【研究解説】「たくさん歩く」だけでは不十分?歩行の質が慢性腰痛リスクを左右する──JAMA掲載研究に学ぶ立ち仕事の改善策

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はじめに:腰痛は立ち仕事の「職業病」?

長時間の立ち仕事に従事する人にとって、腰の痛みは避けて通れない悩みの一つです。製造業、物流、小売、介護、医療、飲食といった業種では、作業時間の大半を立ったままで過ごすことが多く、慢性的な腰痛を訴えるケースも少なくありません。腰痛は本人の苦痛にとどまらず、作業効率の低下や離職の要因にもなり、職場全体の生産性に大きく関わる問題です。

このような現場では、「できるだけ身体を動かそう」「たくさん歩いた方が健康に良い」といった考え方が広く共有されています。しかし、ただ歩けば良いというわけではないことが、最新の研究によって明らかになりつつあります。


注目の研究:歩数と歩き方が腰痛にどう影響するか?

2024年6月、米国医師会系の学術誌 JAMA Network Open において、日本国内の大規模なコホートデータを用いた興味深い研究が発表されました。

研究タイトル

“Association of Daily Step Count and Walking Intensity With Risk of Incident Chronic Low Back Pain Among Japanese Adults”

この研究では、日常の歩行に関する以下の2つの要素が、慢性腰痛の発症にどう関係しているかを調査しました。

  • 歩数(歩く量)
  • 歩行強度(速歩か、ゆっくり歩きか)

この研究は、「腰痛予防にはたくさん歩くことが重要」という従来の考え方に対し、「歩き方の質」も同じくらい重要であるという新たな視点を提供しています。


研究の概要と方法

対象者と調査期間

  • 対象:日本国内の6,000人以上の成人(平均年齢49.3歳)
  • 期間:2021年4月から2022年5月の約1年間
  • 方法:健康調査アンケート、歩数計・スマートフォンによる自己報告データをもとに追跡

分析項目

  • 平均1日あたりの歩数(5,000歩未満、5,000〜9,999歩、10,000歩以上)
  • 歩行強度(速歩または中等度運動の頻度)
  • 新たに発症した慢性腰痛の有無(3ヶ月以上持続する腰痛)

主な結果とポイント

結果①:歩数が多いほど腰痛リスクが低い

調査対象者のうち、1日10,000歩以上歩いていたグループは、5,000歩未満のグループに比べて慢性腰痛の発症リスクが大幅に低いという結果が得られました。
これは、適度な運動によって腰回りの筋力維持や柔軟性が保たれることが理由の一つと考えられます。

結果②:速歩の習慣がリスク低下に貢献

さらに注目すべきなのは、「歩数」だけでなく「歩行の質(強度)」も腰痛リスクに大きく影響していたことです。

  • 速歩を習慣化している人は、ゆっくり歩く人に比べて腰痛の発症リスクが低かった。
  • 歩数が同じでも、「ゆっくり歩きが中心」の人はリスク軽減効果が限定的だった。

このことから、「ただ歩けば良い」のではなく、ある程度の強度を持って歩くこと=速歩が腰痛予防において重要であることが示されました。



職場で活かせるヒント:歩き方の質を変えるだけで腰痛対策に

今回の研究は、立ち仕事が多い現場にとって、非常に実践的なヒントを提供しています。

1. 速歩を取り入れた休憩習慣の導入

  • 例:昼休みに屋外で「5分間速歩チャレンジ」
  • 歩数だけでなく、テンポよく歩くことを意識させる

2. 動線設計の見直し

  • 工場や倉庫などでは、わざと「少し歩く」ルートを設けることで、身体を動かす機会を確保
  • 移動時間に短い速歩を取り入れる工夫

3. ウェアラブルデバイスの活用

  • 歩数だけでなく、歩行速度や心拍数を可視化できるデバイスの活用
  • 現場での健康指標として活用し、モチベーション向上にもつなげる

補助デバイスの役割:立ち仕事での負担軽減と運動機会の両立

腰の負担軽減と速歩を両立させる環境づくり

  • 長時間の立位を補助する椅子型サポート装置は、姿勢を保持しつつ、合間の動作をスムーズに
  • 作業中の負担を軽減することで、休憩時間により活動的に歩ける余力が生まれる

人間工学と歩行の融合

  • 人間工学的に適切な休憩頻度や歩行時間をデザイン
  • 作業効率と身体負荷のバランスを最適化

結論:歩数 × 歩き方 = 腰痛予防のカギ

この研究が示すのは、「歩けばよい」「動いていれば安心」という従来の感覚に対する警鐘です。腰痛予防には、量と質の両方を意識した歩行習慣が必要であるということが、科学的に裏付けられました。

立ち仕事の現場では、職場全体で以下のような対応が重要になるでしょう。

  • 「1日1万歩+速歩10分」の習慣化
  • ウェアラブルデバイスやアプリを使った歩行の可視化
  • 腰への負担を軽減する作業補助具の併用

これらを組み合わせることで、慢性腰痛の予防にとどまらず、働きやすく、続けやすい職場環境の整備が実現可能です。

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立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

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立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

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負荷軽減の検証データ

実証実験において、スタビハーフによる体重分散効果が示されました。

立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

スネ部のロールクッションが体重の一部を優しく支えることで、足裏の荷重が軽減していることがデータから示されました。

スタビハーフの負荷軽減効果検証実験の様子。立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

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