【2026年に作業環境測定法が改正】個人ばく露測定への移行と測定士の役割

2026年の作業環境測定法の改正により、職場の化学物質管理が大きく変わろうとしています。従来のA測定・B測定による「場の測定」から、個人ばく露測定を中心とした「人の測定」への移行――この変化は、製造業や化学工場をはじめ、立ち仕事の現場で化学物質を扱うすべての事業場に影響を及ぼします。
正式名称は「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」であり、安衛法と同時に改正される包括的な制度変更です。作業環境測定士の業務内容から、測定機関の運営体制まで、幅広い見直しが求められます。
この記事では、作業環境測定法 改正 2026の全体像を、現場の実務担当者にもわかりやすく整理します。
注: 本記事は2025年8月時点の情報に基づいています。政省令・告示等の詳細は今後変更される可能性があります。
この記事でわかること
- 作業環境測定法の2026年改正の背景と目的
- 従来のA測定・B測定と個人ばく露測定の違い
- 作業環境測定士の役割がどう変わるか
- 管理区分制度(第1~第3管理区分)と新制度の関係
- 測定結果の評価方法の変更点
- 作業環境測定機関が準備すべきこと
- 移行期間とスケジュールの見通し
作業環境測定法の改正概要|なぜ今、見直されるのか
作業環境測定法とは
作業環境測定法は、1975年(昭和50年)に制定された法律で、労働者が働く環境中の有害因子(化学物質、粉じん、騒音、放射線など)を測定し、その結果に基づいて作業環境を適切に管理するための制度的枠組みを定めています。管轄は厚生労働省であり、労働安全衛生法と一体的に運用されてきました。
この法律の下で、事業者は一定の有害業務を行う作業場について定期的に作業環境測定を実施し、その結果を管理区分として評価する義務を負っています。
改正の背景:「場の測定」の限界
従来の作業環境測定は、作業場の空間に測定点を設定して有害物質の濃度を測る「場の測定」が基本でした。しかし、この手法には以下のような課題が指摘されてきました。
- 作業者の実際のばく露量を正確に把握できない: 測定点と作業者の呼吸域が一致しないケースが多い
- 作業形態の多様化に対応しにくい: 移動を伴う作業や屋外作業では、固定点での測定に限界がある
- 国際基準との乖離: 欧米諸国やILO(国際労働機関)では個人ばく露測定が主流であり、日本の「場の測定」方式は国際的に見て独自性が高かった
厚生労働省の検討会報告書(2024年)でも、「労働者個人のばく露状況をより正確に評価する仕組みの導入が必要」と指摘されています。こうした背景から、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」 として、安衛法と同時に作業環境測定法が改正されることになりました。
改正の主なポイント
今回の作業環境測定法改正の柱は、以下のとおりです。
- 個人ばく露測定の法的位置づけの明確化: 作業環境測定の手法として個人ばく露測定を正式に導入する
- 作業環境測定士の業務範囲の拡大: 場の測定に加え、個人ばく露測定の実施・評価を業務に含める
- 測定結果の評価方法の見直し: 管理区分制度と個人ばく露測定結果の評価を整合させる
- 作業環境測定機関の対応義務: 個人ばく露測定に対応するための体制整備を求める
A測定・B測定と個人ばく露測定の違い
従来のA測定・B測定とは
現行の作業環境測定では、A測定とB測定の2種類の測定方法が用いられています。
A測定は、作業場を等間隔に区切った格子点(測定点)で空気中の有害物質濃度を測定する方法です。作業場全体の平均的な汚染状況を把握することを目的としています。原則として、単位作業場所ごとに6点以上の測定点を設定し、同一時間帯に測定を行います。
B測定は、有害物質の発散源に近い場所で、労働者が最もばく露を受けると考えられる位置で測定する方法です。最大ばく露濃度を把握するために実施され、A測定を補完する役割を担います。
個人ばく露測定とは
個人ばく露測定(Personal Exposure Monitoring) は、労働者一人ひとりの呼吸域(口や鼻の周辺)にサンプラーを装着し、作業中に実際に吸入する有害物質の濃度を直接測定する手法です。
作業者の実際のばく露量を測定するため、移動を伴う作業や作業内容が変化する場合でも、その人が受けた総ばく露量を正確に評価できます。欧米ではOEL(Occupational Exposure Limit:職業ばく露限界) に基づく管理の標準的な手法として広く採用されています。
比較:A測定・B測定 vs 個人ばく露測定
以下の表に、主な違いを整理します。
| 比較項目 | A測定・B測定(従来方式) | 個人ばく露測定(新方式) |
|---|---|---|
| 測定対象 | 作業場の空間(場) | 労働者個人の呼吸域(人) |
| 測定方法 | 作業場に固定点を設定してサンプリング | 作業者の襟元等にサンプラーを装着 |
| 測定時間 | 原則10分間程度の短時間測定 | 作業時間全体(通常6~8時間)の長時間測定 |
| 移動作業への対応 | 固定点のため対応が難しい | 作業者とともに移動するため対応可能 |
| 結果の評価 | 管理区分(第1~第3)で判定 | 8時間TWA等のばく露濃度と基準値を比較 |
| 国際整合性 | 日本独自の方式 | 欧米・ILOの基準に整合 |
| 必要機器 | エリアサンプラー、検知管等 | パーソナルサンプラー、パッシブサンプラー等 |
この比較からわかるように、個人ばく露測定は「その人が実際にどれだけばく露しているか」を直接的に把握できる点で、従来方式よりも労働者の健康保護に直結する手法といえます。
作業環境測定士の役割変化
従来の役割:場の測定の専門家
作業環境測定士は、作業環境測定法に基づく国家資格です。第一種作業環境測定士と第二種作業環境測定士に区分され、第一種はデザイン(測定計画の策定)、サンプリング、分析のすべてを行えるのに対し、第二種はデザインとサンプリングを担当します。
従来、作業環境測定士の主な業務は以下のとおりでした。
- 作業環境測定のデザイン(測定点の配置、測定日時の決定等)
- A測定・B測定のサンプリングの実施
- 分析(第一種のみ)
- 管理区分の評価・報告
改正後の役割:個人ばく露測定への対応
改正後は、作業環境測定士の業務範囲に個人ばく露測定の実施・評価が加わります。具体的には以下の変化が見込まれます。
- 測定計画の策定: 対象労働者の選定、サンプラーの種類と装着位置の決定、測定日・測定時間の設定
- パーソナルサンプラーの装着指導: 労働者への説明と正しい装着方法の指導
- 長時間測定データの管理: 6~8時間にわたる測定データの収集・管理
- ばく露濃度の算出と評価: 8時間加重平均濃度(8h-TWA: 8-hour Time-Weighted Average)や短時間ばく露限界(STEL: Short-Term Exposure Limit)の算出
- 労働者へのフィードバック: 測定結果の説明と改善提案
厚生労働省は、作業環境測定士が個人ばく露測定に対応するための研修制度の整備を進める方針を示しています。既存の測定士資格保有者に対しても、移行期間中に必要な追加研修を提供する計画です。
管理区分制度との関係
現行の管理区分制度
現行制度では、A測定・B測定の結果に基づいて作業場を以下の3つの管理区分に分類しています。
- 第1管理区分: 作業環境の管理が適切であると判断される状態。ほとんどの測定点で管理濃度を下回っている
- 第2管理区分: 作業環境の管理になお改善の余地がある状態。一部の測定点で管理濃度を超えている
- 第3管理区分: 作業環境の管理が不適切である状態。直ちに改善措置が必要
第3管理区分と判定された場合、事業者は直ちに作業環境を改善するための措置を講じなければなりません。改善後に再測定を行い、第1または第2管理区分に改善されたことを確認する必要があります。
改正後の評価方法:個人ばく露測定との整合
改正法では、個人ばく露測定の結果を用いた評価方法が新たに導入されます。主な変更点は以下のとおりです。
- 8時間加重平均濃度(8h-TWA)による評価: 労働者個人のばく露濃度を1日8時間の加重平均として算出し、ばく露限界値(OEL) と比較する
- 管理区分との併存: 改正法の施行後も、従来のA測定・B測定による管理区分制度は直ちに廃止されるわけではなく、個人ばく露測定との併存期間が設けられる見通し
- 段階的な移行: 特定の化学物質や業種から優先的に個人ばく露測定を導入し、順次拡大していく方針
つまり、場の管理区分と個人のばく露評価を組み合わせた、より精度の高い管理体制への移行が図られます。厚生労働省の検討会(2024年)では、場の測定と個人の測定の結果が乖離するケースについて、「より厳しい結果を採用する」方向での運用が議論されています。
個人ばく露測定の手法と機器
主な測定手法
個人ばく露測定では、以下の手法が用いられます。
- アクティブサンプリング法: 小型ポンプを用いて労働者の呼吸域の空気を一定流量で吸引し、捕集剤やフィルターに有害物質を捕集する方法。流量の安定性が高く、多くの物質に対応できる
- パッシブサンプリング法: 拡散原理を利用して有害物質を捕集する方法。ポンプが不要で軽量なため、作業の妨げになりにくい。ただし、対応できる物質に制限がある
- リアルタイムモニタリング: 直読式の測定器を用いて、ばく露濃度をリアルタイムに測定する方法。瞬時値の変動を把握でき、ばく露のピークを特定できる
必要な機器
個人ばく露測定の導入にあたり、主に以下の機器が必要となります。
- パーソナルサンプリングポンプ: アクティブサンプリング用の小型吸引ポンプ。流量の精度と安定性、バッテリー持続時間が重要
- パッシブサンプラー(拡散式捕集器): ポンプ不要で労働者の負担が少ない捕集器
- 捕集剤・フィルター: 対象物質に応じた吸着剤(活性炭、シリカゲル等)やフィルター
- 流量校正器: ポンプの流量を正確に校正するための機器
- 分析装置: ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)等の分析機器
作業環境測定機関への影響
体制整備の必要性
作業環境測定法に基づき登録を受けている作業環境測定機関にとって、今回の改正は経営に直結する重大な変化です。以下の対応が求められます。
- 個人ばく露測定に対応する機器の導入: パーソナルサンプリングポンプ、パッシブサンプラー等の調達と整備
- 測定士のスキルアップ: 所属する作業環境測定士に対する個人ばく露測定の研修受講
- 分析体制の見直し: 長時間測定データの処理に対応した分析体制の構築
- 料金体系の再設計: 個人ばく露測定は1人あたりの測定時間が長くなるため、従来のA測定・B測定とは異なるコスト構造となる
測定機関にとっての機会
一方で、この改正は測定機関にとってビジネス機会の拡大にもつながります。
- 新たなサービス提供: 個人ばく露測定に基づくコンサルティングサービスの提供
- デジタル化への対応: 測定データのクラウド管理や、リアルタイムモニタリングサービスの開発
- 研修事業: 事業場内で個人ばく露測定を実施する担当者向けの教育・研修サービス
作業環境測定機関は、単なる「測定の委託先」から、化学物質管理の包括的なパートナーへと役割を拡大するチャンスといえるでしょう。
移行期間とスケジュール
想定されるスケジュール
「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」の施行に向けて、以下のスケジュールが想定されています。
- 2025年: 改正法の成立・公布。政省令・告示の整備が進む
- 2026年4月: 改正法の施行。ただし、個人ばく露測定に関する規定の一部は経過措置が設けられる見通し
- 2026年~2028年(想定): 移行期間。A測定・B測定と個人ばく露測定の併用が認められる期間
- 2028年以降(想定): 特定の物質・業種から個人ばく露測定への完全移行が段階的に始まる
なお、上記スケジュールは2025年8月時点の見通しであり、政省令の制定状況によって変更される可能性があります。
事業者が今から取り組むべきこと
移行期間があるとはいえ、早めの準備が重要です。以下のステップで計画的に対応を進めましょう。
- 現状の把握: 自社の作業環境測定の実施状況(対象物質、測定頻度、管理区分の推移)を整理する
- 情報収集: 厚生労働省の検討会報告書や関連通達を定期的に確認し、政省令の詳細をフォローする
- 測定機関との連携: 委託先の作業環境測定機関と、個人ばく露測定への対応状況を確認・協議する
- 予算の確保: 個人ばく露測定への切り替えに伴うコスト(機器導入費、測定費用の変動)を見積もる
- 社内体制の整備: 化学物質管理者を中心に、個人ばく露測定の対象労働者の選定基準や実施体制を検討する
労働安全衛生法改正の全体像については、「【2026年4月施行】労働安全衛生法改正の全体像|5つの柱をわかりやすく解説」の記事もあわせてご確認ください。
化学物質管理における自律的管理の考え方については、「化学物質の自律的管理とは?|2026年安衛法改正で変わる管理の考え方」で詳しく解説しています。
まとめ
2026年の作業環境測定法改正は、職場の化学物質管理における約50年ぶりの大きな転換点です。ここまでのポイントを整理します。
- 「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」により、安衛法と同時に作業環境測定法が改正される
- 従来のA測定・B測定による「場の測定」から、個人ばく露測定による「人の測定」への移行が進む
- 個人ばく露測定は、労働者の呼吸域で実際のばく露量を測定するため、より正確な健康リスクの評価が可能になる
- 作業環境測定士は、個人ばく露測定の実施・評価というー新たな業務領域に対応する必要がある
- 管理区分制度は直ちに廃止されず、個人ばく露測定との併存期間を経て段階的に移行する
- 作業環境測定機関は、機器の導入、人材育成、サービス体系の見直しが求められる
立ち仕事の現場では、塗料、溶剤、粉じんなどの有害物質にばく露するリスクが常に存在します。今回の改正により、労働者一人ひとりのばく露状況がより正確に把握されるようになれば、現場のリスク管理の精度は格段に向上します。改正法の施行に向けて、今から計画的に準備を進めていきましょう。
よくある質問
Q: A測定・B測定はすぐに廃止されますか?
A: いいえ、直ちに廃止されるわけではありません。改正法の施行後も移行期間(経過措置) が設けられ、A測定・B測定と個人ばく露測定を併用できる期間が確保される見通しです。ただし、将来的には個人ばく露測定を中心とした制度に移行していく方向性が示されていますので、早めの準備をお勧めします。
Q: 個人ばく露測定は自社で実施できますか?
A: 法令上の要件を満たせば自社での実施も可能ですが、作業環境測定士の資格を持つ者が測定を行う必要があります。パーソナルサンプラーの取り扱いや分析に専門的な知識・技術が求められるため、多くの事業場では作業環境測定機関に委託する形が現実的です。自社で実施する場合は、機器の校正やデータ管理の体制も整備する必要があります。
Q: 個人ばく露測定は労働者の負担になりませんか?
A: パーソナルサンプラーは小型・軽量化が進んでおり、通常の作業に大きな支障が出ることは少なくなっています。パッシブサンプラーであればポンプが不要なため、さらに負担は軽減されます。ただし、アクティブサンプリングの場合はポンプやチューブを装着する必要があるため、作業内容に応じた適切なサンプラーの選定と、労働者への丁寧な説明が重要です。
参考文献
- 厚生労働省, 「作業環境測定法」(昭和50年法律第28号), https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省, 「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」, 2025年.
- 厚生労働省, 「個人ばく露測定の導入に関する検討会報告書」, 2024年.
- 厚生労働省, 「作業環境測定基準」(昭和51年労働省告示第46号).
- 日本作業環境測定協会, 「作業環境測定のしくみ」, https://www.jawe.or.jp/
- ILO, “Occupational Exposure Limits,” ILO Encyclopaedia of Occupational Health and Safety, https://www.ilo.org/
- NIOSH, “NIOSH Manual of Analytical Methods (NMAM),” 5th Edition, https://www.cdc.gov/niosh/nmam/
- 厚生労働省, 「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00005.html

「立ちっぱなし」でお悩みはありませんか?
✔︎ 足裏が痛い
✔︎ 腰痛がつらい
✔︎ ふくらはぎがむくむ
✔︎ ヒザが痛い
✔︎ 姿勢の悪化
✔︎ 全身疲労
✔︎ 足裏が痛い
✔︎ 腰痛がつらい
✔︎ ふくらはぎがむくむ
✔︎ ヒザが痛い
✔︎ 姿勢の悪化
✔︎ 全身疲労
立ち姿勢の負担軽減
「スタンディングレスト」
という新発想!

立ち作業の負担軽減デバイス
アルケリスは立ち姿勢の負荷軽減デバイスを販売中です。職場環境に合わせて、疲労軽減ジェルマット、スタビ ハーフ、スタビフルから選ぶことができます。立ち仕事の身体疲労を軽減し、働く人に選ばれる職場づくりをサポートします。
その他の負荷軽減デバイス
上肢の負担や局所疲労の軽減にフォーカスした製品ライン SUTIX by Ottobock を販売中です。熱暑対策・腰痛対策に加え、手首や首の疲労のためのサポートデバイスで安心安全な職場づくりを実現します。
製品写真(スタビハーフ)






身体負荷を軽減する
立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

負荷軽減の検証データ
実証実験において、スタビハーフによる体重分散効果が示されました。
立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。
スネ部のロールクッションが体重の一部を優しく支えることで、足裏の荷重が軽減していることがデータから示されました。







