでした。しかし、ここまで見てきたように、身体症状と心理社会的要因は密接に関連しており、両者を統合的に取り組むことで、それぞれの対策単独よりも高い効果が期待できると考えられています。

Nicholasらの研究(2011)では、心理社会的要因に配慮した復職支援プログラムが、従来の身体的リハビリテーションのみのプログラムよりも、腰痛による長期休業からの復職率を有意に改善したことが報告されています。

ストレスチェック制度と身体症状改善の可能性

日本では2015年からストレスチェック制度が義務化されています(従業員50人以上の事業場)。2025年の法改正により、50人未満の事業場にも段階的に拡大される見通しです。

ストレスチェック制度は本来メンタルヘルス不調の未然防止を目的としていますが、ストレスと身体症状の関連を踏まえれば、ストレスチェックの結果を筋骨格系障害の予防にも活用できる可能性があります。

例えば、ストレスチェックで「高ストレス」と判定された部署では、メンタルヘルス対策に加えて、人間工学的な作業環境の見直しや身体的負荷の軽減策を同時に講じることで、腰痛・肩こりの予防にも相乗効果が期待できるでしょう。こうした統合的なアプローチは、職場のウェルビーイング(well-being) の向上という観点からも、今後ますます重要性を増していくと考えられます。

研究の限界と今後の展望

職場のストレスと筋骨格系障害の関連に関する研究には、いくつかの限界があります。

まず、多くの研究が横断研究であり、ストレスが腰痛を引き起こすのか、腰痛がストレスを増大させるのかという因果の方向性を確定するには、さらなる縦断研究が必要です。ストレスと痛みには双方向の関係がある可能性も高く、この点の解明は今後の重要な課題です。

また、心理社会的要因の測定は自己報告式の質問票に依存しているため、回答のバイアスが結果に影響している可能性があります。客観的な指標(コルチゾール値、筋電図データなど)を組み合わせた研究が、より強固なエビデンスの構築に寄与するでしょう。

さらに、業種や職種によって心理社会的要因の影響は異なる可能性があり、立ち仕事に特化した研究の蓄積も求められます。日本の労働環境に即したエビデンスの構築が、実効性のある対策の立案につながることが期待されます。

まとめ

職場のストレスと腰痛・肩こりなどの筋骨格系障害は、多くの研究が示すように密接に関連しています。心理社会的要因は、痛みの発症リスクを高めるだけでなく、慢性化の独立したリスク因子であることが明らかになっています。バイオサイコソーシャルモデルに基づく理解が進む中、身体的な対策とメンタルヘルス対策を統合的に行うことが、より効果的な腰痛・肩こり対策につながると考えられます。

特に立ち仕事に従事する方にとっては、身体的負荷と心理社会的ストレスが複合的に作用するため、人間工学的な作業環境の改善とストレスマネジメントの両輪で取り組むことが重要です。ストレスチェック制度の活用など、既存の制度を身体症状の予防にも役立てる視点が、これからの職場の健康管理に求められています。

参考文献

  1. 厚生労働省, 「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」, 2022. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/
  2. Maher, C., Underwood, M., Buchbinder, R., “Non-specific low back pain,” The Lancet, 389(10070), 736-747, 2017. DOI: 10.1016/S0140-6736(16)30970-9
  3. Karasek, R. A., “Job demands, job decision latitude, and mental strain: Implications for job redesign,” Administrative Science Quarterly, 24(2), 285-308, 1979. DOI: 10.2307/2392498
  4. Bongers, P. M., de Winter, C. R., Kompier, M. A. et al., “Psychosocial factors at work and musculoskeletal disease,” Scandinavian Journal of Work, Environment & Health, 19(5), 297-312, 1993. DOI: 10.5271/sjweh.1470
  5. Linton, S. J., “Occupational psychological factors increase the risk for back pain: A systematic review,” Journal of Occupational Rehabilitation, 11(1), 53-66, 2001. DOI: 10.1023/A:1016656225318
  6. Hartvigsen, J., Lings, S., Leboeuf-Yde, C. et al., “Psychosocial factors at work in relation to low back pain and consequences of low back pain: A systematic, critical review of prospective cohort studies,” Occupational and Environmental Medicine, 61(1), e2, 2004. DOI: 10.1136/oem.2002.006114
  7. Lundberg, U., Kadefors, R., Melin, B. et al., “Psychophysiological stress and EMG activity of the trapezius muscle,” International Journal of Behavioral Medicine, 1(4), 354-370, 1994. DOI: 10.1207/s15327558ijbm0104_5
  8. Apkarian, A. V., Baliki, M. N., Geha, P. Y., “Towards a theory of chronic pain,” Progress in Neurobiology, 87(2), 81-97, 2009. DOI: 10.1016/j.pneurobio.2008.09.018
  9. Waddell, G., Burton, A. K., “Occupational health guidelines for the management of low back pain at work: Evidence review,” Occupational Medicine, 51(2), 124-135, 2001. DOI: 10.1093/occmed/51.2.124
  10. Waters, T. R., Dick, R. B., Davis-Barkley, J. et al., “A cross-sectional study of risk factors for musculoskeletal symptoms in the workplace using data from the General Social Survey (GSS),” Journal of Occupational and Environmental Medicine, 49(2), 172-184, 2007. DOI: 10.1097/JOM.0b013e3180322559
  11. Nicholas, M. K., Linton, S. J., Watson, P. J. et al., “Early identification and management of psychological risk factors (‘yellow flags’) in patients with low back pain: A reappraisal,” Physical Therapy, 91(5), 737-753, 2011. DOI: 10.2522/ptj.20100224

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立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

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立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

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