【2025年最新版】熱中症対策の法改正と企業が取り組むべき3つの義務

はじめに:熱中症リスクの増大
近年、職場での熱中症リスクが年々高まっています。厚生労働省の統計によると、2022年には全国で531件の熱中症による労働災害が発生し、20名の方が亡くなりました。2025年にはこの状況を受け、企業に対して「熱中症対策の義務化」が法令として明文化され、罰則を伴う形で施行されます。
この記事では、2025年6月1日施行の法改正の全体像と企業が取るべき対応について、図表や具体例を交えながらわかりやすく解説します。安全衛生管理者や現場責任者、人事労務担当者の皆様にとって、リスク回避と従業員保護の両面から必須の情報です。
熱中症対策が義務化される背景とは?
WBGT値の上昇と災害件数の増加
かつては真夏の数日間だけが問題とされていた高温環境ですが、近年では5月や9月でも30℃を超える日が増え、熱中症のリスクが長期間にわたって発生しています。中でも注目されているのが「WBGT(暑さ指数)」です。
- WBGT(暑さ指数)とは? WBGTは、気温・湿度・輻射熱(地面からの照り返しなど)を加味した指標で、単なる気温以上に熱中症の危険性を正確に把握できるものです。屋外労働や空調のない屋内作業では、このWBGTが28℃を超えると熱中症の危険が高まるとされています。
- 災害件数の推移 厚労省によると、2022年の職場における熱中症災害件数は531件と報告されていますが、これは実際に労災として認定されたものだけであり、未報告の軽症例を含めればはるかに多くの事例が発生していると推定されます。死亡例も20件にのぼり、見過ごせない重大リスクです。
既存の「努力義務」では限界
これまで厚労省は、「職場における熱中症予防対策マニュアル」や年度ごとの通達により、WBGT値の測定、休憩の確保、水分・塩分補給の推奨といった基本的な指針を示してきました。しかし、これらは“努力義務”の範囲にとどまり、遵守状況に差があるのが現実です。
対策が徹底されていなかった現場で事故が発生し、「企業が講ずべき措置を怠った」として安全配慮義務違反を問われる裁判例も増加しています。こうした背景を受け、2025年6月の改正法施行により、「努力義務」から「罰則付き義務」へと対応が強化されることになったのです。
2025年法改正のポイント:企業が求められる3つの義務
新たに義務化される対策の中核となるのは、「報告体制の整備」「実施手順の策定」「関係者への周知教育」の3本柱です。それぞれが現場運営に与える影響は大きく、単なるルール整備ではなく、業務の根本的な見直しが求められるといえるでしょう。
❶ 報告体制の整備
熱中症は、症状が急速に悪化する可能性があるため、兆候に気づいた段階で素早く対応できる体制の構築が不可欠です。
- 具体例:従業員が「だるさ」や「頭痛」を訴えたとき、誰に・どうやって報告するのか。現場責任者が不在の場合でも、代替の判断者が明確であることが重要です。
- 実施方法:掲示板やマニュアル、スマートフォンの社内チャットなどを通じて、報告ルートを全従業員に周知。報告内容を記録・共有する仕組みも整備しましょう。
❷ 実施手順の策定
熱中症が発生した場合、初動の遅れは命に直結します。だからこそ、平時から「誰が・いつ・何をするのか」を定めたマニュアルが必要です。
- 対応フローの明文化:たとえば「WBGT31℃以上では作業を中止」「症状が出たら搬送判断基準に従って冷却・休息を優先」など、現場で迷わないように具体的に記述します。
- 管理記録の徹底:WBGT値、作業者の状態、報告の有無などを日報形式で記録。これが労災対応や社内報告に活用されるだけでなく、予防意識の定着にもつながります。
❸ 関係者への周知・教育
手順やルールは存在していても、現場で知られていなければ意味がありません。義務化により、定期的な教育と周知がすべての従業員に求められるようになります。
- 教育内容:熱中症の基礎知識、WBGTの見方、水分補給の方法、緊急時の通報・救護方法など。
- 実施形式:ポスター掲示、朝礼での注意喚起、eラーニングなど、繰り返しの学習が効果的です。
義務違反による罰則と企業リスク
2025年施行の改正法では、熱中症対策の不履行に対して明確な罰則が設けられました。単なる行政指導にとどまらず、企業の社会的信用や法的責任にも大きな影響を及ぼします。
想定される罰則とその重み
たとえば、WBGT値が28℃を超えるような高温環境下で、報告体制や教育が不十分なまま作業が継続され、従業員が倒れた場合、労働基準監督署から是正勧告や指導が入る可能性があります。さらに、その後も改善されなければ、改善命令違反として刑事罰が科されることもあります。
- 是正勧告・指導:軽微な違反でも記録に残るため、再発時の処分が重くなります。
- 罰則規定:最悪の場合、懲役6ヶ月以下または50万円以下の罰金が科されることも。
安全配慮義務違反による民事責任
企業が講ずべき最低限の安全措置を怠った場合、「安全配慮義務違反」として遺族や本人から損害賠償請求を受けることになります。過去の判例では、熱中症による死亡事故において、数千万円規模の賠償金支払いを命じられた例もあります。
企業にとって、これらのリスクを未然に防ぐためには、「形式的な対策」ではなく「実効性のある運用」が求められます。
現場でできる実践的な熱中症対策
作業環境の改善
熱中症を防ぐうえで、最も基本となるのが作業環境の整備です。とくに屋外や空調のない工場・倉庫などでは、環境自体を改善しなければ対策が後手に回りやすくなります。
- 冷却設備の導入:ミストファンやスポットクーラーの設置、冷風が流れるプレハブ休憩所の新設などが効果的です。とくに「休憩時に体温を下げる空間」があることで、作業再開後のリスクを減らせます。
- 遮熱・遮光の工夫:作業エリアに遮光ネットを張る、床面に反射シートを敷くなど、直接的な日射を軽減する工夫も重要です。
- WBGT測定の習慣化:暑さ指数(WBGT)を毎日測定し、所定の場所に掲示することで、全員が「暑さレベル」を意識しながら作業できます。
作業スケジュールの見直し
作業時間の調整も、熱中症リスクを大きく下げる鍵となります。厚労省はWBGT値に応じた作業指針を提示しており、それに準じてスケジュールを柔軟に変更することが求められます。
- 時間帯の工夫:日中のピーク時間帯(11時〜15時)を避けて早朝・夕方に作業を移行。これだけでも気温差によるリスク軽減が可能です。
- 作業強度のコントロール:高温環境下では重作業を避け、身体負荷の少ない軽作業を優先する判断も重要です。
- 交代制の導入:長時間連続作業を避けるため、30〜45分ごとに短時間の休憩を挟むシフト管理が有効です。
健康状態の可視化と見守り
最終的に熱中症の兆候を見極めるのは、個々人の体調変化に対する感度と、それを見逃さない組織の目線です。
- 体調チェックリストの活用:出勤時の「眠気」「倦怠感」「前日の飲酒」など、セルフチェック表に記入させるだけでも意識が変わります。
- 健康アプリとの連携:一部の企業では、スマホやウェアラブル端末を使って心拍や皮膚温の変化をリアルタイムで把握する取り組みも進んでいます。
- 見守り体制の構築:熱中症リーダーや安全パトロールの役割を設け、作業中の小さな異変も見逃さないチーム体制をつくりましょう。
教育・研修の活用と制度化
義務化対応を機能させるには、教育と意識づけが何より重要です。形式的なマニュアルだけでは行動変容は期待できません。具体的・継続的・双方向性のある教育が鍵を握ります。
社内教育の制度化
- 新入社員・派遣社員向け:入社時研修に熱中症対策を必須項目として組み込み、初期段階から意識づけを行います。
- 定期教育の義務化:年に1回以上の全社員講習、夏季前のシーズン直前教育が基本です。ポスター掲示やクイズ形式のeラーニングも有効です。
- 実技訓練の導入:応急手当や冷却対応をロールプレイ形式で体験させると、記憶への定着率が高まります。
外部講習の活用
- 厚労省・中災防の資料:最新のガイドラインを用いた講義形式のセミナーを開催することで、現場視点に即した内容に触れられます。
- 産業医や労働衛生コンサルタントの指導:リスクアセスメントに基づいたアドバイスや、組織風土に合わせた教育内容の最適化が可能です。
- オンライン教育との併用:離れた事業所や夜勤スタッフにも対応するため、オンデマンドで視聴できる教材は必須です。
保険制度・リスクマネジメントの視点
熱中症は、万が一発生すれば労災や損害賠償など多方面のリスクにつながります。事前の対策とともに、発生後の補償体制も重要な備えです。
労災保険とその補償内容
労災として認定されれば、医療費や休業補償が支給されます。しかし企業にとっての責任が完全に免除されるわけではありません。
- 認定の判断基準:業務中の高温作業、WBGT値の記録、健康状態の確認記録があれば認定されやすくなります。
- 補償範囲:療養補償(医療費)、休業補償(80%相当)、障害補償(後遺症)などがあります。
使用者賠償責任保険の必要性
安全配慮義務違反として損害賠償が発生するリスクに備えるのがこの保険です。
- カバー内容:慰謝料、弁護士費用、和解金など。労災保険では補えない部分を補償します。
- 加入のすすめ:中小企業向けの低額プランも多く、法改正を機に見直す企業が増えています。
まとめ:今こそ熱中症対策を“文化”にするチャンス
2025年6月から施行される改正法令により、熱中症対策はもはや「努力義務」ではなく「企業の責任」として明確に求められるようになります。罰則や労災リスクといった法的側面だけでなく、「従業員の命を守る」という倫理的な観点からも、今すぐの対応が必要です。
今回ご紹介した内容をもとに、各企業が自社に合った現実的なマニュアルを整備し、継続的な教育と現場主導の運用体制を整えることで、熱中症ゼロの職場を実現することができます。熱中症対策は単なる「季節対応」ではなく、働き方改革・安全衛生改革の柱となる「職場文化」として定着させるべき時代が来ています。

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項目 | 内容 |
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時間 | 10:00〜17:00 |
会場 | 幕張メッセ |
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