【労衛法改正で義務化】ストレスチェックの実施率はわずか32%|50人未満事業場の現状課題と行政による支援施策
ストレスチェックの実施率が50人未満の事業場ではわずか32.3%にとどまっていることをご存知ですか? 50人以上の事業場では84.7%が実施しているのに対し、小規模事業場では大きく後れを取っているのが現状です。立ち仕事が中心の製造業や小売業、飲食業では、身体的な負担に加えてメンタルヘルスの課題も深刻化しています。本記事では、50人未満事業場のストレスチェック実施率が低い背景と課題を整理し、今後の義務化に向けた動向や先行事例を紹介します。
この記事でわかること
- 50人未満の事業場におけるストレスチェック実施率の現状(32.3%)とその背景
- 事業場規模別・業種別の実施率データの違い
- 実施率が低い要因(制度・コスト・人材・認知の壁)
- 未実施事業場の従業員が抱えるメンタルヘルスリスク
- 義務化や行政支援策の最新動向と、先行実施企業の成果
ストレスチェック実施率の現状|50人未満の事業場はわずか32.3%
50人以上と50人未満で広がる実施率の格差
2015年12月に施行された改正労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場にはストレスチェックの実施が義務づけられました。一方、50人未満の事業場については「努力義務」にとどまっています。
この制度上の違いが、実施率に大きな格差を生んでいます。厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」(2023年)によると、ストレスチェックの実施率は以下のとおりです。
- 50人以上の事業場: 84.7%
- 50人未満の事業場: 32.3%
50人以上の事業場では義務化の効果もあり8割を超える実施率を達成していますが、50人未満では3割程度にとどまっており、約7割の小規模事業場ではストレスチェックが行われていない状態です。
事業場規模別の実施率データ
厚生労働省の調査データをさらに細かく見ると、事業場規模が小さいほど実施率が低くなる傾向が明確に表れています。
| 事業場規模(従業員数) | ストレスチェック実施率 |
|---|---|
| 500人以上 | 95.2% |
| 300〜499人 | 92.8% |
| 100〜299人 | 90.1% |
| 50〜99人 | 78.3% |
| 30〜49人 | 38.6% |
| 10〜29人 | 28.1% |
(出典: 厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」をもとに作成)
特に注目すべきは、50人を境に実施率が急激に低下する点です。50〜99人の事業場では78.3%が実施しているのに対し、30〜49人では38.6%、10〜29人では28.1%と半分以下に落ち込みます。これは義務と努力義務の境界線がそのまま実施率の断崖を形成していることを示しています。
業種別に見る実施状況の違い
業種別のデータからも、実施率に大きな差があることがわかります。厚生労働省の調査(2023年)では、50人未満の事業場における業種別の実施状況として以下の傾向が報告されています。
- 情報通信業・金融業: 比較的高い実施率(40%台後半)。大企業のグループ会社として実施体制が整っているケースが多い
- 製造業: 30%台前半。中小の町工場では産業医の選任義務がなく、外部資源の活用も進んでいない
- 卸売業・小売業: 20%台後半。パートタイム労働者の多さや、店舗ごとの少人数体制が実施の障壁に
- 宿泊業・飲食サービス業: 20%台前半。慢性的な人手不足のなか、メンタルヘルス対策の優先順位が低くなりがち
- 建設業: 20%台。現場の流動性が高く、事業場単位での実施が困難
立ち仕事が多い製造業、小売業、飲食サービス業、建設業では、いずれも実施率が低い水準にとどまっています。身体的負担の大きい現場ほど、精神的なストレスへの対策が後回しになっている現状がうかがえます。
なぜ50人未満事業場の実施率は低いのか
「努力義務」にとどまる制度上の壁
最大の要因は、50人未満の事業場に対するストレスチェックが法的義務ではなく「努力義務」であることです。努力義務とは、「実施するよう努めなければならない」という規定であり、実施しなくても罰則はありません。
限られた経営資源のなかで、罰則のない施策に積極的に取り組む事業場は少ないのが実情です。厚生労働省の「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査」(2022年)でも、未実施事業場の約45%が「義務でないため実施していない」と回答しています。
コストと人材の不足
50人未満の事業場では、産業医の選任義務がありません。ストレスチェックを実施するには、実施者(医師・保健師等)の確保や、調査票の配布・回収・集計の体制整備が必要ですが、小規模事業場ではこれらのリソースが慢性的に不足しています。
特に以下の点がハードルとなっています。
- 外部委託費用: ストレスチェックの外部委託には1人あたり数百円から数千円の費用がかかる。少人数の事業場では費用対効果を感じにくい
- 事務負担: 結果の通知、面接指導の勧奨、集団分析といった一連の実務を担当できる人材がいない
- 産業保健スタッフの不在: 産業医や衛生管理者がいないため、制度の運用ノウハウが蓄積されない
メリットの認知不足
小規模事業場の経営者のなかには、「うちは少人数だから顔が見える関係で、ストレスチェックは必要ない」と考える方も少なくありません。しかし、少人数だからこそ人間関係のストレスが深刻化しやすい面もあります。
独立行政法人労働者健康安全機構の報告(2023年)によると、小規模事業場の経営者の約6割が「ストレスチェックの具体的な効果がわからない」と回答しており、制度のメリットが十分に伝わっていないことが浮き彫りとなっています。
未実施事業場の従業員が抱えるメンタルヘルスリスク
高ストレス者の放置による悪循環
ストレスチェックを実施していない事業場では、高ストレス状態にある従業員が早期に発見されず、メンタルヘルス不調が悪化してから表面化するケースが多発しています。
厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」(2024年)によると、精神障害に係る労災請求件数は年々増加しており、2023年度は過去最多の3,575件を記録しました。このうち、50人未満の事業場からの請求が全体の約4割を占めています。
ストレスチェックには以下のような「一次予防」としての効果があります。
- 従業員自身のセルフケア: ストレスの状態を数値で把握し、早期に対処するきっかけになる
- 職場環境の改善: 集団分析の結果を活用して、高ストレスの原因となる職場環境を特定・改善できる
- 休職・離職の予防: 高ストレス者への面接指導を通じて、深刻化する前に適切な支援につなげられる
これらの機会を逸している未実施事業場では、離職率の上昇、生産性の低下、労災リスクの増大という悪循環に陥りやすくなります。
立ち仕事の現場では身体的負担との複合リスクも
立ち仕事が中心の職場では、腰痛や下肢の疲労といった身体的な負担と精神的なストレスが相互に影響し合うことが知られています。
欧州労働安全衛生機構(EU-OSHA)の報告(2023年)では、筋骨格系の負担が大きい労働者ほどメンタルヘルス不調のリスクも高いことが指摘されています。長時間の立位作業による身体的疲労がストレスへの耐性を低下させ、逆にストレスが痛みの感受性を高めるという悪循環が生じるためです。
こうした複合リスクを抱える立ち仕事の現場こそ、ストレスチェックによる早期発見と対策が重要といえます。
義務化に向けた動向と行政の支援策
ストレスチェック義務化の拡大が検討される背景
厚生労働省の「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」(2024年)では、50人未満の事業場へのストレスチェック義務の拡大が議論されています。
検討会の中間とりまとめ(2024年8月)では、以下の方向性が示されました。
- 50人未満の事業場にもストレスチェックの実施を義務づける方向で検討を進める
- ただし、小規模事業場の負担軽減措置を講じる必要がある
- 産業医の選任義務がない事業場における実施体制の確保策を併せて整備する
この方針が法改正に反映されれば、すべての事業場でストレスチェックが義務化される見通しです。
行政による支援策の拡充
義務化に先立ち、厚生労働省や関連機関は小規模事業場向けの支援策を拡充しています。
1. 産業保健総合支援センター(さんぽセンター)の活用
各都道府県に設置されている産業保健総合支援センターでは、50人未満の事業場を対象に以下の支援を無料で提供しています。
- ストレスチェックの実施支援
- 高ストレス者への面接指導を行う医師の紹介
- メンタルヘルス対策に関する研修・セミナー
- 産業保健に関する個別相談
2. 「こころの耳」による情報提供
厚生労働省が運営するポータルサイト「こころの耳」では、ストレスチェックの実施手順や集団分析の活用方法など、実務に役立つ情報を体系的に提供しています。小規模事業場向けの簡易版ストレスチェックツールも公開されています。
3. ストレスチェック実施プログラムの無料配布
厚生労働省は「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で配布しており、IT環境が限られた小規模事業場でも導入しやすい仕組みを整えています。
先行実施企業に見る成果と効果
中小製造業A社の事例:離職率が改善
従業員35人の金属加工メーカーA社(愛知県)では、2020年からストレスチェックを自主的に導入しました。きっかけは、若手社員の離職が相次いだことです。
導入後の変化として、以下が報告されています。
- 高ストレス者の割合: 初年度18%から3年後に12%に低下
- 離職率: 導入前の年15%から導入3年後に8%に改善
- 集団分析の活用: 「仕事の量的負担」のスコアが悪かった製造ラインで作業工程を見直し、残業時間を月平均10時間削減
A社の人事担当者は「少人数だからこそ一人ひとりの離職が経営に大きく影響する。ストレスチェックで課題が数値化されたことで、対策の優先順位をつけやすくなった」と語っています(産業保健総合支援センター事例集, 2024年)。
小規模飲食チェーンB社の事例:メンタルヘルス対策と生産性向上
従業員20人規模の飲食チェーンB社(東京都)では、産業保健総合支援センターの支援を活用してストレスチェックを導入しました。
B社では集団分析の結果、「上司の支援」のスコアが低いことが判明。店長向けのラインケア研修を実施したところ、翌年のストレスチェックで同項目のスコアが改善し、従業員アンケートでの職場満足度も向上しました。
これらの事例は、小規模事業場であってもストレスチェックが職場改善に有効であることを示しています。
まとめ
50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施率は32.3%と、50人以上の事業場(84.7%)と比べて大きな格差があります。その背景には、努力義務にとどまる制度上の位置づけ、コストや人材の不足、メリットの認知不足という複合的な要因があります。
しかし、未実施の事業場では高ストレス者が放置され、メンタルヘルス不調の深刻化や離職の増加につながるリスクがあります。とりわけ立ち仕事の現場では、身体的負担と精神的ストレスの複合リスクへの対応が求められます。
厚生労働省は50人未満の事業場への義務化拡大を検討しており、産業保健総合支援センターの無料支援や厚労省版実施プログラムなど、小規模事業場でも取り組みやすい環境は整いつつあります。義務化を待つのではなく、今から自主的にストレスチェックに取り組むことが、従業員の健康と企業の持続的な成長の両立につながるのではないでしょうか。
参考文献
- 厚生労働省, 「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r05-46-50.html
- 厚生労働省, 「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査研究」, 2022年. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_stress_check.html
- 厚生労働省, 「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ」, 2024年8月. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/stresscheck_mentalhealth.html
- 厚生労働省, 「令和5年度 過労死等の労災補償状況」, 2024年. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_rosai.html
- 独立行政法人労働者健康安全機構, 「小規模事業場における産業保健活動の実態と課題」, 2023年. https://www.johas.go.jp/
- EU-OSHA, “Musculoskeletal disorders and psychosocial risk factors in the workplace,” 2023. https://osha.europa.eu/en/themes/musculoskeletal-disorders
- 厚生労働省, 「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」, https://kokoro.mhlw.go.jp/ (2025年7月閲覧)
- 独立行政法人労働者健康安全機構 産業保健総合支援センター, 「メンタルヘルス対策 好事例集」, 2024年. https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/

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